◇浦安D-Rocks戦マッチレポート

清水建設江東ブルーシャークスは5月23日、江東区夢の島競技場(東京都江東区)で行われたNTTジャパンラグビー リーグワン2025-26 D1/D2入替戦 第1戦に臨み、浦安D-Rocksに15-37で敗れた。前半を10-6とリードして折り返すも、後半に4トライを奪われ、逆転負けを喫した。入替戦の昇格は2試合の勝ち点、勝利数、そして2試合合計の得失点差で決定する。逆転でのD1昇格を目指す第2戦は5月30日に同会場で行われる。23点差以上の勝利、または3トライ差以上での勝利で勝ち点5を獲得することが昇格への条件となる。

曇り空の下、夢の島競技場に吹く穏やかな風が、選手たちの戦いの熱を少しずつほどいていた。全力を尽くした。それでも届かなかった。その重さが選手たちを包んでいた。その空気の中で、試合後の円陣で仁木監督が伝えたのは、これまで再三チームを鼓舞してきたシンプルなメッセージだった。「全員でやれば、乗り越えられないことなんかないからね」。

昨季7位から2位へ躍進し、この舞台に辿り着いた。日本人選手たちはフルタイムで会社員として働きながらプレーしている。練習時間が潤沢にあるわけではない。それでも限られた時間のトレーニングと、一試合一試合の経験の中で成長してきた。戦いながら互いを理解し、信頼し、自分たちの文化を育ててきた。仁木監督はその短い言葉で、これまでのチームの歩みに対するプライドを伝えようとしていた。

積み重ねてきた時間が、この日の前半に確かな形を見せた。浦安のセンター、サム・ケレビとシェーン・ゲイツ。強力なNo.8タマティ・イオアネ。相手のキープレーヤーたちに対し、ブルーシャークスの守備ラインは一人ひとりが役割を全うして動き続けた。前半を通じて1度もゴールラインを割らせなかった。前半3分には西端が先制トライ。10-6でリードしたままハーフタイムを迎えた。後半に逆転を許したものの、チーム史上最多3709人の観客の前で、ブルーシャークスのラグビーがD1の相手にも通用することを示した。
吉廣ヘッドコーチは、このチームの戦術理解度を「D1を含めてもリーグ屈指の高さ」と表現する。限られた時間の中で、なぜそこまで深くラグビーを共有できるのか。その理由は、試合前の小さな光景に表れていた。

この試合のメンバー発表後のミーティングだった。今季限りでの引退を決めている田中の名前は、そこになかった。それでもノートを開き、ペンを走らせていた。試合に出ない自分にも、このチームのためにできることがある。彼が最後まで示そうとしていたのは、このチームの一員としての在り方だった。
ミーティングに先立ち、1月に帝京大学からアーリーエントリーで加入した河村ノエルが全員の前で宣言した。公式戦のメンバーに初めて選ばれたルーキーが口にしたのは、喜びよりも覚悟だった。「自分は安達さん、銀次朗さんのように信頼されてメンバーに入ったわけではないと思います。ただ、前の練習試合でいいタックルをしただけ。今度の試合では信頼してもらえるように、チームのために命懸けで体を張ることを約束します」。チームに入って、まだ間もない23歳。それでも河村は、このチームで何が大切にされているのかを理解していた。社業とラグビーを両立しながら、言い訳をせずにハードワークを続ける先輩たち。その姿を見て、自分もその一員として認められる存在になりたいと思った。

その文化は、外国人選手たちにも深く根づいていた。試合直前のウォーミングアップ終了後、アイルランド代表キャップを持つバーンズが試合に出るメンバーをピッチに集めた。「この試合に出たくても出られない選手たちがいる。彼らにとってもこの試合はとても重要になる。この場所で全部を出し切ろう」。引退を決めた選手。加入したばかりの若手。世界を知る外国人選手。立場も、歩んできた道も、生まれ育った国も違う。それでも全員が、このチームのために戦おうとしていた。それぞれの立場で、このチームのために自分の役割を果たそうとする。その文化が、ブルーシャークスをここまで押し上げてきた。
その文化を信じているからこそ、指揮官は視線を下げなかった。試合後、仁木監督は「いい試合をすることが目標でここに来たわけではないです。勝ってD1に昇格することが目標だと思っています。精度を高めて、全員のベクトルを合わせる、それしかないと思っています」と語った。このチームは、いつだって挑戦者だった。ステージが上がれば上がるほど、戦う相手はプロ選手ばかりになった。その壁を越えるために、試合に出る選手も、出ない選手も、それぞれの役割を全うしながら強くなってきた。勝利の喜びも、ラグビーが上手くなっていく嬉しさも、共に分かち合ってきた。そしていま、最大の逆境を前にしている。その中でもなお、ブルーシャークスらしさを貫き通せるのか。次が今季最終戦。働きながら勝つ。そのストーリーを最後まで生き抜く覚悟が、今こそ試されている。
◇仁木監督、安達航洋キャプテン会見

質問者:本日の総括をお願いいたします。
仁木監督:まずはじめに、本日の開催にあたって多くの関係者の方々に素晴らしいピッチと雰囲気を作っていただきました。本当にありがとうございました。本日、夢の島競技場の最多来場者数を更新したという話を聞きました。本当に皆様の声援が力にもなりましたし、感謝しかないと思っています。こうして花を添えていただいたにもかかわらず、悔しい敗戦になりました。ただ、この悔しいという部分に関して全然力の差はなかったと思っていますし、実際に戦った選手とスタッフも含めてしっかり戦えると思ったと思います。
まだ上に行けるチャンスがあります。今シーズンも崖っぷちの中から入替戦に行きましたので、チームとしてポジティブな内容と、しっかり反省しなければいけない内容といろいろあると思いますが、この1週間、チーム全員で次戦に備えていきたいと思います。本日はありがとうございました。
安達選手:まずはじめに、この試合にご尽力いただいた関係者の皆様、ありがとうございました。今シーズンチームとしてこの入替戦をずっと目標にやってきて、実際に出場することができました。自分たちより強い相手と対戦する中で、絶対に受けて入ってはいけないという話をチームでしていて、最初の10分で、スタートで出たメンバーがしっかり体を張って前に出てくれて、いい入りができたというのはまず良かったと思います。
ただ、シーズンを通してもそうでしたが、80分間全員が同じクオリティでプレーし続ける点についてはまだまだ課題だと感じています。後半出てきたメンバーがもっとエナジーを出して、体を張らないといけないと思いました。
一方でそこまでD1との差を感じなかったというか、まだまだ自分たちも戦えるんだなと感じたので、今日出た課題を反省して1週間いい準備をして、次は勝ちたいと思います。本日はありがとうございました。

質問者:D1の相手チームに対して、具体的にどのあたりが通用すると思いましたか?
仁木監督:今シーズン、セットピースやフィジカルもしっかり鍛えてきて、そこに対して選手各々しっかり戦えたと思っています。ディフェンスに関しても、相手のキープレーヤーに対してしっかりタックルできていた。相手がやりたい戦い方をさせなかったところは、我々の強みが活きた結果だと思っています。ゲームに関しても各々に関しても、通用しているところがほとんどだったので、大きな差は感じませんでした。
ただ、差という部分で感じたのは、やっぱり80分間通してのクオリティです。65分で終わってくれていたら変わったかもしれませんが、80分間がラグビーです。その最後の15分を頑張り切るところは、気持ちも含めて、D1で厳しい戦いを乗り越えられてきた相手との差かなと思います。
安達選手:個々のプレーを切り取ったら、セットプレーでもスクラムでもペナルティを取れていましたし、モールでも押せている場面があって、強いランナーもしっかり止めることができていました。それを80分間やり続けるだけだと思うので、そこにフォーカスして、来週はしっかり勝ちに行きたいと思います。

質問者:D1との差はほとんどないと思っていた中で、もしあるとすればどのようなところに差を感じましたか?
安達選手:80分間通してのフィジカルというところ、常に高いレベルでプレーされてたという点かなと感じました。後半から出てきたメンバーにすごい勢いをつけられましたし、そこを受けてしまったというところは、私を含めてリザーブメンバーの反省かなと思います。80分間通して強いランナーに対して絶対受けずに前に出続けるところは、もっともっとレベルを上げていかないといけないなと感じています。
質問者:やってきたことを信じる気持ちや、それぞれが役割を遂行する意識は、チーム全体で強くなっていると感じますか。
安達選手:プレシーズンから準備してきたことがD2で通用してこの入替戦に出場することができました。そして今日実際にD1のチームと戦う中でも通用することがわかって、本当に自分たちがやってきたことは間違っていないと感じることができました。自分の役割を遂行するというところが、チーム全体ですごくレベルが上がっているんじゃないかなと感じています。

質問者:今日は3700人の来場者でした。プレーした感想を伺いたいです。
安達選手:1年間この舞台を目標にしてきて、会場に着いた瞬間から圧倒されるような雰囲気でした。芝生席にもあんなに人が入っているのは見たことがなくて、素晴らしい環境でラグビーができて本当に幸せだなと思います。
ただ、その中で勝てなかったのは本当に悔しいです。来週のチケットが完売しているということで、多くのお客さんが来てくださると思うので、その中で次は勝った姿を見せられるように頑張りたいと思います。
質問者:途中までトライ数が相手と同じだったというところ、逆に言うとトライを取られなかったというところで、ディフェンスの部分、手応えはいかがでしたか?
仁木監督:相手にしっかりとディフェンスするという今季積み上げてきたところはゲームの中で遂行できてきたと思っています。ただ70分以降でのメンバー変更の頃、リザーブから出てくるメンバーはフレッシュなはずなんですけど、前半でできていたことが後半にできなくなってしまったり、もうちょっとエナジーが欲しかったかなと思っています。
ただ、全員が一生懸命やった結果ですので、これは各々の課題というよりはチームの課題として受け止めて、前に進むしかないかなと思っています。

質問者:ディフェンスの部分で、相手チームの両センターであるサム・ケレビ選手、シェーン・ゲイツ選手を全く機能させていませんでした。どのように練習したのでしょうか。
仁木監督:そこはもう藤岡(竜也)に尽きるかなと思っています。終始最後まで試合を作ってくれましたし、ディフェンスもしっかりやってくれていました。ラインアウトから一次でケレビ選手が来ることが分かっていたので、そこに対してはシオネ(タリトゥイ)がしっかり止めていたと思っています。後半途中まで僅差だったのは、その2選手と、No.8のタマティ・イオアネ選手をしっかり止めていたところに尽きるかなと思います。
どうやって練習したかというより、私からはいつも気持ちしかないという話をしていました。前に出てしっかり止めようというところで、どんな不利な状況になろうが前に出てしっかりやるのがブルーシャークスのスタイルだと思っています。それを藤岡やテレンス・へプテマ含め高いレベルで遂行してくれた結果かなと思っています。
質問者:22点差で次戦を迎えますが、戦い方やメンバー構成は考える必要が出てきますか?
仁木監督:相手はD1のチームですので、トライ数や点差など計算し始めたらキリがない数字はあると思います。なので、まずしっかり勝つところです。勝った上で、その積み重ねの結果どうなるかだと思います。
メンバーに関して大きく変えることはないんじゃないかなと思っていますし、戦術に関しても今シーズン積み上げてきたものが全てだと思っています。これから1週間の付け焼き刃で何か新しいことをするわけじゃないので、精度を高めて、全員のベクトルを合わせる、それしかないかなと思っています。

質問者:もう1戦あるということを、今はそれをどう捉えていらっしゃいますか。
仁木監督:もともと入替戦は2試合と決定していましたので、もし今日勝ったとしても「浮かれることなく」という声はかけようと思っていました。今日敗戦して、次に向けてもっと戦っていかなければいけないと思っています。今日「いい試合だったね」と声をかけていただける方も多かったですけど、いい試合をすることが目標でここに来たわけではないです。我々が勝ってD1に昇格することが目標だと思っています。D1との差は、私自身も上から見ていてあまり感じるところがなかったので、もうすぐそこにD1の島は見えていると思っています。
もう1試合あります。毎シーズン、試合で課題をいただきながらここまで成長してきましたので、もう1回成長できるチャンスかなと思っています。この1週間、残された命じゃないですけど、チーム一丸となって頑張りたいと思います。
安達選手:もう1試合ありますけど、点差を気にするのではなく、とにかく次戦にフォーカスして、自分たちのやることをやればおのずと結果がついてくると思います。この1週間は今シーズンやってきたことをもう1回振り返って、やってきたことを出すための準備をチーム全員でやって、それが試合に出せればと思います。
質問者:明後日また普通に仕事ですか。
安達選手:はい。月曜日、朝から仕事です。
仁木監督:これは大きく書いておいてください(笑)。本当にずっと仕事していますので。
◇河村ノエル選手 一問一答

質問者:本日が公式戦初出場でしたが、いかがでしたか。
河村選手:スタッフ陣やメンバーから求められていたのは、途中から出て体を張り、タックルの部分でチームに勢いをつけることだったと思います。ただ、そこに対して自分としては全然何もできていないので、あまりできたとは思っていません。
質問者:最初にメンバー発表があった時に「信頼されるように体を張る」とお話しされていましたが、河村選手にとって信頼される選手とはどういう選手ですか?
河村選手:求められていることを、しっかり結果として残せることがまず一つです。あとは、日頃のトレーニングや練習に取り組む姿勢の部分でも信頼を得られると思います。
質問者:まだチームに合流して間もないですが、短期間で「このチームのために体を張りたい」「信頼されたい」という気持ちは、どのように芽生えたのでしょうか?

河村選手:一番はやっぱり同じポジションに尊敬できる人たちがいることです。今まで20番とか7番のジャージを着てプレーしてきた方々のポジションに選ばれたので、そこに対してやらなあかんなという気持ちがありました。このチームは皆さん常にハードワークしていて、自分も学ぶべきことがたくさんあります。皆さんのことを尊敬しているので、そういう方々から強く信頼されるような人間になりたいと思いました。
質問者:ブルーシャークスの選手たちのどのような点を見てハードワークしていると感じますか。
河村選手:社業との両立というところです。グラウンドでは、それを言い訳にせずに自分のできることをきっちりやっている姿です。社業の部分では、社内で先輩と会うとそこでしっかり勤められている姿を見て感じました。
質問者:同じポジションの選手たちのどのような点を尊敬されていますか。
河村選手:体を張っているプレーと、練習に対する取り組みです。

質問者:ブルーシャークスに入ろうと思った理由は何ですか?
河村選手:僕がチームを探している時に、そのタイミングでたまたま仁木監督から声をかけてもらいました。その時はまだプレーを見てもらっていなかったんですけど、人間性の部分を評価してもらったと聞いています。
質問者:大学4年生に上がった時に試合に出られるようになったということですが、それは何かきっかけがあったのでしょうか。
河村選手:分からないですが、ずっと出られない時期も腐らずにやってきた、それだけだと思います。実際はそんなに深く考えてなかったですけど、ラグビーが好きだったので。出られないならやるしかないなと思っていました。

質問者:ラグビーが好きな理由はなんでしょうか。
河村選手:ずっとラグビーに時間を使ってきて、中学の時から努力してきました。ラグビーで結果を出したから、プライベートや学校生活という自分の人生の充実につながっていったと思っています。だから「もうラグビーしかないな」という気持ちもあります。自分の人生における充実感を作るために、しんどいことに向き合ってラグビーで結果を出そうと思っていました。
質問者:実際にD1のチームとの公式戦は初めてでしたが、フィジカル面はどうでしたか。
河村選手:タックルの部分ではいい感じに入れたところもあるんですけど、セットプレーのところで自分の力不足で仲間にプレッシャーをかけてしまった場面がありました。練習も必要ですけど、自分の体作りの部分ももっと大事かなと思います。
質問者:ありがとうございました。