◇浦安D-Rocks戦マッチレポート

清水建設江東ブルーシャークスは5月30日、夢の島競技場(東京都江東区)で行われたNTTジャパンラグビー リーグワン2025-26 D1/D2入替戦 第2戦に臨み、ディビジョン1の浦安D-Rocksに19-57で敗れた。前半を12-40で折り返し、後半も7-17と力及ばず、第1戦に続く敗戦となった。悲願のディビジョン1昇格はならなかったが、昨季7位から入替戦進出を果たした今季の挑戦は、チームの確かな成長を示すものだった。

白子は穏やかな表情で仲間たちと健闘を称え合った。憧れていた舞台への切符はつかめなかった。だが、劣勢でも最後まで「白子雄太郎」らしく相手に立ち向かえた。「どんな時でも生きた目をしていられる人間でいたい」。その信念を貫き通せたことに、心から安堵した。自分のことを、また深く信じられるようになった。逆光に照らされたバックスタンドに沿って観客に挨拶する最中、浦安ファンからブルーシャークスに向かって声が飛んだ。「ナイスゲーム!」。白子の耳に、そして心に、その声はしっかりと届いた。
この1週間は、ラグビー人生最大の挫折から始まった。試合5日前の月曜日。クラブハウスで行われたメンバー発表で、仁木監督の口から白子の名前が呼ばれることはなかった。第1戦に続くメンバー落ち。「試合に出る、出ないに関わらず全員でやっていきましょう。OKですか?」。指揮官の言葉を頭で理解することはできても、感情は追いつかなかった。
身が入らないまま、その日の全体練習を終えた。ほどなくして仁木監督に呼ばれ、二人で向き合った。「お前の気持ちはわかる。でも、ベテランとしてああいう顔で練習するのは、チームにとっても良くないよ」。仁木監督自身も、古くからチームを知る白子がこの大一番で暴れ回る姿を見たいという思いを持っていた。その中で、勝つために選ばなければならないメンバーがいる。白子自身、それは分かっていた。それでも、このチームと共に歩んできた時間は、その現実をすぐに飲み込めるほど軽くはなかった。
2015年にブルーシャークスへ加入して以来、チームを強くしたいとずっと思い続けてきた。それがいつからか、ディビジョン1へ行きたいという思いへと変わっていった。ようやくその舞台に手が届きかけた時、自分の名前はそこになかった。魂も友情も、ラグビーへの愛情も、全てがシャークスと共にあった。ピッチに立たせてもらえれば、その思いをぶつけられるという自負もあった。怒りなのか、悔しさなのか、情けなさなのか、自分でも整理できなかった。「消化するのに時間がかかります」。そう言葉を絞り出すと、自然と涙がこぼれていた。

翌日の火曜日、会社へ向かう足は重かった。グラウンドに行くことさえ、簡単ではなかった。それでも練習場に着くと、メンバーに入らなかった選手たちが黙々とウエートトレーニングに取り組んでいた。日本人選手は皆、白子と同じようにフルタイムで働きながら、好きなラグビーを続けるためにハードワークしている。悔しくないはずがない。それでも彼らは、それぞれの役割を全うしようとしていた。その姿に教えられた。「いかん、いかんと思いました」。白子の中で、止まっていたものが少しずつ動き出した。自分を戦う場所へ引き戻してくれたのは、長い時間をかけて育まれてきたブルーシャークスの文化だった。そして、自分もその一員であるという誇りだった。
そんな白子のもとに、木曜日、転機が訪れた。会社で会議中、仁木監督から電話が入る。けが人が出て、メンバーに入る可能性があるという。数時間後、出場が決まった。届かなかったはずの舞台が、突然目の前に現れた。当日の朝まで緊張は抜けなかったが、やるしかない。そう腹をくくった。
試合が始まると、白子は相手の屈強なキャリアーに体を当て続けた。点差は開く。それでも声を出し、真っ向から挑み続けた。今季序盤、メンバーに入れない時期も腐らずにスキルを磨いてきた。11年間、ブルーシャークスとともに積み重ねた時間は、すべてこの舞台のためにあった。簡単に心が折れるはずなどなかった。

チームへの強い思いは、長い時間をかけて白子の中に育っていった。慶應大学卒業後、一度は広告代理店の関連会社に就職し、ラグビーから離れた。それでも、もう一度競技を続けたいという思いは消えず、たどり着いたのがブルーシャークスだった。
現在は荏田に全面人工芝のグラウンドがあり、ウエートルームを備えたクラブハウスもある。だが、白子が加入した頃の景色は違っていた。練習拠点は、駒沢公園に近い深沢。グラウンドは半面で台形に近く、走る場所によって距離が変わった。ボイラーが壊れ、練習後のシャワーも冷水だったこともあった。それでも、チームが強くなることが楽しかった。自分が上手くなることが嬉しかった。
外国人選手がチームになじめず、力を発揮しきれない時期もあった。白子は、どうすればブルーシャークスのために戦いたいと思ってもらえるのかを考え、生活面まで気にかけた。引っ越しを手伝い、不要になった家具を運ぶこともあった。グラウンドの外で使う時間も、チームを強くするための一部だった。
その思いは、周囲にも届いていった。立川が加入して間もない2019年のことだった。ブルーシャークスは上位リーグの強豪・パナソニックと公式戦を戦い、大差で敗れた。試合後、白子は立川に「自分たちはどうしたら強くなれますか」と尋ねた。クボタから移籍して間もない立川にとって、その言葉は驚きだった。まだ発展途上にあったチームの中に、本気でクラブを強くしようとしている選手がいる。その熱が、立川自身の向き合い方も変えていった。
立川は、上のカテゴリーで戦うチームに必要なものを「優れたリーダーが何人いるか」だと語る。立川にとって、白子はまさにその一人だった。「リーダーになり得る取り組みも、発言も、人間性も持っている」。ブルーシャークスが強くなるために必要なものを、白子は長い時間をかけて体現してきた。

試合翌朝のクラブハウス。白子は眠たそうな顔で現れた。「昨日は学生みたいな飲み方をしちゃいました」。そう笑う声には、敗戦の痛みだけではないものが混じっていた。悔しさが消えたわけではない。それでも、仲間と一晩語り明かして、その視線はもう次のシーズンへ向かっていた。「いいチームになってきた。そこに属している自分たちが、誇らしい。自分もこのチームが好きだし、すごく誇らしいです」。
ここまでの道のりは、平坦とはほど遠かった。何度も悔しい思いをしてきた。自分たちのラグビーができずに負け、その怒りを仲間に向けてしまったこともある。それでも、感情をさらけ出す白子を、みんなが受け止めてくれた。だから、その度に立ち上がることができた。その経験のすべてが「白子雄太郎」という選手を作った。この場所で、成長することができた。自分のことを、より好きになれた。「早く、D1に上がりたいですね」。自分もチームも、まだまだ強くなれる。その未来を信じ切る白子の声は、力強く弾んだ。
◇仁木監督、安達航洋キャプテン会見

質問者:本日の総括をお願いいたします。
仁木監督:まず、我々がホストスタジアムとして使わせてもらっている夢の島を、今回初めてビジターとして使わせていただきました。本当に素晴らしい雰囲気を作っていただき、この試合に関わるすべての方に感謝いたします。試合は、チームとして出せることはすべて出し切った結果かなと思っています。結果はしっかり受け止めなければいけませんが、ブルーシャークスはこういう悔しい試合を乗り越えて成長してきたチームです。みんな、来シーズン必ずやり返すという顔を、集合の時にしていました。私自身もかなり悔しいですけど、まだまだ勉強して強くなって頑張らなければいけないなと改めて思いました。ただ、壁はそこまで高くないと思っていますので、必ず来シーズンこの場に来て、昇格したいと思います。
安達選手:本日はありがとうございました。第1戦は、しっかり先制してこちらから仕掛けていこうというプランを実践できました。2戦目も、まずは最初の10分、こちらからプレッシャーをかけていこうと話していたんですけど、最後はゴール前まで攻めることができたものの、そこでミスで終わってしまい、相手のペースになってしまった。それが今日の試合のすべてかなと思っています。今シーズンは、この入替戦に来ることを目標に戦ってきました。来シーズンは、ここに来ることが目標ではなく、ここで勝つことを目標にして、入替戦を見据えたシーズンにしていかないと、ここでは勝てない。一対一のフィジカルも、セットプレーも、もっとレベルアップして戻ってきたいと思います。

質問者:先ほど監督からは、ディビジョン1の壁はそれほど高くないのではないかというお話もありました。選手として試合に臨んでみて、ディビジョン1の壁はどのように感じましたか。
安達選手:自分たちが100%、120%をしっかり出せている時は、戦えているところがありました。第1戦の70分まで対等に戦えていたのは、それができていたからです。そこからの10分と今日の試合に関しては、それができなかった。そこにディビジョン1との差があるのかなと感じたので、自分たちのスタンダードをもっと上げていかないと、ここでは勝てないと思っています。
質問者:昨シーズンと比べてチームにどんな変化があったのでしょうか。
安達選手:一番変わったのは、ギリギリの、本当にあと何分かというところで、しっかり勝ち切ることができたところだと思います。昨シーズンは残り3試合、勝てば残留を決められるという試合で我慢できず、引き分けや負けが続いて、下の入替戦に進んでしまいました。今シーズンは、そういう厳しいゲームを勝ち切れるようになったことで、この入替戦まで勝ち上がることができたのかなと思っています。
質問者:日本人選手はフルタイムで働きながら、仕事も100%、ラグビーも100%という環境で戦っています。一見不利な中でも、ここまでの成績を残せたことについてはいかがでしょうか。
安達選手:仕事をしてから夜に練習するという厳しい条件ではありますが、全員がそこを言い訳にせず、他のチームと同じように、それ以上にハードワークしようと話して臨みました。プレシーズンから厳しいトレーニングをしてきましたし、シーズンに入っても、試合に出ないメンバーも含めて高め合って、試合週にはメンバー外の選手がすごくプレッシャーをかけてくれました。仕事をしながらというのは、正直もう関係ないと思います。そこを言い訳にしていたら強くなれない。このスタイルはブルーシャークスのいい文化です。これを変えずに、限られた時間の中で自分たちを高めていきたいと思います。

質問者:同じ境遇で戦うマツダスカイアクティブズ広島が、ディビジョン2昇格を決めています。来シーズン一緒になるチームへ、一言お願いします。
安達選手:私たちも、仕事をしながらラグビーを100%でやることにプライドを持っていますし、同じスタイルで戦っているチームに対しては、すごくリスペクトがあります。同じリーグで戦えるのは本当にうれしいです。切磋琢磨しながら、お互いに強くなっていければなと思います。
質問者:白子選手は今シーズンはキャプテンではなかったですが、チームにもたらしてくれたものを監督はどう評価されていますか。
仁木監督:私が3年前に監督に就任してキャプテンに任命した頃よりも前、むしろブルーシャークスを強化し始める頃から彼はいました。10年前、今の半分のグラウンドからスタートして、ここまで来ていますので、監督としての思い出というより、個人的な思い出がかなりあります。白子もベテランになってきて、残されたラグビー人生はもう数えるほどになってきていると思います。その中で、誰よりもハードワークして、チームのために体を張ってくれて、元キャプテンとして(安達)航洋のこともチームのことも支えてくれた。本当に感謝しかないです。第1戦はメンバーに入っておらず、実は今週もけがによる入れ替えで急きょメンバーに入りました。この入替戦を目標に頑張ってきた中で、第2戦に選ばれなかったことで、月曜日の練習はかなり落ち込んでいました。個人的に話して、「そんな顔じゃ試合に出られないよ」「まだ呼ばれていないけど、何かあるかもしれないよ」と伝えていたんです。言霊という言葉は怖いなと改めて思いましたけど、こうやって白子が出てくれて、結果はこうなってしまいましたが、本当に白子らしく、元気よく全員を鼓舞しながら、最後まで一生懸命プレーしてくれたと思います。感謝しています。
質問者:ありがとうございました。安達選手にも、キャプテンに就任してから、白子選手について感じたことをお願いします。
安達選手:今シーズン、キャプテンを任せていただいて、本当に何もわからない状態から始めたんですけど、白子さんであったり、立川さんとか、シオネ(・タリトゥイ)とか、いろいろな人に話を聞きながら、どうやったらチームがいい方向に進んでいけるかを常にコミュニケーションを取らせていただいて、アドバイスをもらいながらやらせていただきました。本当に助けていただきました。試合中の自分はきつい場面でも、白子さんが本当にチームを鼓舞している姿を見て、自分もやらないとなと思わせていただきました。感謝していますけど、自分がもっともっと成長していかないと、まだまだ白子さんに頼ってしまっているところがあると思います。白子さんが声を出さなくていいぐらい、自分がもっと頼られる存在になりたいなと思います。

質問者:若手の選手に対して来シーズン期待していることを教えてください。
仁木監督:弓部に限らず、林にしても、河村ノエルにしても、大竹にしても、小西にしても、伊藤にしても、大学でレギュラーを張り、世代別代表にも入った選手が、このブルーシャークスを選んで来てくれるようになったことは、本当にありがたいです。ただ、世代別代表に入ってくる素材ですので、この素材をどう育てていくか。ブルーシャークスを選んでよかったと思ってもらえるように、環境も含めて、もっと整備していかなければいけません。若手にとって、仕事とラグビーの両立はめちゃくちゃ大変です。うちは8時半始業ですが、同じ部署の方に迷惑をかけられないので、ほとんどの選手が7時前には仕事を始めています。夕方、夜に練習なので残業できない分、頑張ってくれている。昼休みも休める選手はいないと聞いています。早くそのリズムをつかんで、仕事とラグビーの厳しさに慣れて、さらにラグビーを高めてもらいたい。一生懸命やっている選手にはまだ及んでいないので、もっと自分をアピールしながら、人物の形成も選手としての形成も、しっかりやってもらいたいなと思います。
質問者:初めてディビジョン1昇格への挑戦権を得て跳ね返されました。この2試合を通じて、特に痛感した課題はどういったものでしたか。
仁木監督:壁はないと言いましたけど、差はあったかなと思っています。上にはディビジョン2よりもっと強敵がいる中で、この2週、同じチーム力を維持することには、まだ慣れていない部分が浮き彫りになりました。第1戦はしっかり準備できて戦えた。だけど第2戦は、中1週間で選手のコンディションを維持しながら、チームをもう一度勝つベクトルに向けるところで、層の厚い浦安さんの方が一枚も二枚も上だったかなと思います。とはいえ、戦えたというのは全員認識していると思うので、この差も埋まってくると思っています。明日からオフに入りますが、仕事とラグビーを両立する中で、仕事しかしない選手は誰もいない。ここを経験しているからこそ、早めに一歩を踏み出して、この差と壁を来シーズン必ず乗り越えたいと思います。目指す場所がここだったので、来シーズンは昇格を目標に、むしろディビジョン2で全勝優勝するくらい圧倒しないと、この壁は越えられないのかなと思っています。入替戦に出た以上、この差を乗り越えるのは絶対だと思っています。全員、めちゃくちゃ悔しい顔をしてくれていたので、来シーズン、必ずやり返したいと思います。
◇白子雄太郎選手 一問一答

質問者:試合を終えて、今の率直な気持ちは。
白子選手:昨日、選手たちと飲みながらたくさん話したんですけど、去年は下の入替戦に回って、今年は上の入替戦に行けた。1年ですごく成長を実感できた、充実したシーズンだったよねと話していました。すごくいいチームになってきたという感覚と、そこに属している自分たちが誇らしいという気持ちがある。自分もこのチームが好きだし、すごく誇らしいです。
質問者:白子選手にとって「いいチーム」とは。
白子選手:それぞれが、それぞれの役割と適材適所でハードワークしている。それが今のチームが強くなっている要因だと思います。選手たちは戦術を理解して、ハードな練習を夜遅くまでこなしている。監督、コーチ、スタッフも、それぞれの役割のところでハードワークしている。練習が終わった後、深夜3時まで動画を編集して、次の日に選手へ渡せるようにしている人もいます。本当にありがたいです。

質問者:この一週間について教えてください。
白子選手:まず月曜日にメンバーに入っていなかったので、すごくショックで、悔しい気持ちでした。シャークスに加入して12年目になりますけど、ディビジョン1に上がること、そこにチャレンジすることは、ずっと目標にしてきたことだったので。その場に自分が選手として立てないと考えた時、本当に悔しい気持ちでいっぱいでした。いつもならパッと切り替えてやるべきことをやってきたつもりなんですけど、月曜日はそんな気分になれなかった。多分、顔にも態度にも出ていたと思います。信用があって、絶対に外せない選手なら使われる。そうじゃなかったというのは、自分の中では納得しているつもりです。及ばなかったところを、また頑張りますという話を監督にはしました。
質問者:気持ちはどう動いていきましたか。
白子選手:気持ちはジェットコースターみたいでした。月曜日はすごく萎えてしまって、しんどいなと思いながら過ごして帰った。火曜日の朝も、会社に出社するのもきついなと思うくらい、精神的にきつかったです。グラウンドに来るのも嫌だなと思っていたんですけど、いざ来たら、メンバーに入っていない選手の方が多いわけじゃないですか。その選手たちが黙々とウエートトレーニングをして、やるべきことをやっていた。それを見て「いかん、いかん」と思って。僕ももう30歳を超えて、ベテランの域なので、ふてくされていてもしょうがない。感化されて、火曜日の練習前には完全に切り替えられていました。

質問者:第2戦に向けては、どんな思いがありましたか。
白子選手:第1戦のメンバーを外れた時、すごくショックでした。「2戦目こそは俺に行かせてくれ、絶対に俺を使ってくれ」とずっと思っていました。この10年以上、僕の魂も友情も、ラグビーへの愛情も、全部ずっとシャークスと共にあった。その思いは誰よりも自分が強く出せると、勝手に思っていたんです。だからこそ「俺を使ってくれ」と強く願っていた。それでもそうじゃなかったから、辛かったです。でも、ずっとやってきたことを、最終的に試合に出た時に出せたので、それは本当に良かったと思います。
質問者:木曜日に状況が変わりましたね。
白子選手:木曜日、会社で会議中に仁木監督から電話があって、けが人が出たのでメンバーに入るかもしれないと。その後また連絡があって、出場が確定しました。やる気がみなぎる気持ちと、急に押し寄せてきた不安や緊張が一気に入り混じって。絶対に試合に出ると思って月・火・木と戦術を落とし込むのと、木曜日にポンと入って落とし込むのとでは、気持ちの準備も練習の入り方も違う。「出られない、嫌だ」とずっと思っていたところから切り替えて頑張ろうとなって、そこからまた試合に出ることになって。気持ちの乱高下は、本当にすごかったです。
質問者:試合当日はどうでしたか。
白子選手:当日の朝、ウォークスルーで緊張しまくって、2、3回間違えたんです。「大丈夫か、白子」みたいな感じで、もう呆れられたみたいになって。やばいと思いながらホテルの部屋に帰って、テーピングを巻きながら書くこともいっぱい書いて。もう行くしかないと思っていたら、ウォームアップ中にトムがけがをして、自分のやることが全部すっ飛んだんです。これはもう思いっきりやるしかないとなって、そこからは緊張が一気になくなりました。

質問者:プレーを振り返っていかがでしたか?
白子選手:点差は離れてしまいましたけど、コリジョンやタックルの部分は、自分でも楽しんでやれていたなと思います。タックルはいい感じで決められた。相手のナンバーエイトがキープレーヤーだったんですけど、そこにいっぱいタックルに入れたので、それは良かったです。ラインアウトも2、3回取れました。
質問者:今季は開幕から試合に出られない時期もありました。
白子選手:最初の4試合は出られませんでした。プレシーズンの肝心なセレクションマッチで体調を崩してしまって出られなかったり、チャンスを逃してきた。それでも諦めずに、常に準備をし続けてきました。ポンと起用された時にそれがハマって、そこからずっと使ってもらえた。スポットライトが当たっていない時、評価されていない時にどれだけ汗をかけるか。そこはずっと考えてやってきましたし、粘り強くできたことが良かったのかなと思います。
質問者:ディビジョン1を意識したのはいつ頃からですか。
白子選手:大学時代はいくつかチームに声をかけてもらったんですけど、一般就職を選んで、一度ラグビーを辞めたんです。2年間別の会社で働いた後、やっぱりラグビーがやりたくなってチームを探したんですけど、どこも取ってくれなかった。2年のブランクがある選手は、普通は取らないですよね。そういう反骨心や悔しさもあって、家の近くでクラブチーム化していた清水建設ブルーシャークスに入れてもらいました。そこからチームがどんどん強くなっていくのが、すごく楽しかった。チームが高いところに行けば自分も引っ張られるし、自分が引っ張ればチームも上がる。そういう感覚で、レベルアップしていきたいと思っていました。

質問者:当時から、今のような環境ではなかったそうですね。
白子選手:昔は練習場も整っていなくて、プレハブ小屋でした。シャワーも、晩年はボイラーが壊れて冷水だけ。グラウンドも半分しかなくて、台形に近い形だったんです。道路側と住宅地側で大きさが違うので、フォワードとバックスが同じように走っても距離が変わる。だからみんな短くて済む住宅地側を選ぶ。戦術練習もほとんどなかったですね。それでも、自分がどれだけやるかが大事だと思っていたので、環境のことはあまり考えていませんでした。チームが強くなっていくにつれて、モチベーションの高い選手が入ってくる。それに合わせて自分もバージョンアップしていく。チームの成長とともに、自分もラグビー選手として、人として成長させてもらっている感覚が強いです。
質問者:ディビジョン1を目指したいと、公の場で発言されたこともありました。
白子選手:チーム全体で話すわけじゃないけど、仲のいい選手とは「いつか行きたいよね」と話していました。J SPORTSでディビジョン2の試合を見た後にディビジョン1の試合を見ると、やっぱりクオリティが違う。そこに自分たちも早く行きたい、そこでプレーしたいという気持ちがありました。その気持ちが出て、去年の納会の時にポンと言ってしまったんです。働きながらラグビーを続ける僕たちが、日本ラグビー界で強くあることには、すごく存在意義がある。希少性があって、価値があると思っていたんです。若い選手たちも「来年はディビジョン1を目指したい」と言っていて。思っているのは自分だけじゃないんだと感じました。監督にもヘッドコーチにも何も断らないまま、あの場で発言してしまったので、一応謝りましたけど。(笑)
質問者:この試合で、新たに見えたものはありますか。
白子選手:「やれる」という自信を、改めて持てました。各国の代表クラスの、スペシャルな選手はいる。でも、二人、三人がかりであれば止まるし、決してできないことはない。ただ、それを80分間、一貫性を持ってやり続けること。メンバーが変わってもチーム力が落ちないこと。2試合やっても強度を保てること。体もスキルも、メンタルの部分も含めて、そこがもっと必要になってくると思います。

質問者:試合を終えて、いつも以上に疲れを感じましたか?
白子選手:どちらかというと、プレッシャーからの解放という感覚が大きかったです。シーズンも最終戦で終わって、緊張してすごく入り込んでいた部分があったので。自分のパフォーマンスをある程度出せたという安堵と、まだ足りないなというところと。いろいろな感情がありました。
質問者:点差が開いても、最後まで白子選手らしいプレーと振る舞いを貫いていました。
白子選手:劣勢のシーンが多くてタフでしたけど、(安達)航洋たちもみんな声を掛け合っていました。フォワードのテーマが「オールエイティ」で、80分間やり続けること。絶対にきついシーンが来るけど、そういう時こそお互い目を合わせて、励まし合って頑張ろうと話していたんです。点差以上に、気持ちが折れてしまうときつい。どんな時でも、生きた目をしている人間でいたいんですよね、最後まで。
質問者:仕事とラグビーの両立について、どう考えていますか。
白子選手:普通に考えたら、働きながらラグビーを全部やるというのは、非合理的でもありますよね。ラグビーだけを目指すなら、仕事は優先度を落とすべきかもしれない。でも、今のシャークスは仕事をやっているから強くなれている気もするんです。戦術理解度の高さは、時間のない中で深く理解する、頭を使うことだから、会社員として物事を深掘りして理解していくことと一緒なんですよね。単にフィジカルが強いだけじゃない。逆に、ラグビーでリーダーが人前で話すこと、コーチとどう進めるかというやりとりは、会社でも役に立つ。そういうふうにつながっていけばいいなと思います。

質問者:オフシーズンの課題は。
白子選手:今シーズンは膝がまだ本調子じゃないので、そこが課題の一つです。左右のバランスを整えること。とっさに出る力が、右に比べて左が弱いと思うんですよね。足の太さは変わらないんですけど、瞬間的な力が左の方が弱いから、右足がかばって張ったり、左足がつりやすかったり。そこをクリアにして、見直す必要があると思っています。重い重りを上げるだけじゃなくて、細かい筋肉を鍛えてバランスを整えて、そこから出力を出せるようにする。やることはもっと増えるのかなと思います。でも、やればやるほど新しい課題が出てくるのは、楽しいですね。伸びしろのように感じられて。
質問者:来シーズンに向けて抱負をお願いします。
白子選手:(D1に)早く上がりたいですね。トップカテゴリーのチームと、こうやって本気でぶつかる試合がしたい。ブルーシャークスに入って、フルメンバー同士でやったのは、今回が初めてに近かったんです。やっぱり興奮がありました。こういう経験を、シーズンを通して何試合もできる場所に、早く行きたいです。
◇立川直道選手一問一答

質問者:白子選手とは、とても仲がいいですよね。仲良くなったきっかけはあるんですか。
立川選手:明確にあります。僕がクボタからシャークスに入った1年目の途中、2019年のことです。ワールドカップイヤーの特別な編成で、パナソニックなどの上位リーグの強豪と公式戦をする機会があって、大敗したんです。僕は移籍したばかりで、上のチームから下のチームに来たという感覚があって、正直、チームのことはあまり考えず、自分が試合に出られればいいと思ってプレーしていました。その負けた試合の後に、白子がすっと僕のところに来て、「どうしたら強くなれますかね」「どういうところを改善すべきですかね」と、チームとしてのアドバイスを求めてきたんです。それが、明確に仲良くなったきっかけです。
質問者:その時、どんなことを感じたのですか。
立川選手:それまで僕は、チームにコミットするつもりが全然なくて、偉そうなことを言っていたんですけど、こんなにこのチームを強くしようと熱を持っている人間がいると思っていなかったんです。「こんな熱を持ったやつがいるんだ」と思って。それを受けて、自分も口で言うだけじゃ責任がないなと思って、チームにコミットしていこうと思えた。僕にとって、すごく大きなきっかけでした。

質問者:選手としての白子選手は、どういう選手ですか。
立川選手:すごくエネルギーがある選手です。そのエネルギーを、必ず見える形で出す。それはすごく重要なことで、周りにエネルギーを与えたり、チームを引っ張ることにつながります。自分の感情やエネルギーをグラウンドの上で表現できるところが、すごくいいなと思います。
質問者:練習中も、お互いをリスペクトしながら声を掛け合っている印象があります。
立川選手:お互いにフィードバックすることを、すごく大事にしています。「今のプレー、めっちゃ良かったよ」とか、「ここはこうした方がいいんじゃない」とか。練習中、自分の姿は自分では見られません。その場でフィードバックをもらえることは、練習の質が上がる一つのポイントです。僕らはお互いに素直に言い合えて、聞ける仲なので、よくやっています。

質問者:上のカテゴリーで戦うチームに必要なものは何だと思いますか。
立川選手:上のチームと下のチームの決定的な違いは、フィジカルや環境ももちろん要因ですけど、何人優れたリーダーがいるかだと僕は思っています。その意味で、白子はリーダーになり得る取り組み、発言、人間性を持っている。コーチと同じ頭を持った選手、リーダーが何人いるかで、練習のクオリティは変わってきます。コーチの考えを理解して、気づいて、選手の中で発言できる人が多くいれば、練習の質は必然的に上がる。そういうリーダーが増えればいいなと思っていますし、白子はその一人です。

質問者:立川選手は白子選手とは、タイプが違うリーダーですよね。
立川選手:タイプは少し違うかもしれないです。僕は何があっても、試合でうまくいかないことがあっても、自分の中で処理する方です。白子は感情を全面に出す。単純だという言い方もできますけど、それは彼の良さでもあり、魅力でもあります。見ていて、めちゃくちゃ面白いです。最近は、どういう時にどんな感情になるのかが分かるようになってきました。
質問者:白子選手から、影響を受けた部分はありますか。
立川選手:受けましたね。最近思うのは、あれだけ素直に感情を出せることは本当に大事だなということです。あと、白子はシオネ(・タリトゥイ)とスキル練習をやっているんですけど、あの年齢でもう一度ベーシックなスキルから積み上げていくことは、なかなかできない。自分もやっていかなければいけないなと、彼から刺激をもらっています。
質問者:立川さん自身も、自分でスローイングコーチを呼んだりして、一歩一歩取り組んでいますよね。
立川選手:そうですね。感情の処理の仕方は白子と違いますけど、自分のやり方で、できることを一つずつやっています。痛いところを治しながら、また自分のパフォーマンスを上げていきたいです。

質問者:ディビジョン1を目指すという目標は、二人の間でいつ頃から出ていたんですか。
立川選手:大きな目標を二人で語り合うようなことは、あまりないんです。ただ、ディビジョン2で上位を目指すなら、入替戦に出ることを目指していないと無理だよね、という話はしていました。最近話したのは、ディビジョン1を目指すということは、ディビジョン1のチームに2試合で2回勝たなければいけないということ。そうなった時に、どういうチームになっていなければいけないのか、という話はよくしていました。
質問者:昨季は下の入替戦、今季は上の入替戦と、相当なスピードでチームが成長しました。
立川選手:すごいですね。本当にみんなの努力ですし、チームがいろいろな強化をしてきた結果だと思います。仮に上がれなかったとしても、ここを目指した取り組みは、また大きく変わると思います。ディビジョン1を目指した取り組みになるので、みんなの努力も練習の強度も、またグッと上がってくる。楽しみですね。