◇4月21日中国電力レッドレグリオンズ戦マッチレポート
清水建設江東ブルーシャークスは4月21日、神奈川県の小田原市城山陸上競技場で行われたリーグワンディビジョン3第13節で中国電力レッドレグリオンズに21-20で勝利した。試合終了間際のラストワンプレーで桑田がペナルティゴールを決めて逆転。勝ち点を「38」に伸ばした。自動昇格圏内の2位が確定しているブルーシャークスは5月5日に武蔵野市立武蔵野陸上競技場で行われるリーグ最終戦のビジターゲームで、既に優勝を決めている日野レッドドルフィンズと対戦する。
チーム全員で繋いだボールを託された桑田の集中力は研ぎ澄まされていた。後半終了間際、18-20の2点ビハインドで獲得したペナルティゴール。ボールをセットし、キックの体勢に入った直後にラストワンプレーを告げるホーンが鳴り響く。緊張したが、自分の役割を全うすることだけを考えた。練習も積んできた。だから、思い切っていけた。振り抜いた右足から放たれたボールは、緩やかな放物線を描いて約20メートル先のHポールの間を通過する。値千金の「逆転サヨナラ弾」。飛び跳ねて喜ぶ24歳の元にチームメートが駆け寄り、歓喜の輪を作った。「こんなに嬉しい勝利はない。ゲームで気持ちを切らなかったというよりは、今シーズンずっと気持ちを切らなかった成果が形になったと思います」と、仁木監督も選手たちの頼もしさに目を細めた。
メンバーが入れ替わっても、ブルーシャークスのラグビーは健在だった。前節に自動昇格圏内の2位以上を確定させたチームはこの日、ルーキー3人を含む若い選手たちが先発した。前半は相手の激しいプレッシャーに苦しみノートライに終わったものの、ゲームキャプテンのピウタウを中心に攻めの形をすぐさま修正。グラウンドを広く使ってのボール回しから縦への突破を中心にゲインを重ね、後半4分の崎野のトライを呼び込んだ。「チームとしてやるべきことは、普段試合に出てるメンバー以外の選手も統一されてるし、理解もしている。誰が出ても同じクオリティーが出せるようになってるのが、今年のチームの1つの強み」と、逆転のペナルティゴールと1トライで8得点の活躍を見せた桑田は胸を張った。
高いレベルでチーム戦術が浸透している秘密の一端は、スタッフ陣の細やかな心配りにある。今季の開幕前の新チーム発足当初、実践形式の練習を行うにあたってチームをランダムに2つに分けた際に、それぞれのグループ名を選手たちに決めさせた。選手たちが考案した各グループの名前は「ターキーズ」と「忍者」。一般的にはメインチームとバックアップチームというような意味合いを持つ名前をコーチ陣がつけることが多いが、吉廣ヘッドコーチの「どちらのグループの選手も試合に向かう意識を高く保てるような名前の付け方をしてあげたかった」という思いからの行動だった。後に「ターキーズ」がメンバー入りの選手のグループとなったが、そのルーツや名前の意味合いに優劣はない。だからこそ、練習では2つのチームが緊張感と対抗意識を持ってぶつかり合う。チームトークにも熱が入る。各選手の戦術理解のスピードは自然と上がっていった。
フルタイムで仕事を続けながらラグビーでも躍進する選手たちの原動力の源はどこにあるのか。今季限りでの引退を表明し、後半からピッチに入った大隈は「ラグビーが大好きな気持ち」だと言う。終業後に行われる週3回のトレーニングは22時を回る。ブルーシャークスの選手たちの日常はハードで忙しい。そんな中、関西地方への出張を翌朝に控えた立川が練習終わりに大隈宅に泊まりに来ることがある。最寄りの新幹線の駅に近い場所に宿泊することで睡眠時間を少しでも多く確保するためだが、いつも2人はリビングで夜更けまで語り合う。内容はほとんどがラグビーの話だ。「早く寝なきゃいけないのは分かってるんですけど、話しちゃうんですよね」と立川ははにかむ。みんなラグビーが大好きだ。好きなことを続けるために、大切な人や生活を守るために必死で戦っている。そこで培った技術と誇りこそ、ブルーシャークスの強さだ。
チームの精神と伝統は、若い世代にも着実に引き継がれている。この日のプレーヤー・オブ・ザ・マッチは3月に東京学芸大を卒業したばかりの安達が獲得。「仕事とラグビーの両立っていうところに憧れてチームに入った」と言う22歳は、練習の動画を人一倍研究しながら、サインプレーに対応。堂々とラインアウトを牽引し、攻守にわたってチームに貢献した。同じくルーキーの奈良、金築も先発としてピッチで躍動。自信と経験を得た若武者たちの存在により、チームはまた強くなった。
チームは5月5日の今季最終節で、既に優勝を決めている日野自動車レッドドルフィンズと対戦する。今季のリーグで2連敗している難敵との戦いを前に、「同じタイミングでディビジョン2に上がらせていただきますが、日野戦で3連敗すると来年にも影響が出てくると思います。絶対に勝たなければいけない相手。もう、来年のつもりでしっかり臨んでいきたい」と仁木監督は闘志を燃やした。ラグビーへの愛情と支えてくれる人への感謝を表現するため。そして頑張っている自分のために。未来のために。たくさんの思いを胸に、ブルーシャークスが今季集大成の戦いに挑む。
◇仁木監督、シアレ・ピウタウ選手(ゲームキャプテン)会見
質問者:本日の総括をお願いいたします。
仁木監督)
まず試合開催にあたり多くの関係者の方々、ご協力いただきまして本当にありがとうございました。監督になってからこんなに勝ちたいと思っていた試合はなかったのでこんなに嬉しい勝利はないなというのが率直な気持ちです。今日は初めて出場するメンバーと久しぶりのメンバーがいて、そういう意味では挑戦的でしたが、彼らの気持ちが最後の最後まで途切れなかったおかげで劇的な勝利に結びついたのかなという風に思っています。ありがとうございました。
シアレ・ピウタウ選手)
タフな試合というのはわかっていたんですけど、新しいメンバーがいる中でこうやって勝てたことはすごく誇りに思います。
質問者:苦しい展開の中で勝てた要因は。
仁木監督)
そうですね。最後の時間まで1分1秒気持ちを切らさなかったというところだと思います。ただ今日の試合が全てではなく、ゲームで気持ちを切らさなかったというよりは、今シーズンずっと気持ちを切らさなかった成果が形になったのかなと思います。
質問者:前半に2回あったチャンスでトライに行かずにペナルティゴールを選択しました。攻めきれない状況をどのように打開しようと思いましたか。
シアレ・ピウタウ選手)
ワイドからワイドにという風に無理にプレーしようとしすぎたのが止められてしまった原因だったので、もっとダイレクトに体を当てていこうという話をして、その中でも小さい得点でも積み重ねることで得点的なプレッシャーを相手に与えたかったというのがありました。やはり新しいメンバー、新しいコンビネーションという中で、そのプレッシャーを積み重ねられたのが結果として後半のトライにつながったのかなと思います。
質問者:今日出場した3人のルーキー選手への評価を教えていただけますか?
仁木監督)
奈良(真弥)はスクラムとセットプレーが持ち味の選手で、経験値では先輩には劣るかもしれないですが、これからブルーシャークスを背負って立つような選手になって欲しい、成長を期待する思いを込めて今回メンバーに入れさせていただきました。本当に頑張ってくれたかなと思っています。
安達(航洋)は合流の頃から戦術などを確認する動画を長く見ていて、東京学芸大学といういわゆるラグビーの名門大学ではないところから来てくれましたけど、それを補うためにピッチ内外で日々一生懸命やってくれていました。それが今回のプレーヤー・オブ・ザ・マッチという結果にも繋がったのかなと思います。
金築(達也)は本当にやることを淡々とやってくれる選手だと思ってますし、スクラムハーフには珍しい180センチを超えてる選手ですので、タックルやディフェンスに関しても特に心配はしてなかったです。球出しに関しても練習では良いパフォーマンスをしてくれていました。
3人とも本当に期待通りの活躍をしてくれて、アーリーエントリー(大学チームに所属している大学最終学年の選手が、手続きと一定の条件を満たすことでリーグワンの公式戦にエントリーできる制度)で公式戦の経験を積んだということは必ず今後にも繋がっていくんじゃないかなという風に思います。
質問者:ルーキーの3選手に対してゲームキャプテンからどんな声をかけたのでしょうか。
シアレ・ピウタウ選手)
やはり自分もルーキーであったことがあるので彼らの気持ちはすごくわかりました。それを理解したコーチと監督が良い声がけをしてくれましたし、自分ができることと言えば週を通して良い練習をして自信をつけさせてあげることかなと思い、役割を明確にして、その都度集中した上で練習に臨むようにという話をしました。
質問者:今日はメンバーを大幅に入れ替えました。これまで試合に出ていた選手が試合の運営側に回るなど献身的な様子が見られましたが、そのあたりは監督の目にはどのように映りましたか。
仁木監督)
まさにその通りで、仮想相手としてのプレーをしっかりしてくれたり、我々が思ってる以上にチームファーストで練習もやってくれたかなと思っています。もちろん(試合に)出たかったという気持ちはあったと思いますけど、やはりチームの将来としてディビジョン2で来年もやっていくぞ、このチームで勝つぞという気持ちでいろいろなアドバイスをしてくれました。今週の練習では私が言おうかなと思うことをシアレが全部言ってくれるんで、私はずっと後ろで立ってるだけで意外に役割がなかったかなと。本当に選手の成長を感じさせていただきました。
質問者:後半に今季で引退される大隈隆明選手と森田澄選手がピッチに入りましたが、チームにどのような影響がありましたか?
仁木監督)
大隈はこういうタフなゲームは理解していたと思いますし、逆にこういう時こそベテランがやるべきことをきっちりやってくれるという風に思ってました。そこに関しては自分のできることを背伸びせずにしっかりやってくれたのかなと思っています。森田も明治大学(出身)らしく、1歩でも前にと頑張ってキャリーをしてくれました。本当に彼らの推進力のおかげでこういった結果になったのかなと思います。
質問者:引退する大隈選手と森田選手に向けて一言お願いします。
仁木監督)
2人ともブルーシャークスを強化しようという2017年に入ってきてくれました。大隈は近鉄(ライナーズ)で培った経験をこのチームに還元してくれましたし、プレーでも引っ張ってくれました。監督として(2020年から3シーズン)チームを引っ張った後、最後に1年間、もう一度ラグビーをしたいと言って、本当に自分の気持ちを抑えて後輩のお手本としてベテランとして最後までやってくれた選手です。森田は今シーズン初めは調子が良かったんですけど、その後怪我が原因であまり試合に出られませんでした。復帰してきたのもおそらく2月末か3月頭ぐらいだったという風に記憶してるんですけども、かなり難しく。引退に関して1月頃に本人から相談があったもんですから、そういったモチベーションがかなり下がる中で、後輩にとって悪い(影響が出る)姿を見せたくないっていう思いでやってくれました。2人の姿は必ず今後のブルーシャークスの文化にもなっていきますし、この2人に関しては本当に感謝しかないです。最後の最後まで走り続けて、チームのために1つでも2つでもっていう風に積み重ねてくれたので、ありがとうと言いたいなと思います。
シアレ・ピウタウ選手)
2人は本当にいつもチームに尽くしてくれました。最後の最後、勝利を届けて終わることができたのは自分的にもとても嬉しいですし、お二人の今後の健闘を祈っています。
質問者:この1勝がチームにもたらす意味を教えてください。
仁木監督)
まず日野(レッドドルフィンズ)との次戦には必ず繋がると思います。前節まで出ていたメンバーはうかうかしてられないなと感じると思いますし、逆に挑戦的なメンバーでも勝ったというところは自信にも繋がると思います。来年ディビジョン2で本当に厳しい戦いが待ってると思うんですけど、選手の個々の力も含め総合力をしっかり上げないとタフな状況では勝ちきれないと思っていますので、次戦にも来シーズンにも繋がる勝利だったと思います。だからこそ、私自身本当に(勝利に)順位をあまりつけたくないですけど、今日に関しては一番嬉しかったなと。
質問者:来季はディビジョン2で戦う次節の日野レッドドルフィンズ戦をどのように戦いたいですか。
仁木監督)
日野戦だからこうしようというのではなく、ヘッドコーチを含めたグラウンドのスタッフが去年の7月から積み上げしたラグビーをしっかり遂行するということだと思います。同じタイミングでディビジョン2に上がらせていただきますが、(日野戦で)3連敗するとおそらく来年にも影響すると思いますので、絶対勝たなきゃいけない相手ですから、もう来年のつもりでしっかり臨んでいこうと思ってます。
シアレ・ピウタウ選手)
次戦は間違いなく一番重要な試合になると思います。今週出なかったメンバーはしっかりリフレッシュできたと思うので、万全の状態で挑んで、ここでどれだけスタンダードを高められるかが来シーズンを戦っていく上での鍵になると思うので、そこはしっかり最後までやっていきたいと思います。
◇大隈隆明選手、森田澄選手会見(今シーズンでの引退を表明)
質問者:まずは一言ずつお願いいたします。
大隈選手)
本日は関係者の皆様どうもありがとうございました。本当にラグビー選手としてこういう形でスパイクを脱ぐっていうのがすごく幸せなことだと感じてますし、本当に今日のこの最高の試合展開、最後の最後まで人に恵まれたラグビー人生だったなと振り返って感じてます。今まで中学生からラグビーを続けてきたんですけども、これまでのチームも今のチームも、今日の試合も含めて、本当に幸せなラグビー人生だったなと思ってます。これからはブルーシャークスのファンの方々と一緒にチームを応援したいと思ってますんで、またグラウンドでお会いした時には気軽に声をかけてください。ありがとうございました。
森田選手)
本日はありがとうございました。自分が今までラグビー人生を歩んできた中で、セレモニーだとかこういう会見の場を設けていただいて自分のラグビー人生が終われるっていうのは予想もしてなかったもんですから、こういう形で現役生活を終わるというのは本当に幸せだなと思ってます。引退の挨拶でも申し上げたんですが、自分がここまでラグビーができたのはやっぱりスタッフやチームメート、メディカルスタッフなど全員がいたからこそなので、本当に素晴らしい人たちに恵まれてここまでプレーできて、感謝の気持ちでいっぱいです。今年で引退はするものの、チームはこれからディビジョン2に上がって、さらにディビジョン1を目指してという形になってくるので、自分は社業に専念するんですけど、チームの元一員としてしっかり応援していきたいなと思っております。
質問者:2人とも後半からフィールドに入りました。どのようにプレーしようと考えていましたか。
大隈選手)
もう試合開始からとにかく中国電力(レッドレグリオンズ)さんが激しいフィジカルなプレーをしてくるのがわかっていて、この2週間それを今日のメンバーで準備してきたので、それを爆発させようってことでアップからチームでそこを課題としてやっていました。実際それ通りに試合に入って、本当に激しいやりあいを前半からずっとやってたんで、見てる僕もすごい気持ちが高ぶってました。入ったら僕も絶対その一部になってやろうと、さらに勢いをつけられるような動きをしたいなって思っていました。
森田選手)
やっぱりリザーブの役割としては、自分が入ってチームを勢いづけるとか、流れを変えるとかそういうところだと思っていて。今日自分が入ったタイミングは点数で言うと負けてる状況だったので、なんとかプレーでも雰囲気でもチームを勢いづけて勝てるようにっていうところは意識していました。
質問者:大隈選手はチームメートに「今日の試合は勝ってくれ」と伝えていたそうですが、その気持ちが反映されたような劇的な勝利でした。
大隈選手)
試合に行く直前、ロッカーアウトする最後の円陣で皆に2つだけ話をさせてもらって。まずは僕が今シーズン監督から選手に戻って、やっぱり選手の皆からしたら接し方がすごく難しかったと思うけど、普通に接してくれて本当にありがとうっていうのをまず伝えました。その後もう1個だけわがままを言わせてくれと。(ホームでの)最後の試合で勝ちたいんだという話を皆の前でさせてもらって。そしたら試合に入ってから、もう本当に皆気持ちを前に出してくれたんで。これは俺が(フィールドに)入るタイミングではもっと勢いをつけるぞと。試合が終わってからは本当にありがとうと。注文通りあんな最高の試合で勝ってくれて、本当にありがとうっていうのを一人一人に伝えました。
質問者:大隈選手は後半入った後に中国電力の選手からかなり激しいヒットを受けたように見えましたが。
大隈選手)
え、本当ですか、全然覚えてないです(笑)。とにかく体を当てまくろうって思って決めてプレーしてたんですけど、でも体的には本当に痛みがなくて。今42歳なんですけど、これまでプレーできてたのも、本当に大きな怪我がなかったっていうのも1つあると思うんで、そこはもう頑丈に産んでくれた両親に感謝してます。
質問者:試合最後の逆転の瞬間について教えてください。
大隈選手)
いやもうね、前のトップチャレンジ(※)の時に、中国電力さんと入れ替え戦をやって劇的勝利したんですよ。なんかその光景とすごい被って。またこんな劇的勝利ができて、本当にめちゃくちゃ嬉しかったですね。とにかくこんな試合ができることって多分なかなかないと思うんで、それは本当に皆の頑張りがあってできたんで、こんな試合で終われるなんて、本当に幸せだなって思いましたね。
※2018年シーズンの中国電力レッドレグリオンズとのトップチャレンジリーグへの昇格をかけた入れ替え戦。劇的な逆転でブルーシャークスが勝利し昇格を決めた。トップチャレンジリーグはジャパンラグビートップリーグの第2部に相当する。
森田選手)
いやもう本当に嬉しいの一言というか。試合前の円陣で大隈さんが今日は勝ってくれって話をして、まとまってるチームがもう1回ぎゅっとまとまれたというか、そこで本当にチームが1つになって今日のゲームができたなと思います。そこの集大成の結果、最後のキックで勝ったっていうところだと思うので、もう本当に嬉しい気持ちと、その時にグラウンドに自分が立ててたってことで、本当にいろいろな人への感謝の気持ちでいっぱいでした。
質問者:今年のブルーシャークスの躍進の要因はどこにあると思いますか。
大隈選手)
昨シーズンちょっと不甲斐ない結果になってしまって、そこから本当に選手がもう一度鍛え直さないといけないというのでまず選手が本当にハードワークしてると思いますね。去年は仕事で遅れたり欠席する選手も結構多かったんですけど、今年はもう全然いなくなって。本当にもう皆でディビジョン2にもう一回上がって戦ってやろうというところで、まずは練習には絶対来てますし、そういうところはすごく感じてます。あとはやっぱりコーチ陣ですね。僕らは練習時間がすごく短いんですよ。だから他のチームほど落とし込む時間とかが多分ないんですけど、コーチ陣が短時間で皆が理解しやすい戦術を作ってくれて、それに対して選手もコミットしてるんで、そういう意味でお互いにハードワークして今年は1つになれてるんじゃないかなと。
森田選手)
私は今シーズン怪我も多くて、どちらかと言えば自分がプレーヤーとしてではなくてちょっと一歩引いたところからチームを見ることが多かったんですけど。今年は個人のやることが明確で、同じ目標に向かってちゃんと皆でハードワークできてたっていうのが一番の要因かなと。そこはチームが動いてからずっとブレずにできていたので、日に日にチームの動きや戦術もどんどん洗練されて仕上がってきてるっていう感覚があったので、やっぱりそういう部分で皆の意識が去年よりもう一段上がったのかなっていう風には感じます。
質問者:仕事をやりながらラグビーを続けている。そのモチベーションはどこからくるものですか。
大隈選手)
僕はまずは本当にラグビーが大好きなんで、まず自分が大好きなラグビーには嘘をつきたくないという、やるからには100%向き合ってやりたいということです。もう1つは清水建設に入社させていただいたご恩というのは絶対あるんで、会社にこうこういう環境を作ってもらってやらせていただいている以上は、しっかりやるべきことをやる責任は発生すると思います。その2つをモチベーションとして今まで頑張ってきました。
森田選手)
この年齢までラグビーをやってる時点で、もう本当に自分はラグビーが好きなんだなっていうのは改めて実感しています。その上で、ラグビーが好きでやるんだったら中途半端じゃなくてしっかり勝ちたいっていう気持ちも出てくるし、自分もうまくなってチームがもっと勝って、上のリーグで上のチームと試合をしたいって気持ちがあります。仕事とラグビーの両立っていうことでやっていく中で、正直練習行くのちょっとしんどいなっていう気分の時も確かにあったんですけど、その2つがあってここまで頑張れたんじゃないかなとは思います。
質問者:今後の活動について教えてください。
大隈選手)
今のところ本当に特に決まってないんですけど、中学生からラグビーにずっと携わってきたんで、自分の生活にラグビーがなくなるっていう実感がなくて、ラグビーに携わりたい気持ちはすごいあります。ブルーシャークスに関しては1ファンになりますし、あとは機会があればどこかでコーチングをしたりどこかのクラブチームでプレーできたらいいなという気持ちはまだあったりするんで、まだ何も決まってないんですけど。とりあえず今はシーズンがまだ終わってないんで、今シーズンやりきって、またご縁があれば、ラグビーには携わっていきたいっていう気持ちはあります。
◇一問一答
・桑田宗一郎選手(逆転のペナルティゴールと1トライで8得点の活躍)
・安達航洋選手(ルーキーながらにフル出場でプレーヤー・オブ・ザ・マッチ)
質問者:試合の振り返りをお願いします。
桑田選手)
相手のディフェンスで想像以上にプレッシャーをくらってしまったので、なるべくディフェンスの薄いところにボールを運ぶっていうのを意識しながら取り組んで、最終的に1点差で勝てたことが、とにかく勝てたことが良かったなと。
安達選手)
前半相手のディフェンスが結構前に出てきてて難しかったんですけど、やってきたモールディフェンスなどでしっかり対応できて、ロースコアのゲームに持っていけたのが勝てた要因かなと思ってます。
質問者: 桑田選手、後半33分に決めたトライについて教えてください。
桑田選手)
相手の選手がパスに入りそうなモーションに入ってたので、パスコース入って取れたらいいなぐらいで走ってて運良く取れたんで、そんな走力に自信はなかったんですけど走り切れて良かったなと思ってます。
質問者: 試合最後の逆転のペナルティゴールはどのような気持ちで蹴りましたか。
桑田選手)
大学時代からコンバージョンキックは結構練習してて、自信を持って蹴る体勢に入ることができました。ただホーン(ロスタイムを除き、前後半それぞれ40分に達すると鳴らされる。その後のプレーが途切れたところで終了となる)が鳴ったので、そこから緊張しました。
質問者: モーションに入る直前にホーンが鳴りましたね。
桑田選手)
そうですね。そこで点が入っても入らなくてもプレーを終わらせられるように考えてたので、とりあえず鳴ってから蹴ろうとは思ってました。
質問者:ポストの間をボールが通過した瞬間はどのような気持ちでしたか。
桑田選手)
いや、嬉しかったっすね。やっぱクマさん(大隈選手)と森田さんの引退試合でどうしても勝ちたかったんで、自分としても。結果的には自分が蹴ったんですけど、それまでにフォワードがスクラムでペナルティを取ってくれたりしたので、フォワードのおかげっていうのもあると思います。
質問者:安達選手、勝った瞬間の気持ちはいかがでしたか。
安達選手)
いや、安心しましたね。最後(桑田)宗一郎さんの横にいたんですけど、決まった時は本当に嬉しかったです。
質問者:安達選手はプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれました。
安達選手)
この2週間ラインアウトのところで練習してきた点を、メンバーでサインを共有して、そこを100%で取れたっていうのは自分としては満足しています。
質問者:今日の試合は今までの試合から大幅にメンバーが入れ替わりました。チームの戦術を理解する点で難しさはありましたか。
桑田選手)
そうですね。チームとしてやるべきことは、普段試合に出てるメンバー以外の選手も今年は統一されてるし、共有もできてるし理解もしてるつもりなので、誰が出ても同じクオリティーが出せるようになってるのが今年のチームの1つの強みでもあるかなって思うので、そんなに違和感はなかったです。
安達選手)
今日のメンバーはあんまり今シーズン試合に出る機会がなかったと思うんですけども、今シーズンずっと練習してきてブルーシャークスの戦術の落とし込みはしてたんで、やってきたことをやるだけっていうのは自然にできたのかなっていう風に思います。
質問者:安達選手は今シーズンから新加入されましたが、ブルーシャークスの文化をどのように感じていますか。
安達選手)
まずは仕事とラグビーの両立というところが一番かっこいい、そこがすごいなと、そこに憧れて入ったところもあります。実際に中に入ってみると皆さん練習でも仕事の疲れを一切見せないですし。あとは今日でいうとなかなか試合に出ていなくて慣れてないメンバーも多かったと思うんですけども、もっとこうした方が良いとかアドバイスをくれたり、すごいチームとしてまとまりがあって、家族みたいなところがすごいブルーシャークスの良いところかなっていう風に思います。
質問者:仕事とラグビーの両立に憧れた理由を教えてください。
安達選手)
リーグワンの他のチームはプロの選手も多かったり、あとは午前中仕事して午後はラグビーに集中するというチームも多いと思います。100%で仕事をフルタイムでやって、その後にラグビーするってきついと思うんですけども、それをやりきったら自分としてもすごい成長すると思って、そこに憧れてこのチームを選びましたね。
質問者:次節の日野レッドドルフィンズ戦に向かう心境を教えてください。
桑田選手)
そうですね。日野(レッドドルフィンズ)はディビジョン3での優勝も決まってるチームで、次戦が(今季)3回目の対戦で、今までの2回は負けていて、やっぱりチームとして3敗して終われないって皆思ってることだと思うので。そこはメンバーに入る入らないに関わらずチーム全員で思うことが大事だし、それが来シーズンにも繋がると思うので、日野戦に向けて自分の役割を全うしたいなって思ってます。
安達選手)
日野に2連敗してる中で、チーム全員が最後日野に勝って終わりたいっていうのは強く思ってると思います。その気持ちをしっかり全員が同じ方向に向かって、あと2週間良い準備ができれば絶対勝てると思うんで。自分としてもメンバーに入る入らない関係なく、日野に勝つっていうチームと同じ方向を向けるように、しっかりこの2週間良い準備をしていきたいなっていう風に思います。
◇イベントレポート
◎チャンバラ決戦イベント
中国電力レッドレグリオンズ戦の試合前に、「チャンバラ決戦イベント」が開催された。このイベントは戦国時代から城下町として栄えた小田原の歴史的背景にちなみ、ブルーシャークスのスタッフが「戦国」をテーマに企画した。
ゲームは特製のスポンジ状の刀を手に取り、足に装着された「命ボール」を守りながら相手のボールを叩き落とすというもの。事前に申し込みをした13人の参加者は、ユニークなイベントを楽しんでいた。バトルロワイヤル形式の最終決戦を制し、優勝賞品としてマッチデースポンサーの「鈴廣かまぼこ」の豪華詰め合わせセットが贈られた神奈川県平塚市在住の20代の男性は、「ボールをうまく落とすのが結構難しかったけど、叩きまくって優勝できました。嬉しかったです」と笑顔を見せた。試合前のフィールドで行われた熱い戦いを通じて、ファンとブルーシャークスの絆がより深まるイベントとなった。
◎ラインアウト体験
試合前のサブトラックでは、選手による「ラインアウト体験」が行われた。ラグビーの基本を学びたいと考えている若いファンや、新しい体験を楽しみたいという家族連れが多く参加。子どもたちは特に、高く空中へと持ち上げられる経験に興奮し、その瞬間をカメラに収めようとする親御さんの姿が多数、見られた。
イベントに参加した小田原市在住の50代女性は「選手も大きいし、(ラインアウトの)高さに驚きました」と貴重な体験を興奮気味に語った。このイベントはファンと選手との交流を深める貴重な機会となり、試合前の会場の雰囲気は一層の盛り上がりを見せていた。