◇JR東日本グリーンウォリアーズ東葛戦マッチレポート

清水建設江東ブルーシャークスは10月31日、NEC我孫子グラウンド(千葉県我孫子市)でプレシーズンマッチに臨み、JR東日本グリーンウォリアーズ東葛と対戦。同じディビジョン2の優勝を争うライバルに24-56で敗れたが、新加入のルーカス・キャシュモアの躍動や、あえて得意でない形で戦ったことなど、収穫の多い一戦となった。
電光石火の速攻だった。前半1分、中盤のラインアウトからボールが展開される。待っていたのは初出場でスタンドオフのルーカス・キャシュモア。ランで仕掛けてJR東日本のディフェンスラインを軽々と突破すると、並走してきた188センチの大型ウイング、エッセンドン・トゥイトゥポウにパス。そのまま一気に重戦車のように駆け抜けてトライを奪った。2週間前に来日した新加入の司令塔と、昨季はコンスタントに試合に出られなかったが潜在能力抜群のトライゲッター。吉廣ヘッドコーチが「今シーズンのエックスファクター」として、期待を寄せる2人が先制トライをたたき出した。

だが、いつものコレクティブで粘り強いブルーシャークスとは何かが違う。7分後には相手ラインアウトからのモールであっさりトライを許す。前半13分に西端のトライで勝ち越すも、3分後に相手ラインアウトから奪い返された。さらに同19分に金築がトライを奪って勝ち越すも、その後一気に3トライを奪われて19-35で前半を折り返した。後半も3トライを追加され、試合終了間際の同38分、山本の意地のトライで一矢を報うも、24-56で敗れた。
「JRに完全に圧倒されてしまいました。良いプレーもありましたけど、課題も出てきました。そういう試合でした」と、ゲームキャプテンのマリティノ・ネマニ。「ディフェンスの接点で、勝ちに行くところをまずやっていかないといけない。接点で負けて相手に速い球出しをされてしまったら、どんなチームでも止められないですから」と8年間在籍した古巣に敗れ、少し残念そうな表情を浮かべた。

30点以上の差をつけられての敗戦。実はチームがより伸びていくための成長痛ともいえる黒星だった。チームで「ブルーエンジン」と呼ばれている猛練習期間を経ての試合。すでに選手たちの体には、キックオフの時点で大きな負荷がかかっていたのだ。さらに、いつもなら相手チームの選手や戦術を詳細に分析し、綿密にゲームプランを作って試合に臨むのだが、この試合では、相手のどこにつけ入る隙があるのかなどを選手たちに示していなかった。「タフな試合でした。練習でも追い込んでいましたし。いろいろなプレッシャーがあってタフになるところで、どれくらいやれるかを(コーチ陣も)見たかったのだと思います」と、この日38歳の誕生日を迎え、フッカーで先発出場した立川は振り返った。
「みんなの器というか、エンジンを大きくするために、あえて不快なところでやっていました。決まってない状態を不快に思う選手が多いのであれば、不快は自分たちを成長させると思うので」と吉廣は意図を説明する。「チームのDNAとして、うちは決まったものをしっかりやって結果を出してきたというのがあります」と話す通り、その試合でやることを、選手たちの役割を、相手の戦術や弱点を分析して徹底的に落とし込み、組織として戦うことで昨季は勝利をもぎ取ってきた。だが一方で、それだけでは今季を戦いきれない。昨季並み、あるいはそれを超える成績を残すためには、もう一歩先にチームが進まないといけないという危機感から、あえて苦手な戦い方を選択していたのだ。

「去年2位になったのは当たり前じゃないんですよ。詰めないと、このチームは個々の能力だけでは戦いきれない。ただ今は、どんな問題が来てもある程度考えられるようにしようという段階なんです」と吉廣は言う。日本人選手はプロ契約ではない社員選手で、練習時間も限られる。だからこそ戦術と団結力が力の源であることは間違いない。一方で昨季のリーグ戦では10勝4敗の2位と大躍進したが、実は得失点差はわずか+40。1試合平均で言えばペナルティゴール1本分の3点を下回っている計算だ。悲願のディビジョン1昇格のために、チームのさらなる成長、スケールアップは不可欠になっている。そのために、あえて選手たちが苦手なシチュエーション、負荷が高い状態での試合を行っていたのだ。
「今日の試合も勝ちたかった。負けるのは嫌いなので。ただ全員がちゃんとしたマインドセットで、ここからやっていけばシーズンまでには大丈夫だと思っています」と力強くうなずいたのはマリティノ・ネマニ。「チームが入れ替え戦で勝つには、もう1枚、2枚上に行かないといけない。コーチ陣の意図をいち早く選手たちに伝えられるようにしたい」と、苦しい時にこそ一段と頼りにされるベテラン・立川も成長を力強く支える意思を示した。
試合には敗れたが、チームは確実に前進している。ライバルたちも当然パワーアップし、さらに昨季躍進したブルーシャークスに対抗策を凝らしてくるだろう。それでも、苦手分野を克服したチームはその上をいくスケールアップを達成し、シーズンでの快進撃につなげる。
◇吉廣広征HC 一問一答

質問者:今日の試合を振り返っていかがでしょうか?
吉廣HC:厳しい試合だったのですが…。まずは、この5週間本当にきついタフな5週間を過ごしてきました。その中で、今週準備してきたのがラインアウトからのスリーフェーズというものなのですが、そのおかげで前半いいラインブレイクができていました。詳細を詰めればいける、それを去年証明してくれたのですが、今回もう1回やってみて、やっぱり1週間でだいぶ良くなっていました。ただ、去年はディフェンスがよかったのですが、ちょっとそこは過信していたのかなと。前半の5本(のトライ)はすべて、3回ラックができるまでにやられていた。ディフェンスも詳細を詰めないといけないなと。詳細を詰めればやれるというのがチームのDNAですが、いつも8月からやってきたものを、来週から11月、12月でやらないといけないので、そこは濃くやらないといけないと思っています。
質問者:詳細を詰めることを後に回してまで、優先してやってきたものはどのようなことになりますか?
吉廣HC:アンストラクチャーというか、(試合中に起きる)事前に準備できないところを鍛えてきました。それはどうしても必要なところでしたので。シーズン中にこれをやってよかったなと思えるようになると信じています。

質問者:今日見ていて、攻撃のラインアウトからキャシュモア選手とトゥイトゥポウ選手のコンビで面白いように突破ができていたと思います。
吉廣HC:準備したもので取れるというのは分かっていました。準備していない、崩れた状態でも、アタックやディフェンスをやらないといけないと思っています。(ブルーシャークスの選手は)チームにとって決まってないことをやることにすごいストレスがあるんですよ。サッカーなどでも自由にプレーできることを喜ぶ選手がいる一方で、どうしたらいいのか迷う選手もいる。うちは決まったことをしっかりやって結果を出してきたので、決まってない状態を不快に思う選手が多い。ただ不快は自分たちを成長させると思っています。今日はそんな状況をあえて求めて、みんなの器やエンジンを大きくするために、不快な状況でやってもらいました。
質問者:そうすると、今日の試合については、点数的なものはそこまで深刻には受け止めないで、先に進んでいくイメージでしょうか?
吉廣HC:全体的にはそこまで気にしないのですが、ユニットのところ、フォワード対フォワードは4年かけてずっとやってきたので、そこ(で結果を出せなかったこと)はネガティブに捉えています。去年の方がディフェンスはできていたので、ここは詰めないといけないと思っています。

質問者:ブルーエンジンというチームの中心部分をスケールアップさせる取り組みを、ここまで行ってきました。手ごたえとしてはいかがですか?
吉廣HC:やりたいことはやってきていると思っています。ただ今回の取り組みが正しいかどうかは、シーズンに入ってみないと何とも言えないので、そこは自分もドキドキはしています。ただ、これをやらないと、同じことだけやっていても昨年と同じ2位にもなれない。ラグビーって簡単じゃないので。
質問者:初出場のルーカス・キャシュモア選手の攻撃面でのクオリティは高いように見えました。
吉廣HC:もともとアタックの能力がある選手です。まだ24歳と若いので、ディフェンスのところやコンタクトの部分はここからどうやって成長していくかですが、能力はあるので楽しみですね。
質問者:左ウイングに入っていたエッセンドン・トゥイトゥポウ選手にもスケールの大きさを感じました。
吉廣HC:とてもいい選手なのですが、ちょっと自由なところがあったりしていたので(笑)。ただ真面目に戦術テストもやりますし、練習もきちんとやってくれていて、(まだ22歳だが)大人になってきている。能力はそれこそめちゃくちゃあるので、楽しみではあります。
質問者:そうすると2選手は、本当にチームに最後の一味を加える秘密兵器になるかもしれないですね。ありがとうございました。
◇ルーカス・キャシュモア選手 一問一答

質問者:ブルーシャークスでの初ゲーム、前半40分の出場でしたが、すごいオフェンス能力を見せていたと思います。
ルーカス選手:最初の10分はいいスタートを切れました。いいアタックをどう継続していくか、それが私たちの課題だと思っています。
質問者:日本に来られて、2週間くらいと聞いていますが、違う国に来て、疲れなどはありますか?
ルーカス選手:最初の2、3日は時差ボケがありましたけど、徐々に生活様式に慣れてきています。日本のことは全部大好きになってきています。

質問者:ブルーシャークスに加入してみて、どのように感じましたか?
ルーカス選手:来る前からワクワクしていました。日本人選手が昼に仕事をして夜に練習するというスタイルなので、そこに関しては日本人選手をサポートしていきたいと思っています。逆に僕も日本人選手から学びをどんどん得ていきたいと思っています。
質問者:改めて今日のご自身のプレーを振り返って、いかがでしたか?
ルーカス選手:今週のテーマにスリーフェーズというのがありました。うまくいく時もありましたが、なかなか遂行しきれなかった時もあり、それをいかに継続していくかが、アタックのキーになると思います。あと、セットピースでミスする場面も多かったので、そこを起点として相手に22メートル内に入られて、そこから相手に必ずトライを奪われてしまったのは反省点です。

質問者:今回ブルーシャークスに加入して初めての試合になりましたが、チームの印象はいかがですか?
ルーカス選手:本当にワクワクするチームだと思います。いい選手が揃っていますし、コーチ陣も本当に自由にプレーさせてくれています。アタックも本当に楽しみな、ワクワクするようなアタックを展開しているので、それをもっと良くしてシーズンに入っていきたいです。
質問者:ご自身の強みや、こういうところを見て欲しいというのを教えてください。
ルーカス選手:まずはラン、自分で仕掛けるというのは魅力だと思っています。またパスにも自信があります。キックもです。自分で仕掛けるラン、パス、キック、この3つが相手の脅威になれば、自分のパフォーマンスとして満足いくものになると思っています。

質問者:基本のポジションはスタンドオフで合っていますか?
ルーカス選手:フルバックもできなくはないですが、まずは10番でやってみたいと思っています。
質問者:利き足は左ですよね?
ルーカス選手:左足です。左足の強みもありますし、(右利きの選手とは逆側の)スペースを大きく取っていけるのは強みだと思います。
質問者:今シーズンの個人の目標とチームの目標を教えてください。
ルーカス選手:自分のゴールとしてはいろいろな経験を積みたいと思っています。そしてどんどんチームになじんでいきたいなと思っています。文化やチームの雰囲気などもです。フィールドではどんどんサポートして自分の持っている知識も共有していきたいですし、逆にコーチ陣や日本人選手たちからも学んでいきたいと思っています。去年もディビジョン2の2位になったと聞いていますし、今年はしっかり成績を残してディビジョン2で優勝して、ディビジョン1に行けるようにしたいです。