◇静岡ブルーレヴズ戦マッチレポート

清水建設江東ブルーシャークスは10月10日、ヤマハ大久保グラウンド(静岡県磐田市)で静岡ブルーレヴズとのプレシーズンマッチに臨み、14-54で敗れた。ディビジョン1の強豪を相手に、前半を7-33で折り返したブルーシャークスは、後半も粘り強く戦い、1トライを奪った。スコアでは差をつけられたものの、トップカテゴリーのチームとの対戦を通じて新たな課題と収穫を得る一戦となった。
高い位置から降り注ぐ陽光が、スクラムを組む16人の選手たちの背中を明るく照らしていた。最前列で頭を下げた左プロップ・野村の顔は深い影に包まれている。だが、隣のフッカー・田森の肩のジャージーを力強くつかむ左拳が、このプレーに懸ける思いを伝えていた。同じ相手に何度もやられるわけにはいかない。負けん気が強く、自らの成長に貪欲な彼本来の姿だった。

後半3分、グラウンドの中央で迎えたスクラム。野村は後半から出場した日本代表キャップを持つ稲場と組み合った。両者がこの試合で初めて対面したのは、その2分前だった。自陣で迎えた相手ボールのスクラムで、野村は組む位置をずらされ、押し込まれていた。近大に所属していた稲場とは、京産大時代に対戦した経験もある。2学年下の相手は、今や桜のジャージーに袖を通すまでに成長していた。
だが、同じ失敗は繰り返さなかった。野村は相手と真正面から組むことを意識し、チームメートとコミュニケーションを取りながら修正を図った。今度は負けなかった。スクラムの形を崩されることなく、相手の圧力を受け止め、そのまま押し返した。一度やられても、課題を見つけて次のプレーに生かす。昨季から積み重ねてきた経験と技術が生かされていた。「去年から、自分たちはこういうプロセスを踏めばいいスクラムを組めるっていうスタンダードができてきたんです。一発目に組んで『これちょっと違うな。じゃあここをこうしようか』って、後ろの選手にも注文して変えていく。試合を通して修正できる力はだいぶついてきました」。ディビジョン1でも屈指のスクラムを誇る相手に、自分たちが磨いてきたものを発揮できた。野村はそこに確かな手応えを感じていた。

静岡ブルーレヴズは、前身のヤマハ発動機ジュビロ時代からスクラムにこだわり、日本ラグビーのトップカテゴリーで戦ってきた。ブルーシャークスも同じようにセットプレーを強みにしている。野村にとって、ブルーレヴズはどうしても対戦してみたい相手だった。だからこそ、試合会場へ向かうバスの中では、公式戦と同様の緊張と高揚を覚えた。
実際に組み合って感じたのは、8人全員の細部へのこだわりだった。ブルーレヴズのフロントローは、スクラムを組む前から有利な位置を取ろうと、横幅や前後の距離を巡って細かな駆け引きを仕掛けてきた。そして組み合えば、今度は8人が一体となって圧力をかけてくる。「フォワード全員が一個一個の動きにこだわってるなっていうのはすごく感じました。見習う部分も吸収する部分もたくさんありました」。最終的に点差を付けられて敗れた苦しい試合だったが、それでも野村は「楽しかったです」と振り返った。自分たちが成長したことへの確信を得た。もっと強くなれるという予感があった。それが嬉しかった。

今季のチームの目標はディビジョン2で頂点に立つこと。野村自身も更なる成長を求めて準備を見直してきた。技術面で新たに取り組んでいるのが、全体練習後に続けているパスキャッチだった。昨季終了後、坂本BKコーチから「プロップでももっと器用にキャッチできるようにならないとダメだよ」と指摘された。それまではボールをこぼすことを恐れ、胸で抱え込むことが多かった。以来、走り込みながら手でパスを受ける練習を続けてきた。時間がなければ、1球、2球でも欠かさなかった。「キャッチの仕方でアタックの質が上がるんです。手で取りに行くことで前のめりになって当たれる。フォワードってもう一歩、二歩の世界なので、それがすごく大事なんです」。少しでも前へ。そのために、居残りでのルーティンを繰り返してきた。
食生活も見直した。以前は好きなものを食べることを大切にし、栄養管理でストレスを感じたくないと考えていた。しかし、1日に必要なタンパク質の量を計算すると、普段の食事では大幅に足りていないことに気づいた。今では朝食に卵や納豆を取り入れ、仕事中も午前10時と午後3時ごろにプロテインを飲む。最初は負担に感じていたことも習慣となり、飲み忘れると気持ちが悪くなるほどになった。この日、名古屋から応援に駆けつけた母から「ちょっと引き締まったね」と言われた。体重は減っていないから、筋肉量が増えたのかもしれない。久しぶりに会った母の目には、息子の変化が映っていた。

どうしてもなりたい自分がいる。その切実な思いがあるから、素直にも貪欲にもなれた。プロの環境への憧れはある。それでも、野村が選んだのはブルーシャークスだった。仕事を終えてから練習に集まり、限られた時間の中で互いに要求し合いながら強さを追い求める。今では、そんな環境に他のチームにはないやりがいを感じている。「何回も練習できないので、一回一回に集中しないと、うまくいかなかったらそれで終わってしまう。だからみんながしっかり準備して臨んでいて、質の高い練習ができている」。限られた時間の中でも、細部にこだわってきた。昨季はディビジョン1への昇格を懸けた入替戦まで進んだ。目指すべき最高峰の舞台まで、あと少し。野村は強くなれた自分にも、仲間にも誇りを感じている。

まずはディビジョン2で圧倒的な存在になること。「ディビジョン2の背番号1(左プロップ)の中で1番になる。ディビジョン1にも『ディビジョン2の1番に野村ってやつがおるよな』っていうのを知らしめたいです」。そして、いつかは日本一の1番になってみせる。その大きな目標に向かって、ブルーシャークスで着実に力を蓄えていく。
目立たなくても、一歩でも前に出る。それがフォワードの仕事だと考えてきた。わずかな前進が仲間の突破を生み、やがてチームの勝利につながっていく。そして、野村自身もまた、小さな積み重ねによって変わってきた。成長の喜びがあるから、仕事とラグビーの両立にも力を尽くしてきた。痛みを抱えながらもフィールドに立ち続けられた。一歩ずつ前へ。その道の先で、理想の自分にきっと出会える。これまでの歩みが、野村の確信を揺るぎなく支えている。
◇野村三四郎選手 一問一答

質問者:今日、ブルーレヴズと対戦していかがでしたか。
野村選手:もともとブルーレヴズはセットプレーを強みにしているチームだったんで、いつかやりたいと思っていました。実際にやってみて、スクラムでなかなか押せなかったり、モールでトライを取られたり、セットプレーから流れを持っていかれた部分がありました。見習う部分も吸収する部分もたくさんあったし、自分たちもセットプレーを強みにしているチームなので、もっともっと相手を圧倒していかないといけないと感じました。
質問者:特に勉強になったところは?
野村選手:どのマイスクラムでも相手にプレッシャーをかけてくるところですね。スクラムはどうしてもフロントがフォーカスされるんですけど、フロントだけじゃなくて、8人全員が一個一個の動きにこだわってるなっていうのはすごく感じました。8人パックですごくプレッシャーをかけてくるっていうのが強かったというか。

質問者:試合中にだんだん対応できていたようにも見えました。
野村選手:それはありますね。去年から、自分たちはこういうプロセスを踏めばいいスクラムを組めるっていうスタンダードができてきたんです。一発目に組んで「これちょっと違うな。じゃあここをこうしようか」って、後ろの選手にも注文して変えていく。試合を通して修正できる力はだいぶついてきました。

質問者:試合は楽しかったですか?
野村選手:楽しかったです。レベルが高い相手に対して全くできなかったわけではなく、要素要素で今まで積み上げてきた部分はできてるところがあったので。そういうところは、上のチームに対してもできてるなっていう感覚はすごくありました。
質問者:今のチームには、どんな成長を感じていますか。
野村選手:ラインアウトからのアタックでも、フェーズ中のアタックでも、自分がここに立ったら何をしないといけないかっていうのを、まだ完璧じゃないですけど全員が分かってきています。毎回の練習でビデオを見直して、コーチからレビューをもらったらすぐ修正できるようになってるし、それが試合でもできるようになってきています。
質問者:戦術を理解して実践するまでの時間も短くなっていますね。
野村選手:そうですね。新しいムーブが多いというよりは、去年やったことがベースになっていて、そこに少し違うものを入れている感じです。ベースが身についているのは大きいですね。

質問者:今年は個人としての準備も変えましたか。
野村選手:去年、シーズン半ばから疲労による足の痛みが出てきたんです。それで(ストレングス&コンディショニングコーチの)マーシャルとヤレルに相談して、足裏の筋力をつけるメニューを作ってもらいました。7月からウエートトレーニングの前にやっているんですけど、本当に地味だけどめちゃくちゃきついです。でも効果はすごくあって、今まで痛かったところが本当になくなってきているんですよね。痛くてかばっていた部分もあったんで、それがなくなったのは大きいです。
質問者:技術的に取り組んでいることは?
野村選手:ボールのキャッチですね。去年のシーズンのレビューで坂本BKコーチから、プロップでももっとスマートに、器用にキャッチできないといけないって言われて。今まで手でキャッチするのが苦手だったんですけど、7月から毎回練習後に取り組んできました。
質問者:キャッチの仕方でそんなに変わるんですか。
野村選手:全然違います。キャッチの仕方でアタックの質が上がるんです。手で取りに行くことで前のめりになって当たれる。フォワードってもう一歩、二歩の世界なので、キャッチしてすぐ姿勢に入ることがすごく大事なんです。

質問者:リカバリーで意識していることは?
野村選手:最近はタンパク質を意識して取るようになりました。去年は美味しいものを食べたいなとか思ってたんですけど。今年はアスリートとして、仕事中も午前10時と午後3時ぐらいにプロテインを飲んで、朝も卵2個と納豆、豆乳ヨーグルトとか。最初に必要なタンパク質の量を計算した時は「全然足りないわ」って思ったんですけど、こまめに取るようにしていたら習慣になってきました。今ではプロテインを忘れると気持ち悪くなるぐらいです。
質問者:ブルーシャークスのコーチは選手のプレーを細かく評価してくれますね。
野村選手:本当にそうだと思います。指導の仕方っていろいろあると思うんですけど、今のコーチの方々は選手をリスペクトしてくださっていて、レビューでも映像を見せながら「これがいいんだ」って分かりやすく説明して、いいことは褒めてくれます。本当に工夫してレビューしてくださっていると思います。
質問者:ブルーシャークスに入って良かったですね。
野村選手:そうですね。プロの環境に憧れるところもありますけど、最近は他のチームにない良さをすごく感じています。本当に時間がない中で突き詰めるというか、こだわってやっていくところ。何回も練習できないんで、一個の練習に集中していかないと、うまくいかなかったらそれで終わってしまう。だからみんなが一個一個の練習に準備してきて、質のある練習になっている。毎年「時間が少ないから質にこだわろう」って言っているんですけど、その質がどんどん良くなってきていると思います。

質問者:ディビジョン1のチームに対する意識も変わりましたか。
野村選手:今はディビジョン1のチームに対しても、自分たちのラグビーをしに行くっていう気持ちが強くなっています。入れ替え戦でも全く歯が立たなかったとは感じていないんで、自分たちのラグビーに自信があります。去年は練習試合でディビジョン1の相手にいい試合ができたら、それで良かった部分もありました。でも今は、いい試合をするだけじゃなくて、勝ちに行かないといけない。今日も円陣でそういう話をしました。強いチームに対しても練習試合で勝って、自信をつけていきたいです。
質問者:個人的な今シーズンの目標を教えてください。
野村選手:ディビジョン2では、スクラムで圧倒的に勝つことです。それ以外にもボールキャリーやディフェンスのタックルで相手をドミネートしたい。今はディビジョン2なんで、ディビジョン2の(プロップとしての)1番の中で1番になる。「ディビジョン2の1番はこいつだな」って思われる選手になりたいです。そしてディビジョン1にも、「ディビジョン2の1番に野村ってやつがおるよな」っていうのを知らしめたいです。