◇ヤクルトレビンズ戸田戦マッチレポート

清水建設江東ブルーシャークスは10月3日、清水建設荏田グラウンド(神奈川県横浜市)で今季3戦目となるプレシーズンマッチに臨み、ヤクルトレビンズ戸田と対戦。ディビジョン3の相手に71-5で快勝して、新シーズンに向けて順調な仕上がりを見せた。
序盤からスクラムを中心に相手を圧倒したブルーシャークス。しかし、その真価が見られたのは試合終了間際だったかもしれない。71-5の後半35分過ぎ、ヤクルトのキックオフからの流れで、自陣22メートルライン内側でペナルティを取られる。相手ラインアウトから始まる連続攻撃、だが青い壁と化した選手たちは集中を切らさなかった。統率された守備を続けると、最後はスローフォワードを誘発して守り切った。さらに終了直前には倒れた相手選手がボールを手放すと、素早くポイントに走り寄った白子がジャッカルのビッグプレー。そのまま隙を見せず勝利した。
「チームを救えるようなプレー。スティールやビッグタックル、分厚いディフェンスに対してすごい思い切りアタックをする。そういったチームに勢いを与えるようなプレーは意識しているので、1つでもそういうことがチームのためにできたらいいなと思ってプレーしています」と白子。チーム加入15年目、36歳の崎野も「(全員が最後まで気も力も)抜かないですね」とうなずいた。大差のついた練習試合でも、労をいとわず守備でも体を張り続けるところに、チームの進化と強さが感じられた。

この試合のテーマは「Show your standards」。選手たちはスタンダードの証明として、1人1人がチームの求める基準に達しているかを、与えられた短いプレー時間の中で証明するように課題を与えられていた。40分、30分、20分と、それぞれ出場時間を与えられる中で、課せられたプレーと役割を全力で表現した。
前半5分には得意のスクラムでペナルティを獲得。その流れから藤岡がトライを奪うと、同13分、19分にはラインアウトからのモールで押し込み追加トライを奪った。ディビジョン1でも戦えるスクラム、モールを目指しているブルーシャークス。前半19分までに磨いてきたプレーで3トライを奪い、早速スタンダードを証明して見せた。
3季ぶりにチームに戻り、この試合はスタンドオフに入ったオルビン・レジャーの巧みなゲームコントロールもあり、前半に5トライを奪い33-5で折り返すと、後半は勢いを加速。6トライを奪うとヤクルトを0点に抑え、71-5で勝利をあげた。

実はこの試合、ブルーシャークスは自らに負荷をかけるかのようなコンディションで戦っていた。6週間をかけて、チームの中心をスケールアップする「ブルーエンジン」というプロジェクトに突入していたのだ。週末に試合があることなど気にせず、運動量と負荷の高いトレーニングを積んできていた。精神的にも肉体的にも追い込まれながらの試合だったが、選手たちはそれぞれの役割をきちんと果たした。
そんな後輩たちを頼もし気に見つめていたのが、今も熱心に応援するOBたちだ。チームは1976年に清水建設ラグビー部として創部され、きっかけは得意先の依頼で社内のラグビー経験者が招集されたという、大変珍しい成り立ちがある。
1985年にチームに加わった小林寛さんは、中高はバスケットボールをしていて、会社に入るまでラグビーをしたことはなかった。「入った時は練習場もなかったし、シャワーもなくて水をかぶっていた。川にボールが落ちて拾ってこいと言われたり」と楽しそうに昔を振り返った。「1986年からチームの強化も始まって、名門の人たちが入ってきたけど、そういう人たちも経験のなかった自分たちにラグビーを教えてくれて、仲間意識を持ってくれて一緒のメンバーとしてやってくれていたのがうれしかった」。
その隣にいたのが、国学院久我山高校、明治大学と、まさに名門校でプレーをしてきた平地成美さん。1987年に入社しフルバックやウイングで活躍してきた先輩は、「ラグビーはルールも変わって、今はプレーが継続するようになり、フィットネスも高くないとできない。そうやってレベルが上がっている中でも、サラリーマンチームとしてプレーできているのは素晴らしい」と感嘆の声をあげた。

創部50周年を迎え、試合が行われた練習場の横にあるクラブハウスの入り口には、所属選手やOBたちの名札が入るネームプレートが新設された。チームには歴史があり、浮沈はあれど、それが脈々とつながり現在のブルーシャークスになっている。「自分が先輩と名乗るのはおこがましい。1大ファンです。選手たちは昼間仕事を一生懸命やって、その後にラグビーをやっている。社食でご飯を食べている姿を見たりすると、本当にすごいなと思うし、尊敬の念を抱きます」と小林さんは目を細めた。
そんなチームを最も長く見続けてきた現役選手の1人が崎野だ。「僕が入った頃は、確か(実質的に3部の)トップイーストのディビジョン2にいて、4位くらいで入れ替え戦にも行けないくらい。近年では1番低迷していた時期だったかも」と振り返る。「それが、どんどん強くなってきて、去年は(ディビジョン1との)入替戦までいって。すごいですよね。なんか面白いですよね、人生って。大学卒業後にラグビーを続けるかも分からなかったのに、チームがどんどん強くなる過程が楽しくて僕は続けていて、なんとか食らいつこうという感じですかね」と15年を振り返った。

チームに加入して5年目、HCとしては4年目を迎えた吉廣HCは「僕は清水建設の社員ではないですし、ブルーシャークスでもプレーしたこともないので、余計にチームの歴史や文化は大切にしないといけないと思っています」と自らに言い聞かせるように話した。日本人選手は、仕事を抱えながらラグビーを続けるだけに必然的に練習時間が短くなるが、それも受け入れたうえで知恵を絞って強化を進めてきている。また、その状況を外国人選手たちにも理解させることにも心を砕き、1つの戦う集団にまとめあげてきた。
日本人選手も、外国人選手も、チームスタッフも、一丸となってやれることをやるのが現在のブルーシャークスの文化と言えるかもしれない。50周年の今年、「いろいろな立場、役割のある人たちが1つ1つの目標に向かってハードワークしてやっているチームなので、そういう一体感があるところを見ていただきたいと思います」と白子。歴史も文化もOBやファンの思いも乗せて、新たな歴史を作るシーズンに挑む。
◇吉廣ヘッドコーチ一問一答

質問者:今日の試合を振り返られていかがでしょうか?
吉廣HC:今週から6週間かけてすごく苦しい練習期間に入ってきています。それを僕らはブルーエンジンって言っているんですけど、すごく走る量も多くてきつい、インテンシティも強い練習を、火曜も木曜日も(今日の)試合関係なく、めちゃくちゃ上げてきたんです。エンジンを大きくしたり、いいオイルを入れて綺麗な質のいいエンジンを作ったりをやってきている中で、試合としてはちょっとミスも多かったですし、もう少しできたかなと思うんですけど、そのハードな状況の中で、最後まで体を張るなどはできていたと思います。自分たちのスタンダードを上げる、あとはもうそろそろメンバーも選抜され始めますが、その競争という部分は見られたのは良かったです。練習がきついと、どうしてもネガティブになりがちですが、そんな雰囲気もなくて、そこも前向きにとらえています。
質問者:スコアを見る限りは快勝ですが、地に足がついたコメントに感じます。
吉廣HC:点数的にはかなり差もついた形のゲームですけど、まだ満足はしていません。これは30点差でも、50点差でも、100点差だったとしても同じレビューになるかなと思います。次の静岡ブルーレヴズ戦(10月10日)や、東芝ブレイブルーパス東京戦(10月24日)で、強度が高い中でどれだけできるか。特に来週に関しては、練習はさらにボリュームが上がるので、相当体的にはタフかなと思うんですけど。
質問者:高い目線でチームの強化を続けてこられているのを感じますし、それについてくる選手の意識の高さを感じます。オルビン選手にも話を聞いたのですが、チームに戻ってきて何が一番変化しているのかを聞いたのですが、まずマインドセットと言っていました。崎野選手に話を聞いた時も今年はマインドセットが違うと話されていて、白子選手と話していても、途中からマインドセットの話になっていきました。そこをどうやって醸成されてきたのかは、気になりました。
吉廣HC:入れ替え戦を経験できたのは大きかったです。やはりここがスタンダードというのを、みんな肌で体感できたところですね。実際そこを経験したことで、(ディビジョン1の相手に)できたことできないことがみんな分かったと思いますし、本当にやったらいけるかもしれないというのが、根底に少しみんな芽生えたのでは。ただまず(ディビジョン2で)2位以内に入る、優勝するというのは、周りの人が言うよりめちゃくちゃ大変なことっていうのは、自分たちコーチ陣も一番よく分かってくるので、昨年のシーズンオフもすごく苦しかったですし今年も苦しんでいますが(笑)。

質問者:今日オルビン選手をスタンドオフで使われましたが、彼が入ることでのプラスはどのようなところだと考えられていますか?
吉廣HC:もともとスーパーラグビーでも10番に入ってプレーしていましたが、ただ適性的に12番の方がいいのではと思って、(以前在籍していた時は)12番で使っていました。チームで一番出場時間が長い選手でした。一生懸命やるだけでなく、言ったことを忠実にやってくれます。日本人選手に対してのリスペクトもありますし、チームのことを考えて、それこそ日本人選手が目指すべき愚直にやるみたいなところをやりきってくれるので本当に安心感があります。そういう部分を見せられるのは、チームにとって非常に大きいと思うので期待しています。
質問者:ここまで練習試合を3戦行ってきました。振り返ってみて、できはいかがですか?
吉廣HC:次からの静岡ブルーレヴズ戦、東芝ブレイブルーパス東京戦を1つの評価基準にしようと思っていたので、それ次第かなと思いますけど、新しいことを取り入れている中で、皆でやろうとしようとか、それこそスタンダードが上がっているとか、それは非常にポジティブです。今、本当に練習も苦しい、試合も苦しい状態でやってもらっている段階なので、本当に相手やレビューというより、自分たちが1日1日の練習や試合のクオリティをどれだけやれるかだと思っています。振り返って直すというよりは、今どれだけ積み上げていけるかっていうフェーズかなと思っています。
質問者:これから、さらに5週間積み重ねていく日々が続くと思うんですけど、この後のブルーエンジンをどのように進めていきますか?ブルーシャークスは仕事との関係で練習時間が限られるだけに、コーチ陣の腕の見せ所にもなるかと思います。
吉廣HC:練習内容などはやることは決まっているので、チームはそれを粛々と進めていければと思っています。ただ僕らコーチ陣は「選手の1分のためにコーチは1時間かける」っていうスローガンでやってきています。選手が一生懸命やってくれているので、コーチ陣は時間をかけて一回一回の練習をしっかり組み立てて、できるだけ効果がある、成果が出るように最大の準備をしていきたいと思っています。

◇オルビン・レジャー選手一問一答
質問者:今日は45分の出場だったと思いますが、本日の調子はどうでしたか?
オルビン選手:もちろんいいプレーもありましたが、まだまだ課題もあったので、そこはもっと突き詰めていかないといけないと思いました。すごい良いコンディションの中で楽しんでプレーできたので、それがよかったです。
質問者:3年ぶりに帰ってこられて、チームの変化は感じられましたか?
オルビン選手:私が一度チームを出た時から色々と進んでいると感じていますし、(選手への)スタンダード、基準というのも、(周囲からの)期待値ももちろん上がっているように感じます。ディビジョン2にいるだけじゃなくて、やっぱりディビジョン1にチャレンジしていくという、その姿勢がすごく見られます。そのマインドセットの面が一番大きい変化かなと感じました。
質問者:その中で今回ブルーシャークスに戻ってきてくれた理由をお聞きできますか?みんなが復帰を待っていたと思います
オルビン選手:契約の面もチャンスをいただけて、ここに戻ってこられるのは、すごく良いチャンスになると思いました。日本に来る最初のチャンスをいただいたチームなので、ブルーシャークスは僕の心の中に常に残っていました。そのようなチームに戻ってきて、ブルーシャークスをより良い位置に押し上げていきたいという気持ちで戻ってきました。

質問者:以前に在籍されていた時は、オルビン選手の活躍もありましたが、残念ながら3部に降格することになりました。ただ、そのチームが昨年はD1/D2入れ替え戦まで行きました。ブルーシャークスが強くなっていると、外から見ても感じられていたのでしょうか?
オルビン選手:強くなっているというのは感じていました。入れ替え戦でも(ディビジョン1の)浦安D-Rocksを、すごく力強く追い込んでいたので、本当に強くなっていると感じていました。
質問者:その強くなってきたチームに戻ってきて、何をさらにプラスできると考えていますか?
オルビン選手:いろいろなポジションでプレーできることで貢献していきたいと思っています。また左足のキックだったり、そういうスキルでも、もっとチームに貢献していきたいですし、ゴールキックもできますし、ディフェンスでもいいディフェンスができると思っています。チャンスをもらった時は、しっかりみんなとつながってコミュニケーションをとってプレーしたいと思っています。
質問者:今日はスタンドオフでプレーしたかと思いますが、どのポジションまでプレーできますか?
オルビン選手:12番13番(センター)がメインになるかと思いますけど、10番(スタンドオフ)もできます。最後のオプションで15番(フルバック)もあります。
質問者:オルビン選手がいると、本当にチームの戦術の幅が広がりますね。お話を伺っていて自分が自分がというのを感じなくて、できることで、与えられたポジションで、チームに貢献したいという思いを強く感じます。
オルビン選手:やはりチームが必要なところで、チームが求めている仕事を何でもやろうと思っています。
質問者:オルビン選手の話を聞いていると、本当にセルフィッシュさを感じないというか、とても日本のチームに合いそうな心構えの方のように改めて感じます。
オルビン選手:最初にブルーシャークスに入団した時は、日本人選手たちが午前9時から夕方の5時までしっかり仕事をして、それからラグビーをやっていたことに大変驚きました。日本人の選手が仕事でもプレー面でもハードワークをしているのを見たら、自分がハードワークしない訳にはいかないと思っています。
質問者:今シーズン、ファンの人にここを見てもらいたいというのはありますか?
オルビン選手:ジャストハードワーク!努力すること。自分がボールを持っていない時でもどれだけサポートに回れるか、またどれだけ周りを動かすことができるか、ディフェンスでも同じことを考えています。
質問者:今シーズンご自身の目標とチームの目標を教えてください。
オルビン選手:与えられたチャンスに対して常に準備できていることを、個人の目標にしています。チームの目標はディビジョン1まで行くことです。
