試合情報 Game info

◇日野レッドドルフィンズ戦マッチレポート

後半35分、金築がトライを決める

 清水建設江東ブルーシャークスは4月4日、夢の島競技場(東京都江東区)で行われたNTTジャパンラグビー リーグワン2025-26ディビジョン2 第10節で、日野レッドドルフィンズを36―20で下した。雨が一時強く降り、風も吹きつける難しいコンディションの中、前半は7―20とリードを許したが、後半に5トライを重ねて逆転。3トライ差以上で勝利し、ボーナスポイントを含む勝ち点5を手にした。次節は4月11日、ヤンマースタジアム長居(大阪府大阪市)でレッドハリケーンズ大阪と対戦する。

フィールドを囲む桜を背に笑顔で引き上げるブルーシャークス選手

 試合を通して降り続いた雨は止み、穏やかな風がフィールドを取り囲む散り始めの桜を揺らしていた。選手たちの濡れた顔やジャージーには、芝が張り付いていた。前半13点ビハインドからの鮮やかな逆転勝利。直後の円陣、仁木監督は挑戦者の顔を取り戻した一人ひとりに向かって冗談混じりに叫んだ。「ドキドキさせるやん!」。ピッチサイドが笑い声に包まれた。

 監督のその一言が、思いつきの冗談ではないことを選手たちは理解していた。受けに回り、相手の勢いを止められないまま押し込まれた前半は、ブルーシャークスらしい戦い方ではなかった。どんな相手に対しても自分たちの役割を全うすること。チャレンジャーであり続けること。それが、このチームが大切にしてきた姿勢だった。最初から出来たはずだった。ブルーシャークスなら、もっと高みを目指せるとチームの誰もが信じていた。指揮官の言葉の裏にある信頼と敬意を感じていたからこそ、そのメッセージは深く選手たちの胸に届いた。

試合後の円陣で選手に拍手を贈る仁木監督

 ハーフタイムのロッカールーム。7―20で折り返した重苦しい空気の中、仁木監督の声が響いた。「フォワード、弛んでるんじゃないの?体は張れていないし、声も出ていない。簡単に勝てると思うなよ。過去は戻らない。後半の40分に全てをかけよう」。このチームは、練習時間が限られている中でも泥臭く積み上げ、成長してきた。彼らに絶対に悔いを残させたくない。そんな指揮官の心からの叫びが、本来のブルーシャークスの姿を呼び覚ました。

 後半7分、尾﨑が右隅に飛び込み、8分にバーンズがコンバージョンを沈めて6点差。12分にはそのバーンズ自身がトライを奪い、コンバージョンでついに21―20と逆転した。さらに20分、途中出場のトコキオソシセニが押し込み、35分には金築、そして試合終了間際にはタリトゥイがダメ押しのトライ。前半とは別のチームのようにフォワードが前へ出て、試合を支配した。

 後半、スクラムを組みブルーシャークスの選手

 監督の言葉がチームをこれほどまでに動かすのは、熱量だけが理由ではない。受け取ったものを自分の力へと昇華できる「素直さ」を持つ選手たちがいるからだ。昨季最終節、この日の対戦相手でもある日野にロスタイムのペナルティーゴールを決められ、1点差で逆転負けを喫し、D2残留をかけた入れ替え戦にまわった。その悔しさを、仁木監督は日野の歓喜の光景とともに心に刻み、今季の準備を進めてきたという。その思いはミーティングでも選手たちに伝えられていた。野村は、その言葉を受けて終わるのではなく、試合前日にその場面の映像を見返し、気持ちを入れ直してこの日を迎えていた。

 そのひたむきな姿勢は、チーム全体に伝播している。この試合から2週間前の土曜日のことだった。恒例となっている全体練習後の白子とタリトゥイのセッションに長谷と藤岡が加わっていた。4人はタリトゥイの提案とアドバイスを軸に、タックルからブレークダウンへの流れを繰り返した。最初は個の学びとして始まった時間に、少しずつ輪が広がっていった。誰かに言われたからではない。もっと上手くなりたい。各自が純粋な思いに身体を向けた結果だった。

 自分の未熟さに直面しても、そこから逃げず、学びに変えられる「素直さ」が、ブルーシャークスの成長を支えてきた。高い目標に向かうほど、人は自分の足りなさに向き合わなければならない。その時に目をそらさず、次の行動を変えられるかどうかが、未来を分ける。第10節を終えた時点で既に昨季の勝ち星を2つ上回る7勝。一歩ずつの積み重ねが、チームの現在地を押し上げてきた。

 桜を背にして真剣な表情を見せる野村

 「今日は結果次第で上の入れ替え戦に行けるかどうかが決まる重要な一戦でした。のろしを上げると言っていましたが、それが上がるかどうかの試合だったと思います」と試合後に仁木監督は振り返った。足首の怪我を抱えながら出場を続ける野村も「あと6試合だけなので大丈夫です」と言い切った。シーズンは残り4試合。目標に掲げてきたD1との入れ替え戦に進める2位以内に自力で入る道は絶たれている。だが、その言葉は入れ替え戦の2試合まで見据えたものだった。彼らは一戦一戦を戦い抜いた先にしか、目指していた景色はないと強く信じている。

 夢の島の桜の合間には、明るい緑の葉が顔をのぞかせていた。ブルーシャークスが次にこの地に戻る頃、そのフィールドは深い緑に囲まれているだろう。季節は確実に進んでいる。素直な心で成長してきた挑戦者たちが進み続ける道はきっと、悔いのない結末に続いている。


◇仁木監督、野村三四郎ゲームキャプテン会見

 桜を前に円陣を組むブルーシャークの選手ら

質問者:本日の総括をお願いいたします。

仁木監督:まずはじめに、この試合にご尽力いただきました協会関係の皆様、夢の島の皆様、本当にありがとうございました。

 今日は結果次第で上の入れ替え戦に行けるかどうかが決まる重要な一戦でした。のろしを上げると言っていましたが、それが上がるかどうかの試合だったと思います。勝利し、ボーナスポイントも含めて勝ち点を得られたことで、本当に成長を実感できた試合でした。前半は風下で課題も出ましたが、昨年であれば追い上げられなかった展開だったと思います。そこでしっかり勝ち切れたことは、チーム全体の成長だと感じています。本日はありがとうございました。

野村選手:まずはこの雨と風という厳しい環境の中、素晴らしい会場を準備していただきありがとうございました。

 試合内容としては、前半に日野さんの勢いが来ることは想定していました。本来はそこに負けずにいくプランでしたが、受けてしまった部分が大きな反省点です。結果として勝ち点を取り、上の入れ替え戦につながる結果を得られたことは良かったですが、反省点も多くあります。次週に向けて、また一週間しっかり積み上げていきたいと思います。本日はありがとうございました。

質問者:ハーフタイムの声かけが重要だったと思いますが、どのような言葉をかけましたか。

仁木監督:風下という状況下で受けてしまっていたシーンが多かったと思います。日野さんは勢いのあるチームで、その勢いに乗せてしまうとこういう展開になるという想定通りの流れでした。

 実は先週木曜日の練習時、選手は一生懸命やっていましたが少し緩んでいるように感じました。3位のブルーシャークスと最下位の日野さんという構図の中で、モチベーションの持ち方に課題を感じ、厳しい声もかけました。ハーフタイムでは「過去は戻らない。この40分にすべてをかけよう」と伝えました。

 試合前に笑顔を見せる仁木監督

質問者:後半に交代で入った選手について、どのような意図がありましたか。

仁木監督:ティノ(マリティノ・ネマニ)に関しては休ませたかったのでリザーブとしましたが、やはりまだまだティノの力を借りなければいけない試合だったのかなと思います。ソシ(トコキオソシセニ)やマヘ(ヴァイラヌ)については勢いを持ってきてくれる選手なので、風上になる後半にもう一度流れを引き戻すために起用しました。

質問者:後半最初のスクラムで勢いが出たように見えました。後半はどのような意識で臨みましたか。

野村選手:試合前からセットプレー、特にスクラムが鍵になると考えていました。ただ前半は逆に受けてしまい、悪い流れを作ってしまったと全員が感じていました。後半最初のスクラムは、これまでやってきたことを100%出してドミネートしたいという意識で臨みました。

 ボールを運ぶ野村

質問者:後半、TMO*で尾﨑選手のトライがキャンセルされた時の精神的な影響はありましたか。

TMO=テレビジョン・マッチ・オフィシャル。ビデオ判定。

野村選手:ありましたが、やることは変わらずブルーシャークスのラグビーを続けるだけでしたので、大きく崩れることはなかったと思います。

質問者:ボーナスポイントを加えて勝ち点5を取って次への弾みがついたと思います。

野村選手:結果として勝ち点5を取れたことは良かったですが、先を見すぎず、次の試合にフォーカスして一戦一戦勝っていくことが大事だと思っています。

質問者:昨年のリーグ最終戦、日野戦で21-22と悔しい結果で敗れ、D2残留を懸けた入れ替え戦に回ることになりました。今日の日野戦への思い、また掴んだ勝利はどのようなものだったでしょうか。

仁木監督:今シーズンに入るにあたって、どのチームにももちろん負けたくないですが、私は特に日野さんには負けたくないという思いで臨んできました。昨年、入れ替え戦が決まった直後に見た日野さんの歓喜の輪の光景を目に焼き付けて今シーズンは準備してきました。今回勝てたことは成長につながったと思います。ただ、相手に勢いを与えると苦しい展開になることも再認識しました。

 まだ何も成し遂げていません。目標は入れ替え戦ですが、一試合一試合積み重ねていくことが重要です。この勝利が自信につながればいいですが、勝って喜んでいるレベルでは上には行けません。率直に、まだまだだと感じています。

野村選手:昨年は本当に悔しい思いをしました。昨日、その試合の映像を見返して、今日はまたその悔しい気持ちを持って臨みましたが、前半受けてしまったことは反省です。今後上を目指すためにはただ勝つだけでなく、勝ち方のクオリティを高め、80分間やり切ることが必要だと感じました。

 試合終了間際にトライを決めるタリトゥイ

質問者:先月14日の豊田自動織機シャトルズ愛知戦で敗戦し、入れ替え戦に自力で入る可能性がなくなりました。試合後に野村選手が涙を流されていた姿が印象に残っているのですが、そこからまた入れ替え戦に向けてどのように気持ちを切り替えましたか。

野村選手:織機戦の次の週の練習で、全員が前向きな雰囲気で取り組んでいました。それを見て、自分も落ち込んでいる場合ではないと思いました。可能性はゼロではないので、残りのシーズンを本当に悔いなく戦おうと切り替えました。

質問者:ありがとうございました。


◇権丈太郎FWコーチ 一問一答

雨の中で激しいプレーを見せる藤岡

質問者:後半からフォワードの強度が上がったように思います。どのような指示を出し、選手のプレーはどのように変わりましたか。

権丈コーチ:反則をしてはいけないというマインドが強くなりすぎていたことと、受けてしまった部分があり、ディフェンスで前に出られていませんでした。まずそこを変えようと伝えました。自分がやるという意識で、人に任せるのではなく自分の責任を果たそうと。

質問者:木曜日の練習の状態があまり良くなかったという話もありましたが、どの点が良くなかったのでしょうか。

権丈コーチ:細かい部分で緩みが出ていました。例えば細かいプレーで「大丈夫だろう」という意識があり、ミスボールへの対応が疎かになるなど、本当に小さな部分です。そういうところを大事にしているチームなので、そこに油断があると相手に付け入る隙を与えてしまうので、今日はそれがスタートで出てしまいました。

 モールで押すタカウ

質問者:強くなったがゆえの気持ちの緩みということでしょうか。

権丈コーチ:そうですね。「大丈夫だろう」という気持ちはどこかにあったと思います。自分たちが強くなっているのは間違いないですが、そこでレベルを下げてほしくはありませんでした。選手を信じていたからというのもありますが、締め切れなかったのは自分の責任でもあると感じています。

質問者:以前、権丈コーチも「どの相手でも関係なく役割を全うするのがこのチームの強み」と話していましたね。

権丈コーチ:ハーフタイムでも映像を見せましたが、今シーズンで一番スタートが悪かったです。これまで練習では前に出て2人でタックルをして押し返すことをやってきたのに、すべて食い込まれてしまっていました。だから、もう一度やってきたことに立ち返ろうと伝えました。

 後半7分、尾﨑がトライを決める

質問者:それで修正できるというのは、普段の積み重ねがあるからですね。

権丈コーチ:そうなんです。できるんです。ただリーグ戦の中では難しさもあります。ビッグゲームの後などはどうしてもこういう波が出ますが、そこを乗り越えていければと思います。

質問者:ありがとうございます。


◇李優河選手 一問一答

 桜を背にして相手を止める李

質問者:後半は見違えるような出来でしたね。

李選手:後半の強度が本来の自分たちのプレーで、前半は少し受けに回ってしまっていました。試合中やハーフタイムに監督から「体を張れていない、声も出ていない」と指摘があり、僕ら自身も感じていた部分でした。「後半しっかり切り替えよう」と話し、実際に全員が切り替えて、後半の最初からしっかり強いコンタクトとセットプレーができたことが良かったと思います。

質問者:切り替えられた理由は何だったのでしょうか。

李選手:全員が後半のようなプレーをできるポテンシャルはありますが、意識の問題だと思います。前半は入りの部分でその意識が薄かったですね。

質問者:後半最初のスクラムで勢いが出ましたね。

李選手:前半はうまくいっていなかったので、フォワードでミーティングをして改善点を共有しました。相手に合わせるのではなく、自分たちの形を出そうという意識で臨み、それを遂行できた結果、最初からペナルティを取りにいくことができました。自分たちの形を信じることが大事だと感じました。

 試合前のロッカールームで円陣を組むブルーシャークスの選手

質問者:昨年のリーグ最終戦、日野戦で敗れてD2残留を懸けた入れ替え戦に回ることになりました。悔しさがあったかと思いますが、今季に影響はありますか。

李選手:監督もミーティングでその悔しさについて言及されていましたが、個人的にはそこを意識しすぎず、いつも通りの自分のプレーをして勝利を目指すことを大事にしています。他の試合と同じ意識で臨んでいます。

質問者:今シーズンは怪我も少なく安定して出場されていますが、意識していることはありますか。

李選手:特別に意識していることはありませんが、食べるのが好きなのでしっかり食べています。フロントなので体を大きくすることも大事ですし、ウエイトトレーニングも好きなので、食事とトレーニングの積み重ねでタフな体ができていると思います。食べることもトレーニングも好きなので、そういう体質で良かったと思っています。ラグビー選手としてはありがたいです。

質問者:痛みを抱えながらプレーしている選手が多いですね。

李選手:そうですね。そういう中で、自分のように比較的コンディションが良い選手がその分やらなければいけないという意識はあります。自分も多少は痛いところはありますが、他の選手に比べればまだ良い方です。

 攻め上がるバンワイク

質問者:モールで押し込む場面が目立ちましたが、振り返っていかがでしたか。

李選手:後半途中からモールは良い形で、自分が交代した後もチームとして押し込めていたと思います。セットプレーは強みですが、モールやラインアウトもさらに強化していきたいです。

質問者:昨年はシーズン後半に波がありましたが、今年は安定しています。どのような変化があったと思いますか。

李選手:昨年以上に下からの追い上げ、突き上げが強くなっています。練習ではリザーブに入る選手たちが非常に強い意識で取り組んでいて、実際にスクラムやモールでも試合に出るメンバーが負けることもあります。その競争がチーム全体の底上げにつながっていると思います。

 体を張ったプレーを見せる白子

質問者:試合と同じような強度で練習している?

李選手:試合以上の強度でやっていると感じるくらいです。

質問者:会見で仁木監督から「木曜の練習では少し緩んでいるように感じた」という話がありましたが、ご自身でも感じられていましたか。

李選手:僕も途中まで参加していましたが、少しふわっとした雰囲気はありました。その影響が今日の試合の前半に出たと思います。ただ、去年と違うのは後半にしっかり修正して勝ち切れる点です。今後は前半から自分たちの形を出すことが必要だと思います。

質問者:後半で修正できた理由は何でしょうか。

李選手:精神的な部分だと思います。技術的な部分は全員持っているので、意識次第でいつも通りのプレーができるはずです。

質問者:ありがとうございました。