試合情報 Game info

◇豊田自動織機シャトルズ愛知戦マッチレポート

タックルする金築

 清水建設江東ブルーシャークスは3月14日、夢の島競技場(東京都江東区)で行われたNTTジャパンラグビー リーグワン2025-26 ディビジョン2第8節で、豊田自動織機シャトルズ愛知と対戦し、26―34で敗れた。連勝こそ逃したものの、約1ヶ月前のビジターゲームで50点差以上をつけられた相手に対し、後半途中までリードを奪うなど確かな成長を示した。通算勝点は22で3位をキープ。次節は3月28日、柏の葉公園総合競技場(千葉県柏市)でNECグリーンロケッツ東葛と対戦する。

後半ロスタイム、トライを決める髙井

 無情に鳴り響くラストワンプレーのホーンにも、選手たちの強い意思が揺らぐことはなかった。21―34で迎えた後半ロスタイム。スクラムハーフの金築は相手ディフェンスの綻びを見逃さない。敵陣22メートルライン右サイドのラックからボールを拾い上げると、素早く左へ展開。ヘプテマ、バーンズ、ネマニとつないで相手ディフェンスラインを突破した。外で待つバンワイクへとボールが渡り、最後は髙井が左サイドのインゴールへ飛び込んだ。

 コンバージョンキックは外れ、7点差以内の敗戦で得られるボーナスポイントには届かなかった。それでも春の気配が漂う穏やかな夕暮れのフィールドで、ブルーシャークスが見せたのは目標に向かって一歩も引かない姿だった。相手がどこであろうと、どんな状況でも、自分たちの役割を遂行する。最後まで戦い抜く姿を、夢の島競技場に詰めかけた2000人を超えるファンの前で示した。

 試合後、円陣を組んだ選手たちに向けて吉廣ヘッドコーチが声を上げた。「自分たちのラグビーをやれば、どんな相手でも勝てると確信しました」。現役時代、NECで114キャップを積み重ねた指揮官の言葉だった。トップレベルの戦いを知る男が感じ取ったのは、厳しい戦いの中で確かに芽生えつつあるチームの変化だった。

攻め上がる藤岡

 前回の豊田自動織機戦の敗戦後、ブルーシャークスのコーチ陣は改めて議論を重ねた。浦野コーチングコーディネーターと人見アナリストが試合を詳細に分析し、課題を洗い出す。その上で、限られた時間をどこに投資するのか。議論は決して穏やかなものではなかった。これまで取り組んできたことは本当に効果があったのか。どうすればチームのベースを試合で出せるのか。互いに率直な意見をぶつけ合った。

 会社員としてフルタイムで働く選手が多いブルーシャークスにとって、練習に割ける時間は少ない。だからこそ修正点を広げるのではなく、何を徹底するのかをこれまで以上に明確に練習に落とし込んだ。相手が勢いに乗る前に自分たちから前に出て止める。一人で止められなければ二人で。オフロードのパスも許さない。シンプルだが、各自が責任感を持ってハードワークしなければ成立しない。それを練習から徹底して積み重ねてきた。結果、失点は1ヶ月前の対戦から半分近くに減少した。

体を張ったプレーを見せる中森

 チームは何が変わったのか。その問いに浦野コーチングコーディネーターは、迷いなく答えた。「覚悟です」。この日の選手たちの姿こそ、その言葉を体現していた。鼻血を流しながらも怯むことなく前に出てタックルを繰り返した金築の鼻は腫れ上がっていた。足首の怪我が万全ではない状況でも75分間、体を張り続けた野村の目尻には涙が滲んでいた。権丈FWコーチは試合前の円陣でこう言った。「もう、俺から何もいう必要はないよ。思い切ってやってこい」。何をすべきかは、1人ひとりが理解していた。わずか1ヶ月前には全く歯が立たなかった相手に、ここまで戦えるようになった。それでも試合後、選手たちは口をそろえて「悔しい」と語った。その一言こそが、ブルーシャークスの変化を何より象徴していた。

 仁木監督は試合後、チームの本質についてこう語った。「ブルーシャークスとは何かと問われた時、この3年間積み上げてきたセットプレーや、前に出てディフェンスで止める文化だと思います。バタバタした時にこうして立ち返る場所が、ようやく形になってきたのではないかと思います」。この敗戦で、目標としていたディビジョン1との入れ替え戦に進むための2位以内に自力で入る可能性は消滅した。それでもチームは、この戦いを通して勝利よりも重要なものを手にした。自分たちとは何か。その問いが確信に変わった時、最後までやり抜く強さが生まれる。それは、大きな目標を成し遂げるために必要不可欠な「覚悟」だ。残り6試合。どんな未来が待っていようと自分たちの役割を全うする。今のブルーシャークスは、奇跡と呼ばれる瞬間に辿り着く可能性を十分に備えている。


◇仁木監督、安達航洋キャプテン会見

 集中したディフェンスで相手のペナルティを誘い、雄叫びを上げる安達らブルーシャークスの選手

質問者:本日の試合の総括をお願いします。

仁木監督:まず初めに、この試合開催にあたり多くの関係者の皆様にご尽力いただき、ありがとうございました。試合に関しては、チームにかかわる人間すべてが、やはり変わるきっかけにならなければいけないと思っています。まだ残り6試合ありますし、昇格、入れ替えを狙っているので、意識も含めて一段階、二段階上げないと今日のような勝てないゲームになってしまうのかなと思います。

 織機さんのパフォーマンスも本当に素晴らしかったですが、あれをスタンダードに持っていかなければディビジョン1で戦えるイメージも湧かないと思います。ここはチーム一丸でしっかりまとまり、次のNEC戦に備えたいと思います。

安達選手:本日はありがとうございました。前回、織機さんに大敗して、そこから勝つために準備してきました。まず自分たちから前に出てパンチしようと言っていたんですが、最初に2本立て続けに取られてしまい、そこからのスタートになってしまったというのが一番の反省かなと思います。ただ、前回の試合とは違って、そこからディフェンスも粘ることができる場面もありましたし、アタックでも22メートルに入ってしっかり取り切ることもできたので、そこは成長している部分かなと思います。

 後半のきつい場面でセットプレーが乱れてしまったり、規律のところで自分たちで首を絞めてしまっているところが多々見られたので、こういう強い相手に勝っていくためには、そういったところを改善していかないと勝てないと感じました。まだ後半戦が残っていますので、入れ替え戦に出場するために、ここからチーム全体で課題を改善しながら成長していければと思います。

 試合前に笑顔を見せる仁木監督

質問者:前半最初の2本を取られた時、前回対戦ではかなり得点差がついてしまった部分もありましたが、今回は踏ん張って逆転までいった場面もありました。今回、踏ん張れた要因は。

仁木監督:単純に地力がついたというところだと思います。前回は織機戦で多くの課題と反省をいただきましたので、それに向けて今日は本当に勝つために全員でここに来ました。ただ前半最初に2つ取られたところに関しては、就任当初からずっと先手必勝だと言い続けてきたのですが、もっと言うべきところだったのかなと思っています。

 ポジティブな内容も多くありましたし、悲観するところは特にないと思います。ただ、キャプテンの安達が言った通り、セットプレーや今シーズンずっと課題になっているペナルティのところは、そろそろ克服しないといけないところです。強い相手とプレッシャーがかかる中で同じミスを繰り返してしまうと、上に行くイメージは湧かないと思います。そこはチーム全員で克服しなければいけないと思います。

質問者:今日は後半まで髙井(優志)選手がかなり体を張って戦っていました。彼のファイトや闘志がチームに与えている影響はいかがでしょうか。

仁木監督:去年より今年、日々本当に成長してきています。正直、去年シーズンが始まる頃はメンバー入りは厳しいかなと思っていましたが、本人の頑張りで去年何試合か出場し、今シーズンも西端(玄汰)と入れ替わる形で出てきています。

 チームの層も一つも二つも厚くなっていますし、決して西端の代役ではなく、優志が実力でつかみ取ったポジションだと思います。ただ、出場することに一生懸命になっている段階で、活躍するとかチームを背負うというイメージはまだ湧いていないと思います。そういう選手にならなければいけないと思いますので、そこは厳しい目で見ていきたいと思います。

質問者:先制点を取られてしまった時にピッチサイドで円陣を組んでいましたが、どのような声がけをされていましたか。

安達選手:まずキックオフのチェイスから相手のアタックにプレッシャーをかけようと言っていたのですが、それができていなかっただけだったので、もう一回やり直そうという話をしました。立て続けに2本取られてしまいましたが、その後しっかり修正できて敵陣でプレーする時間が増えました。そういう形を作れればトライを取り切れるというのも分かったので、「これを続けよう、もう一回アタックを継続しよう」という話をしていました。

 サイドライン沿いを攻め上がる髙井

質問者:シーズン後半戦がこの節から始まり、メンバーも入れ替わる中で、ブルーシャークスとしてファンにどのようなラグビーを見せていきたいと思っていますか。

安達選手:ブルーシャークスは、一人のスーパースターがいるというチームではないと思っています。全員で自分の役割を全うし、トライを取りに行き、相手のトライを防ぐ。そうやって全員で戦っていくのがブルーシャークスのラグビーだと思います。それは試合に出ているメンバーだけでなく、出ていないメンバーも含めてチーム力を上げていかないと残りの試合には勝てないと思います。

 練習からもっとチーム力を上げるために、時には厳しい声かけも必要になると思うので、そういったところでリーダーシップを取ってやっていきたいと思います。

質問者:最後にトライを取り切った場面を振り返り、あのトライがチームにとってどのような意味があったのかを教えていただけますか。

安達選手:7点差以内であれば勝ち点1が得られるというのもわかっていたので、最後まで戦い続けようという話をしていました。自分は途中で交代してしまいましたが、その後も出ているメンバーが戦う姿勢を見せ続けてくれたのは次につながると思いました。結果的に勝ち点は取れませんでしたが、自分たちがやってきたことを継続すればトライまで取り切れるということを示せたと思います。

 ただ、それを80分間一貫してやり続けることが課題なので、もう一度練習から修正していきたいと思います。

 前半19分、トライを決める尾﨑

質問者:最後にトライを取り切れた場面を見て、仁木監督はどのように感じたでしょうか。

仁木監督:無得点で後半を終えるのと、あそこでトライを取って次のNEC戦に向かうのとでは、チームの初速が全く違うと思います。チームとしては良かったと思います。なおかつ、インターセプトなどの個人技ではなく、チームで崩して取ったトライだったと思いますので、我々の形で攻めて取り切れることを示せたと思います。

 ただ、それを一貫してやること、そこに至るまでのエリアマネジメントやペナルティの課題など、まだ改善しなければいけないところも多いです。あのエリアまで行けば取れるということは分かっているので、もったいない場面が多かったと思います。それでも優志が飛び込んで取ってくれたトライなので、個人的には嬉しかったです。

質問者:前回の織機戦ではラインブレイクされるシーンが多かったですが、今回はほとんど見られませんでした。どのような点が良かったのでしょうか。

安達選手:シンプルに気持ちの面が大きいと思います。前回は相手のアタックを受けてしまい、ボールが自由な状態でオフロードでつながれる場面が多かったですが、今回は前に出てダブルタックルで相手のボールを止めようという話を練習からしていました。それを意識して徹底できたのかなと思います。

質問者:前回の織機戦は点差が開いての敗戦でした。そこから1か月でこれだけ修正できたのはチームのプロセスを信じられた結果かと思います。プロセスを信じられた土台はどのような点にありますか。

 攻め上がるバーンズ

安達選手:今シーズンが始まる前からフィジカル強化に力を入れてきました。それが土台になっていて、そこではどのチームにも負けないという自信があります。前回はそこで相手に受けてしまったのが反省だったので、もう一度自分たちのフィジカルに自信を持って、1人でダメなら2人で戦い続けようという話をしていました。それが修正できたことが大きかったと思います。

仁木監督:信じられた理由は、吉廣ヘッドコーチを含むコーチ陣のハードワークと、仕事とラグビーの両立を選手たちが一生懸命しているところじゃないかと思います。特別なサインプレーなどを用意したわけではなく、吉廣体制になって3年目ですが、コツコツ積み上げてきたものがあります。それは信じるべきものですし、信じ抜かなければいけないものだと思います。

 ブルーシャークスとは何かと問われた時、この3年間積み上げてきたセットプレーや、前に出てディフェンスで止める文化だと思います。バタバタした時にこうして立ち返る場所が、ようやく形になってきたのではないかと思います。気持ちに左右される未熟さはまだありますが、気持ちさえ整えばこういう試合ができると思います。

質問者:ありがとうございました。