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◇花園近鉄ライナーズ戦マッチレポート

雪の降る夢の島競技場でプレーするブルーシャークスの選手

 清水建設江東ブルーシャークスは2月7日、夢の島競技場(東京都江東区)で行われたNTTジャパンラグビー リーグワン2025-26 ディビジョン2第5節で首位の花園近鉄ライナーズと対戦。開幕から無敗同士による首位決戦となった一戦で試合終了間際に逆転トライを許し、14―16で今季初黒星を喫した。チームの開幕からの連勝は4でストップしたものの、7点差以内の敗戦による勝ち点1を加え、通算18として順位は2位をキープ。次節は2月14日、パロマ瑞穂ラグビー場(愛知県名古屋市)で3位の豊田自動織機シャトルズ愛知と対戦する。

雪の中でハドルを組むブルーシャークスの選手

 みぞれ混じりの雪が濡らした芝の上に、金築が仰向けで倒れ込んだ。西端が膝から崩れ落ちた。腰に手を当てた選手たちの吐息が白く立ち上っていた。試合終了間際に決められた逆転トライ。直後、ラストワンプレーを告げるホーンが響いた瞬間に、掴みかけていた勝利は敗戦に変わった。それでも、夢の島に詰めかけたファンは全勝同士の首位決戦の名に恥じない激戦を繰り広げたフィフティーンに惜しみない拍手を送った。昨シーズン、ディビジョン3との入れ替え戦をギリギリの戦いで制して踏みとどまったチームが、見違える姿を見せた。かつて日本一を経験した名門チームと互角以上に渡り合い、自分たちの成長を確信したからこそ、これまでとは違う種類の悔しさが胸に込み上げた。試合後、仁木監督は「今日、近鉄さんに負けて悔しいと思えたこと自体が成長だと思います。すべての部分で負けていた部分は一つもなかったと感じています。この負けをしっかり反省し、糧にして、一戦一戦チャレンジしていきたいと思います」と振り返った。

前半17分、トライを決めて雄叫びをあげる野田(左から2人目)

 けがから復帰した29歳のウイングが、口火を切った。0ー0で迎えた前半17分だった。ブルーシャークスは敵陣深くの左サイドで得たラインアウトからモールを形成して押し込み、圧力をかける。モールが止まった瞬間、スクラムハーフの金築が左へ展開。狭いエリアでボールを受けた野田は迷いなく前に出る。寄せてきた2人を振り切り、そのままインゴールに飛び込むと、雄叫びを上げてチームメートと抱き合った。昨年3月の豊田自動織機シャトルズ愛知戦で負った怪我以降、リハビリの日々が続いた。今季開幕戦では先発出場が予定されていたが、直前の練習で左太ももを肉離れ。この一戦が、ようやくたどり着いた復帰戦だった。「飲み会以外で久々に叫びました(笑)」。ここまで、開幕から続いてきたチームの連勝の軌跡をスタンドから見続けてきた。「強いな、みんなほんまにすごいなって思いました」。仲間たちのたくましさを喜ぶ気持ちがあった一方で、常にそこに入って活躍するイメージも準備も積み重ねてきた。公式戦でのトライも約11ヶ月ぶり。普段はクールな背番号11が、胸の奥に溜め込んできた感情を解き放った。

 復帰までの道のりは、決して一直線ではなかった。リハビリの過程で一度つまずき、予定していた復帰はさらに遠のいた。それでも野田は、焦ることなく、自分にできることを積み重ねてきた。昨年3月に結婚し、食生活は大きく変わった。妻が用意してくれるそぼろ弁当を持って出社し、仕事を終えれば練習場へ向かう。昨年末の新婚旅行で訪れた沖縄でも、オフの時間を縫って走った。今年で30歳の節目の年齢。「これが最後になるかもしれない」。そう思いながらラグビーに向き合ってきた日々が、気持ちを支えていた。働きながらプレーを続ける厳しさは今も変わらない。それでも、支えてくれる家族や応援してくれる同僚の存在が、前へ進む理由だった。11か月ぶりに立ったフィールドには、そうした日常の延長線があった。

体を張ったプレーを見せる中森

 野田の先制トライには、チームにとっても大きな意味もあった。勝ち続けている中ではメンバーを大きく変えないという選択が定石とされるが、吉廣ヘッドコーチは首位決戦という重圧のかかる舞台で、あえて選手を入れ替えて臨んだ。それはシーズン後半に控える連戦を見据えた、目先の一戦にとどまらない判断だった。前週に行われたリコーブラックラムズ東京との合同練習では、実戦に近い強度の中で起用できる選手、任せられる選手を見極める手応えも得ていた。その背景には、昨シーズン後半に失速し、入れ替え戦に回ることになった苦い経験がある。このまま同じやり方を続けていれば、結果もまた同じになる。吉廣はそう感じたからこそ、リスクを取ってでも何かを変えなければならないという思いを強くした。現状を冷静に認識した上で、選手一人ひとりの才能、そして働きながらラグビーに向き合う直向きな姿勢を信じ、起用する。その覚悟を伴った決断だった。

雪の中でウォーミングアップする選手を見つめる吉廣ヘッドコーチ

 起用された選手は、その判断に結果で応えなければならない。長い離脱期間を経てピッチに立った野田にとっても、この試合は同じだった。首位決戦という舞台で任された以上、復帰戦という言葉は言い訳にはならない。その責任を引き受ける覚悟が、迷いのない走りとなり、先制トライにつながった。吉廣が引き受けたリスクと、野田が引き受けた責任。その交点に生まれた一撃だった。

 仁木監督は試合後の円陣で「ここからも試合は続きますが、負けるわけがないと思っています。全員でやれば乗り越えられないことはない。いい?OKですか?」と選手、スタッフ全員に呼びかけた。その言葉に、誰も下を向かなかった。チームとして積み上げてきたものが確かに通用したことを、全員が肌で感じていた。リスクを取る決断があり、それに応えようとする覚悟があり、その積み重ねが、この日の80分に刻まれた。強くなったからこそ抱く悔しさがあり、強くなったからこそ共有できる感情がある。その思いは、これからの一つ一つの準備に、プレーに宿っていく。やがてそれは、チームの伝統になる。清水建設江東ブルーシャークスは、もはや勢いだけで上を目指すチームではない。挑戦を積み重ねた時間の先で、この日の悔しさが、確かな歩みの始まりだったことを証明する。

 

◇仁木監督、安達航洋キャプテン会見

 雪の中でタックルする安達(右)とロウ

質問者:本日の試合の総括をお願いします。

仁木監督:まず初めに、この試合開催にあたり、多くの関係者の皆様にご尽力いただき、ありがとうございました。またこの寒い中、遠方から(花園)近鉄ライナーズの皆様にお越しいただき、本当にありがとうございました。
 試合の総括としては、正直勝てた試合だったというところに尽きると思っています。すべての部分で我々が上回っていたと思いますし、負けていた部分は一つもなかったと感じています。ただ、長らく上のカテゴリーで戦ってこられた近鉄ライナーズさんの最後の執念や気持ちの部分が、最終的にあの点差につながり、逆転を許してしまったのだと思います。
 とはいえ、ポジティブな内容は多くありました。この負けをしっかり反省し、糧にして、一戦一戦チャレンジしていきたいと思います。本日はありがとうございました。

安達キャプテン:本日はありがとうございました。ゲームプランとしては、セットプレーとフィジカルバトルの部分でプレッシャーをかけていこうという話をしており、前半からそこはしっかり遂行できたと思います。ただ、取れるところで取り切れなかったことが、最後の一本につながり、負けてしまった要因だと感じています。近鉄さんは取れるところを確実に取ってきて、その差が結果に表れたのだと思います。
 リーグ戦はまだ続きますので、得点を取り切るという課題をしっかり持って、次の試合に向けて取り組んでいきたいと思います。

 試合に臨む仁木監督

質問者:キャプテンに伺います。ディビジョン2で初めて、全勝同士での首位対決という舞台でしたが、メンタル的にはいかがでしたか。

安達キャプテン:全勝で、ディビジョン2で最も強いとされている近鉄さんと対戦できるということで、チーム全体としてもすごくワクワクしていました。3週間準備する時間があり、その中でチームが同じ方向を向いて準備できたと思いますし、その感覚は試合にも表れていたと思います。試合の感覚としても、まったく負けていないという手応えはありました。また近鉄さんと対戦する機会があるので、次はやり返したいと思います。

質問者:昨年も近鉄戦が2試合ありましたが、今回は以前と違い主導権を握った中での好ゲームだったと思います。昨年との違いや、成長を感じた点を教えてください。

仁木監督:昨年、近鉄と対戦するまでは、格上のチームという認識で「チャレンジ」という言葉を使いながらシーズンを過ごしていたと思います。今シーズンはお互い4連勝での首位決戦でしたが、私はあえて「チャレンジ」という言葉を使いませんでした。同等のレベルにあると思っていましたし、このレベルを超えなければ、目標であるディビジョン1昇格は成し遂げられません。今日は負けてしまいましたが、必ず次は勝ちたいと思います。

安達キャプテン:去年との違いとしては、気持ちの部分が一番大きいと思います。格上の相手という意識ではなく、全勝同士として真正面からぶつかるつもりで試合に臨めたことが大きな違いです。セットプレーやフィジカルの部分にも自信があり、今シーズンは特に力を入れてきたので、相手に負けないという気持ちで試合に入れたことが、昨年との違いだと思います。

 ボールを追うヘプテマ

質問者:監督に伺います。首位決戦の中でこれまでのメンバーを入れ替えました。その狙いと評価を教えてください。

仁木監督:新しい選手というより、日頃から頑張っている選手たちだと思っています。試合に出ていないメンバーも常にチームを煽り続けてくれましたし、メンバー発表後も全力で戦ってくれました。スクラムでも近鉄相手に押せていましたが、練習では逆に控え組が押す場面も何度も見ています。全員が強かったという印象です。
 また、桑田(宗一郎)が復帰しましたが、シーズン序盤の怪我から久しぶりの試合でも、彼らしくディフェンスもオフェンスもタフにプレーしてくれました。戦力が戻り、競争も生まれています。新陳代謝という言葉をよく使いますが、それがチームの文化として根付いてきており、誰が出ても大丈夫だと感じています。

質問者:先週リコー(ブラックラムズ東京)との合同練習を行ったと思います。その中で、この試合に生かされた点などを教えてください。

安達キャプテン:今日の試合メンバーは、リコーさんと実戦的な練習があまりできなかった選手も多いですが、試合に出ていないメンバーが本当に戦う姿勢を見せてくれました。ディビジョン1の強いチーム相手に、激しくタックルし、アタックでも前に出る姿勢を見せてくれたことで、試合に出るメンバーも「負けていられない」「やらなければならない」という気持ちにさせられました。非常に意味のある合同練習だったと思います。

 後半6分、長谷がトライを決める

質問者:今日は圧倒しながら勝ち切れなかったという試合でした。今後の試合で勝ちに持っていくために必要なことは何でしょうか。

仁木監督:気持ちの部分がすべてだと思っています。現在の順位的には上でも、我々が強化を始めた当初、他のチームは遥か先の存在でした。今日、近鉄さんに負けて悔しいと思えたこと自体が成長だと思います。我々らしく積み重ねてきたものを試合で発揮していきたいと思いますし、このメンバー、このブルーシャークスであれば、必ず勝てると信じています。
 ただし、そのためには、この2年、3年積み重ねてきたものをすべて出し切らなければなりません。それを遂行すれば、結果は自ずとついてくると思っています。

質問者:今日も多くのファン、サポーターが集まりました。応援をどう感じていましたか。

安達キャプテン:悪天候の中でもスタンドに多くの方がいてくださり、大きな力になりました。試合中、苦しい場面でも応援がはっきり聞こえていました。その中で勝てなかったのは残念ですが、シーズンはまだ続きます。ファンの皆さんに、もう一度強いブルーシャークスを見せられるよう、来週から切り替えて練習に取り組んでいきたいと思います。

質問者:ありがとうございました。


◇野田涼太選手 一問一答

 前半17分、2人をかわして先制トライを決めた野田

質問者:今日の試合、トライを決めた後の雄叫びが印象的でした。

野田選手:飲み会以外で久々に叫びました(笑)。嬉しい気持ちと、それ(雄叫び)で乗っていけたらいいな、という思いもありました。公式戦でのトライは昨年3月の豊田自動織機(シャトルズ愛知)戦以来ですかね。

質問者:この試合が怪我からの復帰戦となりました。ここまでの期間を振り返っていかがですか。

野田選手:1回リハビリのところでつまずいちゃったんで、復帰まで時間が伸びてしまいました。先週、リコー(ブラックラムズ東京)との合同練習で戻れたという感じですね。

質問者:リコーとの実戦形式の練習っていうのは、自分たちの中でも大きな自信になりましたか?

野田選手:そうですね。良い練習になりました。

 試合前に仁木監督と談笑する野田

質問者:チームの成長を感じていますか?

野田選手:絶対成長してると思いますね。3年前にディビジョン2に来た当初は全然勝てへんし、悲しかったですもん。試合やるたびに全部ボコボコされて。今季は(自分が出場していない試合の時に)スタンドから見ていても、他のチームに負ける気がしなくて。強いな、みんなほんまにすごいなって思いました。

質問者:野田選手は今日あまり緊張はしなかったですか。

野田選手:今日はしてないです。マジでやったろ、ぐらいの感じです。

質問者:ワクワクの方が大きかったですか。

野田選手:今日は叫んでたぐらいなんで(笑)。自分が加入してから近鉄と試合する時っていつも負けていたイメージしかないんで、そんな近鉄と試合して、しかも全勝対決でできるのは自分なりに強い思いはありましたね。

 モールで体を張る野村

質問者:先発が予定されていた今シーズン開幕戦の2日前に怪我をしたということでした。

野田選手:そうですね。最後の練習のところで、左足の太ももを肉離れして。去年もしてしまったんでそれ以来しないようにっていう努力はしてるんですけどね。

質問者:どのような努力をされていますか。

野田選手:S&C(ストレングス&コンディショニング)のアクティベートのおかげでだいぶ予防されてると思います。あとは水分を取るようになりました。コーヒー飲みすぎて水分少なくなって肉離れしてたんで、最近はよく水とかお茶を取るようになりました。コーヒーは朝だけにして水分を取る。

質問者:食事も変えたりしたんですか。

野田選手:去年3月に結婚して、妻が頑張って料理を作ってくれているのでそれを食べています。弁当を作ってくれて、最近は鶏そぼろをよく食べてます。美味しいですよ。

質問者:野田選手を見ていると、いつも一生懸命な姿が印象的です。怪我して試合に出られない期間も、仕事が終わった後にきちんと練習に来たり、掃除やイベントも積極的です。モチベーションはどこから来てるんですか?

野田選手:目標は試合に出るためですかね。ラグビーなんでやってる?って聞かれても答えが難しい。やってることが普通になってるんですよね。

質問者:働きながら続けることは本当に大変だと思います。

野田選手:本当にしんどいですし全然慣れないですけど、会社の人も、親とか家族も応援してくれてるんで。頑張らないとっていうところです。最近はこれが最後になるかもしれないと思ってプレーしています。それが今日はいい方向に出たのかもしれないですね。

質問者:ありがとうございました。応援しています。

 ウォーミングアップでハドルを組むブルーシャークスの選手