◇ 九州電力キューデンヴォルテクス戦マッチレポート

清水建設江東ブルーシャークスは12月20日、福岡・東平尾公園博多の森陸上競技場で行われたNTTジャパンラグビー リーグワン2025-26 ディビジョン2第2節で九州電力キューデンヴォルテクスと対戦し、40-27で勝利を収めた。開幕から2連勝としたブルーシャークスは、3トライ差以上での勝利によりボーナスポイント1点を加えた勝ち点5を獲得して2位に浮上した。次節は来年1月10日、夢の島競技場(東京都江東区)でレッドハリケーンズ大阪と対戦する。

最大17点差からの逆転劇だった。試合後、福岡空港へ向かうバスの車内には笑い声と勝利の余韻が響いていた。対向車のライトが窓から揺れ込み、立川の横顔を淡く照らす。夜道の明滅に浮かび上がる表情には、「強くなった」という確信と静かな高揚が滲んでいた。
逆転の鍵はスクラムだった。どうしてここまで押せるようになったのか。「大きく分けて2つあります」。立川は少し間を置き、試合を振り返るように続けた。「1つはフィジカル面。特に今良いのは、フロントローだけじゃなくて、その後ろ5人の押す力が去年よりかなり上がっていることです。これは今年やってきたフィジカル強化の成果が、はっきり出ている部分です」。
圧巻だったのは後半10分、7-20と追う展開で迎えたゴールライン目前のスクラムだった。白のセカンドジャージに身を包んだフォワード陣が一丸となって押し込み、九州電力の塊を崩していく。最後はゴダードが素早くボールを拾い上げ、インゴールへと飛び込んだ。勢いは止まらない。5分後に訪れた左サイド5メートル手前のスクラム。再び圧力をかけ、こぼれたボールをトコキオソシセニが左へ展開。角度を変えて走り込んだゴダードが両手でトライをねじ込むと、バーンズが難しい角度からのコンバージョンキックを沈めて逆転に成功。以降も得点を重ね、ブルーシャークスは3トライ差以上の勝利による勝ち点「5」で試合を締めくくった。

なぜここまで強くなれたのか。その裏側には、フィジカルとは別の「もうひとつの答え」がある。立川は少し声を低くして続けた。「スクラムが強くなった要因のもう1つはプロセスの部分です。チーム内での練習のスクラムのレベルがすごく上がっています。試合メンバーに入っていない選手たちも本当に強くて、僕らをどう崩そうかということを本気で考えてきます。だから練習で組んでいるスクラムは試合以上にしんどいです。そういうプレッシャーの中で鍛えられているのが大きいです」。練習では試合以上の圧力がかかり、本番ではその圧力以上に押し返す。逆転劇の熱量は、練習場で何度も積み重ねてきた光景の延長線上に存在していた。
「密度」の裏側にあるのは、選手たち自身の選択と覚悟だった。ブルーシャークスの日本人選手たちは全員、会社員としてフルタイムで働きながらトレーニングを重ねている。彼らはこの試合の前日も仕事を終えてから夜に福岡へ移動し、翌日の試合に備えた。心身ともに厳しい環境でも、彼らはラグビーを選び続けている。執着し続けている。立川は言う。「時間の長さは関係ないんです。プロの選手に比べて『ラグビーにかける時間』で言ったら僕らは半分以下です。僕らは限られた時間の中で最大限やっている。その中身の濃さが、今のスクラムに出ていると思います」。立川自身、クボタスピアーズ(現・クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)でプレーしていた頃はラグビーに集中できる時間が十分に確保されていた。当時は時間の長さこそが強さの源だと信じていた。しかしブルーシャークスで過ごすうちに、その考え方は変わっていった。少ない時間でも、人は強くなれる。濃さが人を押し上げる。この日のスクラムが、その答えを示していた。

同じ熱と濃度はバックスにも宿っていた。この試合でフル出場した藤岡は、前節の日本製鉄釜石シーウェイブスとのシーズン開幕戦のメンバーから外れた一人だった。その知らせを受けた翌日。練習がオフだったにもかかわらず、彼は夜に一人クラブハウスへ向かい、人影のないトレーニングルームで黙々と体を動かした。「やっぱり試合に出たい」。その思いで悔しさをまっすぐに受け止め、限られた時間を自分に投じた。まだ社会人1年目。弱さと向き合う作業は孤独で、誰かのせいにしたくもなる。それでも逃げなかった。その積み重ねが、今節のピッチに繋がった。

この試合のサポートメンバーとして遠征に帯同した白子もブルーシャークスの空気を体現していた。出場の可能性は限りなく低かった。それでも試合前のウォーミングアップでは、仲間のプレッシャー役を買って出ながら、準備を整える手伝いに全力を注いだ。誰よりも声を出し、汗だくになってロッカールームへ戻ってきた。宿舎での朝の体操でもノートを手にしていた。いつ戦術の確認が始まっても、その場で書き留められるように準備していた。悔しい状況でも、来るべき瞬間のために歩みを止めないこと。簡単ではない状況でも努力を続けること。選手として、人として、プロフェッショナルであり続けようとする姿勢。白子の背中は、言葉以上の熱量でチームに影響を与えていた。

福岡空港に到着して、バスを降りる列がゆっくりと進んでいく。藤岡の横を通りかかった立川が、笑いながら言った。「80分出られたからって、調子に乗るなよ」。藤岡がすぐに返す。「そっちこそ」。何気なく交わされた短い会話。しかし、そのやり取りには、互いへの敬意と、刺激し合う関係性が表れていた。年齢も経験値も違う。それでも同じ方向を向き、共にラグビーと向き合っている。
次節は来年1月10日、ホーム・夢の島競技場でレッドハリケーンズ大阪を迎え打つ。個が高まることでチームが強くなり、チームが強くなることで個がまた成長する。いまのブルーシャークスは、その循環を生きている。時間の長さではなく、濃度のぶつかり合いこそが自分たちのラグビーを高みに押し上げる。その先にディビジョン1への扉がきっと開かれる。そう、信じている。
◇仁木監督、野村三四郎ゲームキャプテン会見

質問者:本日の試合の総括をお願いします。
仁木監督:まず、この試合の開催にあたりご尽力いただきました関係者の皆様、九州電力(キューデンヴォルテクス)の皆様に心より御礼申し上げます。前半は九州電力さんの圧力と、プレシーズンからの課題がそのまま出てしまい、思うような展開に持ち込めませんでした。一方で、後半はチームがタフになったと実感する場面がいくつもあり、その積み重ねが逆転につながったと感じています。まだ目指す山は非常に高いですが、一つ一つ勝利を重ねていき、最後に大きな花を咲かせたいと思います。本日はありがとうございました。
野村選手:本日はこの試合のために素晴らしい環境をご準備いただき、ありがとうございました。監督の話にもあったように、前半は九州電力さんの強みであるブレイクダウンでかなりプレッシャーを受け、苦しい時間が続きました。ただ、ハーフタイムでチーム全体として「それぞれの役割をしっかり全うし、そのうえでブルーシャークスのラグビーをしよう」と確認し合い、後半は自分たちのラグビーを出せたと思います。本日はありがとうございました。
質問者:仁木監督に伺います。後半に逆転できたことについて、昨シーズンと比べて具体的にどのあたりが良くなったと感じていますか。
仁木監督:昨シーズンの宮崎での九州電力戦は、試合終盤に追い上げられて同点にされ、その結果が尾を引いて入替戦に回りなんとかディビジョン2に残留する形になりました。その後の日野(レッドドルフィンズ)戦でも後半に追い上げられ、敗戦という結果でした。今日の試合ではその反省を活かして、ピッチ内でお互いにしっかり声をかけ合いながらプレーできたことが大きかったと思います。「タフになった」という点で言えば、フィジカルバトルで勝てていたこと。そしてブレイクダウン、ペナルティ、ロストボールといった、これまで課題として共通認識してきた部分を、ハーフタイムにコーチ陣がしつこくリマインドしてくれたことで、後半はそこを明確にして臨めたことが一番の要因だと感じています。

質問者:後半は規律の部分もかなり改善されたように見えましたが、選手たちの意識はどのように変わったのでしょうか。
仁木監督:レフェリングに対して自分たちでプレーをセーブしてしまわないこと、そしてラインオフサイドについては、気をつけるだけで防げる場面が多いので、その点を徹底しようと伝えました。また、コミュニケーションの質も大きかったと思います。練習中から、そしてクラブハウスにいる時から、選手同士がよく話し合っていて、ロッカールームでも私が何も言わなくても、各自が自然と会話をしてくれていました。その積み重ねが、後半の規律の乱れを抑えることにつながったと感じています。
質問者:事前に選手の入れ替えがあり、開幕戦からメンバーも変わりました。後半に選手が入れ替わってもプレーのクオリティを維持できた要因はどこにあるとお考えですか。
仁木監督:一言で言えば、「ラグビーの時間を真摯にラグビーに捧げている」ことに尽きると思います。我々は「仕事ラグビー」という文化を掲げており、練習時間は他チームより圧倒的に少ない。その中で、どこまで効率を上げるか、どう質を高めるかを突き詰めています。選手たちはグラウンドに来る前からすでに「練習は始まっている」という意識を持ち、コーチ陣も課題ややるべきことを整理したうえで予習・復習を含めて準備してくれています。試合に出ないメンバーも、練習で試合出場メンバーをしっかり煽ってくれていて、「いつ誰を出しても大丈夫だ」と思える選手が今のブルーシャークスには何人もいます。出ている選手は「うかうかしていられない」という感覚を持ち、下で控えている選手は「絶対に出たい」という思いを持っている。その相乗効果の中で、後半から入ってきたメンバーも何一つ劣ることなく、自分の持ち味を発揮し、役割を理解したうえでエナジーを持ってプレーしてくれた。その積み重ねが逆転につながったと思います。

質問者:後半はディフェンス面でも7失点に抑えました。その点の評価をお聞かせください。
仁木監督:前半はコミュニケーション不足もあり、ラインオフサイドの反則を何度か取られてしまいました。「ラインオフサイドを取られないように、横を確認して一歩下がること」、そして「下がりながらも、どこまで勇気を持って一歩、二歩と前に出られるか」という点を強調しました。ディフェンスの根幹は、前に出る勇気だと考えています。そこは練習から言い続けてきたことであり、特別なことを新たに伝えたわけではありません。前半は色々な歯車が噛み合わず、本来やるべきことができていない場面が多かったので、吉廣ヘッドコーチを含めスタッフ全員で「原点に立ち返って前に出よう」と整理し、選手たちがそれを後半しっかり体現してくれた結果だと思います。
質問者:野村ゲームキャプテンに伺います。試合前に急遽ゲームキャプテンを任されることになったと聞いていますが、どんな気持ちで試合に入りましたか。
野村選手:あまり声かけで引っ張るタイプではないので、特別なことをしようとは思いませんでした。いつも以上に、自分の強みであるスクラムやセットプレーでチームを引っ張ることを意識し、そこで相手にプレッシャーをかけようと決めて試合に臨みました。
質問者:後半の逆転の大きな要因はスクラムだったと思いますが、今日はどの点が特に良かったと感じていますか。
野村選手:自分たちが大事にしているプロセスがあるのですが、それをどのスクラムでも一貫してやり続けられたことが一番良かった点だと思います。そこを通じて相手にプレッシャーをかけられたかなと思います。

質問者:ケプFWコーチは就任当初、「このチームのスクラムに信念を持ってほしい。それを与えたい」と話していました。その信念はチームに根付いてきたと感じますか。
野村選手:ケプコーチが来てから、スクラムに挑むうえでのスキル面だけでなく、メンタルの部分を大きく変えてもらったと感じています。今のシャークスは、誰が出てもスクラムに強いこだわりを持っていますし、試合に出ていないメンバーも、練習で僕らメンバーに対して強いプレッシャーをかけてくれています。そういった姿勢は、ケプコーチが来てから確実に根付いたものだと感じています。
質問者:短い練習時間の中でも、そうしたプロセスや信念を身につけ、試合で発揮できている要因はどこにあると思いますか。
野村選手:プロセスを信じてやり続ければ結果が出るということを、プレシーズンやこれまでの試合を通じて自分たち自身が実感してきたことが大きいと思います。練習時間は少なくても、一つ一つの練習の質を高くできていることも理由の一つだと思います。

質問者:今日で年内の試合は最後になります。新しい年に向けての抱負をお願いします。
仁木監督:昨年も年内に2連勝して、年明け最初の釜石戦(夢の島)で敗戦し、その時に雰囲気を含めて良くない部分が出てしまいました。先ほど選手たちにも伝えましたが、我々が目指しているのはディビジョン1への昇格という大きな目標です。ここで負けているようでは、その目標は達成できません。その大きな目標の前にまず立ちはだかるのが、年明け早々のレッドハリケーンズ大阪戦です。ここに全員でフォーカスして準備していくことに尽きると思っています。
野村選手:シーズンの目標はディビジョン1前の入替戦に進むことですが、そのためには一戦一戦勝っていくしかありません。まずはレッドハリケーンズ大阪戦に向けて、今日出た課題を来週からの練習でしっかりクリアし、一週間ごとに良い準備を積み重ねていきたいと思います。
質問者:ありがとうございました。
◇立川直道選手 一問一答(スクラムの最前線で体を張って逆転勝利に貢献)

質問者:今日はスクラムが特に素晴らしかったですね。こんなにも強く押せるようになった要因を教えてください。
立川選手:大きく分けて2つあります。1つはフィジカル面。特に今良いのは、フロントローだけじゃなくて、その後ろ5人の押す力が去年よりかなり上がっていることです。これは今年やってきたフィジカル強化の成果が、はっきり出ている部分です。もう1つはプロセスの部分です。チーム内での練習のスクラムのレベルがすごく上がっています。試合のメンバー以外の選手たちも本当に強くて、僕らのスクラムをどう崩そうかということを本気で考えてきます。だから試合より練習で組んでいるスクラムの方がしんどいです。そういうプレッシャーの中で鍛えられているのが大きいです。
質問者:一人一人の「試合に出たい」という気持ちが強いということですか?
立川選手:そうですね。今チームとしてスクラムがうまくいっている分、それを逆に押し返せば、試合に出場する以外の選手にとっても大きなアピールになりますよね。だから彼らは、練習での6本のスクラムにすごくかけてきます。それを僕らが受けて返すことで、自然と力がついている。
質問者:練習時間の長さでは代えられないものですね。
立川選手:時間の長さは関係ないんです。「ラグビーにかける時間」で言ったら僕らはプロ選手たちの半分以下です。僕らは限られた時間の中で最大限やっている。その中身の濃さが、今のスクラムに出ていると思います。

質問者:立川選手は以前にクボタスピアーズ(現:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)に在籍していた時はラグビーにかける時間が今より多かったんですよね?
立川選手:そうですね。時間的にはほぼプロみたいなものです。
質問者:その頃から考えて、今みたいに「短い時間でもここまでできる」とイメージできていましたか?
立川選手:その時はイメージできていなかったですね。でもブルーシャークスに来て年を重ねる中で、「時間の使い方を変えれば、もっとやりようがある」と分かってきて、結果が出ているのですごく楽しいです。大事なのは、「かける時間の量」じゃないんだと思います。
質問者:考えが変わったんですね。
立川選手:「ラグビーにどれだけ時間を費やすか」ではなく、「与えられた時間をどう使うか」。そこに対してプロフェッショナルになる方が、はるかに大事だと、この2~3年で本当に思うようになりました。仕事もやりつつ、ラグビーもやりきる。その両方をやり切ることへのプロフェッショナルさ、ですね。その人間力がラグビーにも出ると思います。
質問者:人間力が練習にかける姿勢に繋がる。
立川選手:そうです。僕ら社員選手が「プロフェッショナル」を突き詰めれば、一人の人間としても優れた存在になって、その結果がこういうスコアに表れてくる。最近は本当にそう思うんです。特にここ2~3年くらいは。今のブルーシャークスにいるプロ選手、外国人選手には、本当の意味でのプロフェッショナルが増えていると感じます。ちょっと抽象的な言い方ですが、「このチームでプロ選手としている意味」を理解して、その意味に沿って行動や言動をしている外国人選手が増えている。

質問者:チームや仲間へのリスペクトをすごく感じますよね。
立川選手:そうですね。僕らに対しても、すごくリスペクトしてくれています。
質問者:立川選手はプレシーズンでどのような準備をしてきましたか?
立川選手:細かいところは必ず変えています。練習前のトレーニングや、自分なりのトレーニングを、同じにはしないようにしています。必ず新しいものを取り入れて試してみて、ダメだったら捨てて、良かったものだけを残す、というやり方です。
質問者:そうすると必要なメニューが増えていきませんか?
立川選手:そうなんです。だから本当に時間が足りなくなってきます。今年は特に「フィジカルをもっと」と言われていたので、チーム方針に合うように体重を増やしたんです。そしたら8月、9月は全く動けなくなってしまって。

質問者:一番増えた時、体重はどれくらいになったんですか?
立川選手:もともと91キロくらいなんですけど、93~94キロくらいまで増やしました。
質問者:2~3キロでもかなり変化があるんですね。
立川選手:そうですね。そこで思い切って、「プレシーズンの試合はなるべく出ません」と自分から言って10月くらいに2週間ほど休みをもらって、自分で体づくりをやり直して、「自分はどう体を使うか」にフォーカスしました。そこから11月くらいに一気に調子が戻ってきて、三菱重工ダイナボアーズのプレシーズンマッチに出た時に「もう大丈夫だ」と感じました。
質問者:「大丈夫だ」と思ったのは、どんな感覚からですか?
立川選手:一度体を作り直して、痛みが消えてきて、試合で40分動けた時に、「やっぱり自分はこれでいける」と感じました。前の状態に戻したというより、アプローチの仕方を変えただけです。チームの「フィジカルを大きく強く」という方針に、自分は必ずしも乗らなくてもいいんだ、と。自分のやり方で、十分戦えると思えるようになりました。
質問者:勇気のいる決断ですね。
立川選手:そうですね。メディカルスタッフは、僕の意見をすごく聞いてくれます。「膝が痛いならこうした方がいい」という考えもあると思うんですけど、「僕はこうしたい」と伝えると、「それでいいんじゃない?」と任せてくれる。その中で、「ここだけはケアしてほしい」と言ったところに対してはきちんと対応してくれるので、とてもやりやすい環境です。

質問者:立川選手は、プレーヤーとしてどうありたいですか?
立川選手:プレーヤーとしてというより、人間として、唯一無二でありたいです。普通の人間にはなりたくない。去年はシーズン通して出ましたけど、同じようにはしたくない。何か違うことにチャレンジして、さらに成長したい。その分、さっき言ったように時間が全然足りなくなる。でも仕事もやる。仕事でも成果を出す。練習もやる。試合でも、30代後半になっても試合に出続けてパフォーマンスを出す。普通じゃないですよね。「普通じゃない人間になりたい」という思い、信念があるから、常に変え続けるし、行動も変わっていくんだと思います。
質問者:ちゃんと理想のイメージがあって、それに従ってどう行動するか、というところが信念になっているんですね。
立川選手:そうです。常に「自分はぬるま湯に浸かっていないか」を見ています。うまくいっている時って、「このままでいいんだ」と思いがちですけど、それでももう一段成長するためには、違うエッセンスを入れたり、違う人の話を聞いたり、新しいトレーニングをしたり、違う体づくりを続けたり、常に変化を取り入れていく。そうやって「唯一無二」、普通じゃない自分になりたい。「あの人、なんか面白くない?」「あの人やばくない?」って思われたいんです。自己満かもしれないですけど。

質問者:素敵な考え方ですね。
立川選手:家族もすごく理解してくれています。妻も今年職場に復帰して、小学校の教員でめちゃくちゃ忙しいんですけど、朝5時半くらいに2人で起きて朝ごはんを作って、子どもたちの準備をして。
質問者:2人でご飯作るんですか?
立川選手:そうです。妻もそのハードワークを楽しんでくれている感じです。今、妻と一緒にランニングもしていて、ハーフマラソンや東京マラソンにもチャレンジしたいと言って、週3回、朝4時半に起きて1時間半くらい走っています。僕が「限界サラガーマン」みたいなことをやっているのを見て、嫁も「限界妻」みたいな感じで挑戦を続けたいと思ってくれているようです。

質問者:ここまで出場機会に恵まれなかった選手たちもモチベーションが高いですね。
立川選手:必ずスタメンに加わる時がありますから。開幕戦でメンバーから外れた選手の中にはすごく落ち込んでいる人がいましたけど、でもそこで人のせいにせず、自分に矢印を向けて、コーチにフィードバックをもらいながら「どこが足りないか」をちゃんと見つめて行動している。ディーン(藤岡選手)なんかも、僕が新しくやり始めたトレーニングを見て、「どんなトレーニングなんですか?」と素直に聞いてきます。それが彼に合うかどうかは別として、「新しいことを取り入れて成長しよう」という貪欲さが行動に出ているのは、すごく良いことです。若い頃の僕はあんなに素直になれなかった。出られないと「なんで使ってくれないんだ」と矢印を外に向けて、コーチのせいにしていたところもありました。
質問者:素直さは最強の武器ですね。
立川選手:その悔しさをちゃんと受け入れて自分に矢印を向ければ、これからまだまだ伸びる。そういう意味でも、自分がこうやって色んな準備をして、時間をかけて準備している姿を見せて、何か感じてもらえたら嬉しいですね。
質問者:ありがとうございました。
