◇NECグリーンロケッツ東葛戦マッチレポート

清水建設江東ブルーシャークスは4月12日、夢の島競技場(東京都)で行われたNTTジャパンラグビー リーグワン ディビジョン2第11節でNECグリーンロケッツ東葛と対戦し、15対45で敗れた。この結果、今季の通算成績は4勝7敗。勝ち点は17のままで順位は6位となった。次節は4月20日、ウエスタンデジタルスタジアムきたかみ(岩手県)で日本製鉄釜石シーウェイブスと対戦する。

薄暮の夢の島競技場。試合後に円陣を組んだ選手たちの表情には、悔しさとともに確かな手応えが宿っていた。2月のビジター戦に続いてホームでもNECグリーンロケッツ東葛に敗れた。だが、「モールとセットプレーに関しては格段に進歩している」と吉廣ヘッドコーチが語るように、屈強なNECのフォワード陣を相手に一歩も引かず、ブルーシャークスは80分間を堂々と戦い抜いた。
成長は試合開始わずか6分で形になった。敵陣約30メートル左サイドのラインアウトから力強いモールで前進。ゴールラインまでの距離を徐々に詰めながら右サイドにボールを展開し、最後はソポアンガが右手でトライ。「モールに関しては昨シーズンと雲泥の差で良くなっている。モールに入るスピードと粘りの部分、低さなど徹底的にこだわってきました。そう言った効果が如実に出てきている」と仁木監督が語ったように、フォワード陣の進化がもたらした先制点だった。その後は規律の面で苦しみ、前後半あわせて3度のイエローカードを受けて数的不利を強いられたものの、後半31分には途中出場のホームズがトライ。点差が大きく開いた終盤でも、集中力を切らさずに掴んだ誇りの一撃だった。

こうした粘り強さの裏には、日々の練習で積み重ねてきた準備の姿勢がある。試合直前のある日、雷鳴と稲光のため一時グラウンドが使用できなくなったが、選手たちはその待機時間も無駄にしなかった。クラブハウス内のウエイトルームという限られた空間で、ボールを使いながらセットプレーやパスのイメージを共有し合い、互いに声を掛け合う姿があった。「今できる最善」を常に模索する姿勢が、チーム全体に浸透している。また、出場停止中の白子キャプテンは、ミーティングの場で熱心にメモを取りながら、誰よりも真剣な表情でチームの戦術確認に臨んでいた。プレーできない時間さえも無駄にせず、内側からチームを支え続けるその姿勢が、選手たちの意識をさらに引き締めている。ここまでのシーズンで積み重ねてきた個々の成長が、チームの一体感を育み、さらに高いレベルのラグビーを目指す推進力になっている。順位やスコア以上に、確かな変化がチームの中で起きている。それが、敗戦の中にあっても前を向くことができる理由だった。

その想いを体現するように、この試合でゲームキャプテンを務めたバシャムは試合後、静かにこう語った。「タフな状況が続くと思いますが、そこから逃げずに面と向かって立ち向かっていく勇気というのがラグビーの醍醐味だと思うので、それをしっかり感じながら前に進んでいければと思います」。結果が伴わない中でも、逃げずに挑み続ける姿勢。それはこのチームが目指す挑戦者としての矜持であり、勝敗に関係なく、見ている者の心を動かす力がある。実際、この日夢の島に詰めかけた1000人を超えるファンたちは、点差が大きく開いた終盤でも「負けるな」「頑張れ」と声を張り上げ、最後の笛が鳴るまで声援を送り続けた。選手たちの懸命な姿が、観客の胸を打った証しだった。

負けを通してしか得られない学びがある。簡単には手に入らない成長がある。その一つひとつを、チームは確かに自分たちのものにしようとしている。シーズンも残すところ、あと3戦。ディビジョン2への自動残留となる6位以内を確保して、来季のさらなる飛躍に繋げるためには、一つも落とせない。次節は日本製鉄釜石シーウェイブスとの一戦。舞台は岩手県・北上市にあるウエスタンデジタルスタジアムきたかみ。順位を争うライバルとの直接対決で、苦しみの中で育てた強さを証明してみせる。
◇仁木監督、バシャム選手会見(藤田コナン通訳)

質問者:本日の総括をお願いいたします。
仁木監督:まず開催にあたりご尽力いただきました皆様、本当にありがとうございました。吉廣ヘッドコーチの古巣だったので、なんとかチーム全員で勝ちにこだわってこの1週間を過ごしてきました。結果はこういった形ですが受け止めなければいけないですし、残念だなという部分もあります。今シーズンを振り返ってみると負けを経て成長してきた部分が非常に多くあると思いますので、まずしっかり負けた要因をチーム全員、スタッフ、選手で受け止めて、次の釜石(日本製鉄釜石シーウェイブス)の試合に用意していきたいなと思っています。残り3戦、絶対に負けられない戦いですので、1戦1戦を戦っていきたいなと思います。ありがとうございました。
バシャム選手:本当に難しい試合でした。NEC(グリーンロケッツ東葛)のような相手に対して、規律を守れずに、3枚もイエローカードを出しているようでは絶対に勝てないなと感じました。自分たちが相手にプレッシャーをかけないといけないのに、自分たち自身にプレッシャーをかけてしまって、さらに相手にもプレッシャーをかけられたことが一番の敗因かと思います。そこが一番大きな学びなので、次の試合もそこを生かして絶対に勝っていきたいと思います。

質問者:80分間のゲームプランと、上手くいった部分、いかなかった部分を教えてください。
仁木監督:先手必勝と言い続けてきました。前回レッドハリケーンズ大阪戦で勇気を持って一歩踏み出そうという話をしてきたんですけど、やっぱりNECさんの圧力にやられる部分と、足が止まってしまった部分と、規律の部分、ここが全てだと思いますね。イエローカードが3枚出ても、気持ちさえあれば止められた部分もあると思いますし、チャレンジャーとしてどんな状況でも立ち向かう姿勢は必要だったと思います。正直なところ、後半の中盤ぐらいからは結果が決まっていたのかもしれないんですけど、とは言いながらも立ち向かう姿勢みたいなものは我々も選手も全員で出さなきゃいけなかったかな、と思います。
質問者:今日はリザーブのメンバー6人がフォワードで、残りがバックスといういつもと違う形でした。
仁木監督:メンバーを見ての通りフォワード勝負になると思っていましたし、バックスはある程度全員80分ずっとプレーしてくれていましたので、そこを減らしてフォワード勝負というところでしっかり考えたんですけど、ゲームでは結果的に負けた形になっちゃったかなと。ただ悲観するところばかりじゃなくて、フォワード勝負といったところ、モールではほとんど相手を止められてましたし、そこの部分に関しては残り3戦、モールを取られているようでは絶対勝てないので、そこは良い学びになりました。今回取られたところはここのところとペナルティの2つだと思ってますので、しっかり立て直して前向いてやるしかないかなと。

質問者:バシャム選手にお聞きします。フォワードとして一緒にスクラムを組んだりモールをしたりしている中で、成長していると感じる部分はありますか。
バシャム選手:間違いなく感じています。フォワードとして、セットプレーのフォワードのバトルにも都度勝っていこうという目標を掲げてやってきています。ラグビーの要素でセットプレーというのはすごく大きな部分を占めていると思うので、そこにプライドを持って挑んでいこうというふうに毎日練習していて、実際選手たちも成長を感じています。相手もそれを脅威に思ってきて、どんどん分析されてるので、ここからもう1段階レベルを上げないとまた対応されてきてしまうのでそこがチャレンジかなと思ってます。
質問者:今まで10番でプレーされてきた(リマ)ソポアンガ選手が今節は12番でプレーされていますが、起用の理由は。
仁木監督:もともとリマと(クリップス)ヘイデンはお互いコミュニケーションをしっかり取ってくれてましたし、練習ではこの形を試してみたりとか、後半からヘイデンを入れる時には実際に彼が10番でリマが12番になることもありました。しっかりボールを動かすっていう意図と、誰が来ても起点となれる選手がそこにいるっていうところ、しっかりボールを動かすという意図が全てですね。ゲームコントロールの部分ではやっぱりリマとヘイデンとあとバンワイクもいますので、こういった部分がしっかりとプレーしてくれれば面白い展開になるんじゃないかなと思いましたけど、まあ(NECの)13番のマリティノ(ネマニ)選手に基本的にはフィジカルっていうプレーでやられた部分もあるんで。ここはバックスもそうですけど、やっぱり色々なものを我々も含めて反省しなきゃいけないと思います。

質問者:モールに関して前回のNEC戦と比べて良かった点は?
仁木監督:モールに関しては、昨シーズンと今シーズンでは雲泥の差というくらいモールで取られる機会はなくなってきています。ここは(FWコーチの)セコペ・ケプと権丈とのパッションがある練習の賜物かなと思います。具体的に言えば、(モールに)入るスピードや粘るところ。基本から見直して、低さなどは本当にこだわってやってきましたので、そういった結果が如実に出てきているのかなと思います。
バシャム選手:マインドセット、強い気持ちのところがこのチームは本当に成長してきてますし、加えて分析がうまくいってるなと感じています。この2つのバランスが両立できて成長に繋がっていると思いますので、相手の弱みをしっかりつけるようなミーティングをたくさんして、それが実際グラウンドで実行できていると思ってます。

質問者:今日はファールが多かったのが敗因の1つだということでしたが、チャレンジングなディフェンスと規律の部分を両立させるには何が必要でしょうか。
仁木監督:全員のコネクションの部分だと思います。皆で声をかけ合うことがまずペナルティを減らす第一だと思いますし、本人は出ていないと思ってもオフサイドであれば出ている部分もあったりとか。客観的に見れる人、余裕を持って見れる人が何人いて、かつ気の利いた声をかけられる人が何人いるかというところが全てだと思います。今回ディフェンスラインのオフサイドが多かったりしましたが、もちろんレフェリーに順応していかなきゃいけない部分もありますけど、やっぱり皆の周りの声が全てだと私自身は思ってます。そこを来週いっぱいで、吉廣を筆頭に我々も分析しながら、もう1つ気の利いた声を掛け合いながら改善しなきゃいけないかなと思います。
バシャム選手:規律というのはラグビーの要素の中ですごく大きい部分を占めていると思います。そこができなかったというのは、ミスが続いている中でどこに要因があるのか早く気付けなかったのが原因かなと思います。ステップアップするため、原因に早く気付いて、試合の中で改善するということを目指してやっていきたいです。

質問者:残り3戦、絶対に負けられない試合と仰っていました。意気込みをお願いします。
仁木監督:この記者会見でも皆さん聞き飽きるぐらい、私は「気持ち」と言い続けてきましたので、先手必勝、気持ちのみだと思っています。残り3戦を計算して戦えるようなチーム力じゃないですから、次の釜石戦にまずはフォーカスして、1戦1戦しっかり戦っていって、スタッフ含め全員のチーム力で戦っていきたいと思います。
バシャム選手:タフな状況が続くと思うんですけど、そこから逃げずに面と向かって立ち向かっていく勇気というのがやっぱりラグビーの醍醐味だと思うので、それをしっかり感じながら前に進んでいければいいと思います。
