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◇レッドハリケーンズ戦マッチレポート

スクラムで相手のファウルを誘い、雄叫びを挙げるブルーシャークスの選手

 清水建設江東ブルーシャークスは3月29日、夢の島競技場(東京都)で行われたNTTジャパンラグビー リーグワン ディビジョン2第10節でレッドハリケーンズ大阪と対戦し、20対14で勝利を収めた。この結果、今季の通算成績は4勝6敗となり、勝ち点を17に伸ばして順位を5位に浮上させた。前節の豊田自動織機シャトルズ愛知戦での敗戦から立て直し、連敗を脱した。次節は4月12日、同じく夢の島競技場でNECグリーンロケッツ東葛と対戦する。

 グラウンド周辺に咲く5分咲きの桜が、静かに降る雨に濡れていた。13-7とわずかにリードしたまま迎えた後半33分、花冷えのフィールドでソポアンガの闘志に火がついた。自陣約30メートル付近、右サイドで相手のパスをインターセプトした元オールブラックスのスタンドオフは、すぐさま前方へキックを放つ。濡れた芝に足を取られ、処理を誤った相手のボールを自ら回収し、右手にボールをしっかり抱えたまま身体を投げ出すようにダイブ。終盤に飛び出した値千金のトライで、勝利を大きく引き寄せた。興奮のままHポールの下まで駆け抜けた34歳のベテランは、雄叫びをあげて仲間と喜びを分かち合った。この試合でゲームキャプテンを務めたバシャムは「全ては準備の賜物。悪天候になって雨の中での濡れた試合になるというのは想定していました。その上での準備が実際にうまく出来たのが勝因です」と胸を張った。リスクを恐れず、自陣の守備でも前に出てプレッシャーをかけ続けたことが相手のミスを誘った。まさに全員で奪い取ったトライだった。

後半、トライ後にハミントンと喜びを分かち合うソポアンガ

 チャレンジャーとしての自分たちを思い出した。「ディフェンスのところで勇気を持って前に踏み出そうと選手には伝えました。しっかり実行してくれたと思います」と仁木監督が語ったように、選手はリスクを恐れず前に出て積極的なタックルを連発。セットプレーでも攻める気持ちは変わらなかった。前半11分、敵陣22メートルの相手ボールでのスクラムを押し返して相手のファウルを誘い、バンワイクのペナルティーゴールで鮮やかに先制点を奪った。後半7分の藤岡の決勝トライも、起点はバンワイクが倒れ込みながら後方に放ったボールだった。そのこぼれ球に素早く反応した大﨑のプレーが、決定的なチャンスを生んだ。この日に公式戦通算100キャップを達成した立川は「チームとしてハードワーク出来た。こぼれ球に対する反応とかミスの後の反応とか、そういう所がすごく良かったです」と振り返った。ハードワークの原動力となったのは直向さや積極性という挑戦者としての姿勢だった。前節の厳しい敗戦で影を潜めていた本来の姿を、再び呼び起こすことが出来たこの日の勝利は、単なる1勝以上の意味を持っていた。

 ブルーシャークスの精神的な強さを支えているのは、今季から新たにチームに加わった元オーストラリア代表・セコペ・ケプ フォワードコーチが就任当初から説いてきた「信念」だ。就任前に試合映像を見たケプは、「彼らには信念がまだ足りない。それを教えたいと思った」と感じたという。ケプが何より重視しているのは「習慣」だ。彼は、信念とは一朝一夕で身につくものではなく、日々の積み重ねによってのみ形づくられると信じている。その考えのもと、スクラム練習では「胸張って」といった自ら学んだ日本語を使いながら、シンプルで力強い言葉を繰り返してきた。基本の動作を徹底し続けること。それこそが、試合でうまくいかなかった時に選手が立ち返ることのできる「軸」となり、やがて「信念」として選手たちの中に根づいていく。ケプの指導は、スクラムの強化にとどまらず、選手の内面をも鍛え、苦しい場面で踏みとどまるための礎となっている。

攻め上がるハミントン

 今季のブルーシャークスは、フルタイムの仕事を終えた後に練習へ向かう日々の中でも妥協せずに自らを磨いてきた。練習後にも話し合いを重ね、疑問があれば納得のいくまでコーチに質問し、技術と精神を鍛え続けてきた。前節の豊田自動織機戦の敗戦後、白子キャプテンが涙ながらに伝えた「全ての準備をして初めて勝てるかどうか。まだまだ足りていない」という言葉は、選手一人ひとりの胸に深く刻まれていた。その後のある日の練習で、野村三四郎は23時までウエートトレーニングに打ち込んだ。「前の試合で当たり負けしたので鍛え直そうと思いました。キャプテンの言葉はとても心に刺さった」と語るように、思いを行動に変える姿勢が、今のチームには根付いている。この試合でプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた藤岡も、練習前に「ボールキープ」と紙に書き、自分に言い聞かせるように試合へ臨んだ。「50-50の場面での判断ミスを減らしたかった」と語った言葉には、勝利のために自分を変えようとする意志がにじんでいた。この日ピッチに立った全員が、それぞれの方法で「準備」に向き合っていた。目の前の1プレーに集中し、細部をおろそかにしない姿勢こそが、信念を形にする土台となった。苦しい時間に支えとなったのは、これまで努力を惜しまなかった自分たち自身だった。

激しくディフェンスする野田(右)とトロケマイケル

 次節は本拠地・夢の島でNECグリーンロケッツ東葛と再び合間見える。「何とか勝ちたいです。勝つことでまたブルーシャークスの文化が出来ていきます。物怖じせずに前向きにチャレンジしたいです」と仁木監督が語るように、過去3度に渡って日本選手権を制した強豪が相手でも一歩も引く気はない。勝利を求めるその姿勢には、「挑む者」としての誇りが宿っている。信念をもって積み重ねてきた準備は、どんな相手にも通用する。その手応えを、次節も結果に変える。極寒の季節に始まった戦いは、いよいよ終盤へ。柔らかな陽射しが夢の島を照らす頃、ブルーシャークスの挑戦は更にその熱を帯びていく。

◇仁木監督、バシャム選手会見 

試合前のウォーミングアップで気合いをいれるバシャム

質問者:本日の総括をお願いいたします。

仁木監督:開催にあたり多くの方々にご尽力いただきましてありがとうございました。まず1つ勝ててほっとしているというところです。前回ドコモ(レッドハリケーンズ大阪)に悔しい負けをして、その負けからいろいろ学ばせていただいて、何とか今日夢の島で勝ちたいという思いを持ちながらこの日まで頑張ってきました。今回しっかり勝たせていただきまして、嬉しいなという一言です。ただ反省すべきところはいっぱいあると思ってますし、勝って反省するところが多くあるかと思います。次は(吉廣)ヘッドコーチの古巣であるNEC(グリーンロケッツ東葛)戦なんで、そこに備えていきたいなと思います。ありがとうございました。

バシャム選手:やはり全ては準備の賜物かなと思います。悪天候になって雨の中での濡れた試合になるというのは想定していたので、その上での準備が実際にうまく出来たのが勝因かなと思います。 

試合後に選手を称える仁木監督

質問者:前節の厳しい結果から1週間で立て直してきました。この試合の良かった点を教えて下さい。

仁木監督:前回の負けは負けで自分たちで受け止めなきゃいけない部分が多くあったのかなと思いますが、コーチ陣からはまず悲観したりネガティブになることっていうのをやめようと話をしました。月曜日にミーティングをしてるんですけど、その時の言葉には結構気を遣いながら話をしました。その時伝えたのは「気持ち」だと。ここで一喜一憂している場合でもないし、下を向いてネガティブになったら絶対勝てないし、ラグビーはメンタルスポーツですから、気持ちのみというところは選手に伝えました。ただやっぱり前回の織機(豊田自動織機シャトルズ愛知)戦ではゲームへの持っていき方などにおいて、我々としても反省すべきところがあったので、そこに関してはスタッフにも総力戦だということは声をかけさせていただきました。ディフェンスのところで「今日は一歩でも勇気を持って試合で前に踏み出そう」ということも伝えましたので、そういったところはしっかり実行してくれてたかなと思います。ただ、最後に許したトライは余計でしたね。そこは次に繋がる反省かなと思います。

質問者:レッドハリケーンズ大阪を相手に初勝利です。

仁木監督:相手は長くラグビートップリーグの上にいたチームですので、最後の粘り強さもありますし、何においても日本人選手がタフにハードワークをしながらラグビーをしているという。我々も同じく日本人選手が多くいるチームとしてはやはり見習わなきゃいけないところがあると思います。今回に関しては日本人選手も外国人選手も含め、しっかりハードワークしてくれたので良かったと思います。今日は嬉しいですけど、もう頭の中はヘッドコーチも含めて次のNEC戦に切り替えていこうという感じです。

気合いの表情でプレーする安達(右)と齊藤

質問者:前回の試合後に白子(雄太郎)キャプテンが涙を見せていました。今日はバシャム選手がその白子キャプテンからゲームキャプテンを引き継ぐ形になりましたが、どのような気持ちで臨みましたか。

バシャム選手:本当に白子キャプテンは素晴らしい人間性で素晴らしいキャプテンだと思います。自分は同じようにはできないので、尾﨑(達洋)選手に頼ったりとか他の選手に頼りながら何とかキャプテンをしました。もちろん前回の試合後には皆感情的になった部分はありましたけど、仁木監督が言ったように先を見ずに切り替えて1試合1試合臨むというところにフォーカスして、チームを引っ張るように心がけました。

質問者:本日の試合で立川(直道)選手が公式戦通算100キャップを達成しました。彼の普段の取り組みや今日の試合でのプレーについて、どのように感じていますか。

仁木監督:普段の取り組みは良き兄貴分で、我々が見えてないところで結構厳しいことも言ってくれるんで、コーチなのか選手なのかたまに分からない時もあります。自分のベクトルではなくチームがどうやっていったらいいのか、こういう風にして欲しいんじゃないかっていう思いで言ってきてくれるので、上を追い求めなきゃいけない我々チームとしては、そういった立川みたいな存在は非常にありがたいと思いますし、勉強させてもらっています。プレーに関しては、おそらく痛いところだらけの体と思いますけど、鞭打って気持ちを最後まで出してくれましたし、ベストコンディションではないものの、今持っている最大限の力を発揮してくれました。特にセットプレーに関しては、野村(三四郎)と立川と李優河の3枚(のフロントロー)は変わらずに今日行きましたので、安心はしてましたけど、彼のコントロールと彼の言動行動で引っ張っていってくれてるんじゃないかなと思います。

タックルする尾﨑

質問者:本日プレーヤー・オブ・ザ・マッチを獲得した藤岡(竜也)選手の評価をお願いします。

仁木監督:彼はアーリーエントリーですが、下からしっかり煽ってくれています。物怖じもせず、しっかりやってくれてると思いますね。今日のプレーもベストパフォーマンスだと思いますし、1日1日成長しようという姿は練習中にも試合中にも見えてきますんで、そういった部分は私自身も見習うところ、見ならわなきゃいけないところかなと思ってます。末恐ろしいと言えばそれまでかもしれないですけど、まだ大学卒業したばかりでこのパフォーマンスですから。ブルーシャークスに入ってきて後悔させないためにも、我々コーチ陣もしっかり成長の道標のような役割を果たしながら、日本代表を目指してほしいなと思います。 

バシャム選手:まだまだ若いのに本当に頑張り屋ですし、いつもすごく練習を頑張っていて、こちらも学ぶべきことがたくさんあります。才能も能力もすごくあるので、応援したいと思っています。グラウンド上で実際見ていても、まだ自由なプレーというのを忘れずに自分なりにやっているのがすごく印象的で、今後もそういったプレーのところで引っ張っていってくれたらなと思います。

ラインアウトのボールをキャッチするホームズ

質問者:今日の勝利で上位4位以内というシーズン目標に近づいたと思います。次の試合からどのように戦っていきたいですか。

仁木監督: NECから吉廣(広征・ヘッドコーチ兼マーケティングリーダー)、権丈(太郎・FWコーチ)と宮本(誉久・FWコーチ兼アナリスト)が来てくれて、チームに対して本当に良い影響を与えてくれてる3人です。やはり3人の古巣に対する思いについては入った時から感じていましたので、グラウンドの方はヘッドコーチに全部任せてますけど、私も微力ながら練習に集中して戦う環境をしっかり作らせてもらって、何とか勝ちたいと思ってます。勝つことでまたブルーシャークスの文化ができてきますし、物怖じせずに前向きにチャレンジしたいです。

バシャム選手:本当にフォーカスは変わらずに1試合1試合、とにかく全集中するってところを意識していきたいと思います。連続して(毎週)試合があったブロックが一旦終わって1週間空くので、しっかりリフレッシュして次の試合にまたフレッシュな状態で臨めるように意識して集中していきたいと思います。

スタンドに挨拶するブルーシャークスの選手

◇藤岡竜也選手会見(2戦連続トライでプレーヤー・オブ・ザ・マッチ)

後半7分にトライを決めた藤岡

質問者:本日の試合の振り返りをお願いします。

藤岡選手:試合…。前半は何点で終わりましたっけ…?

質問者:6対7ですね。

藤岡選手:全然覚えてないですね、ちょっと興奮しちゃって…えっと、後半の厳しい時間にフォワードがトライ目前で頑張ってくれたので、僕がトライできたのは全員で取れた良いトライでした。後半の途中でトライを取られそうな時に、リマ(・ソポアンガ)がトライを決めてくれたのが本当に助かったなっていう印象です。

質問者:4戦出場中3戦でトライを決めていて、高確率で得点に絡んでいます。今日のトライの気分はいかがでしたか。

藤岡選手:余ってたのをパスしてもらって最後置くだけで、ほとんど自分の力ではないんですけど、普通に嬉しいです。

質問者:得点に対する意識は高いですか?

藤岡選手:空いているスペースはどこかというのをずっと意識しながらプレーしています。

トライ後にスタンドを指差す藤岡

質問者:前回の試合から1週間経って、チームとして良い形になっている印象を受けました。この間の練習を振り返ってみて、いかがでしょうか。

藤岡選手:前回の試合で悔しかったことをバネにしたのもあって、練習の質がいつもより上がっていました。ミスが少なかったり、やらないといけないことを全員ができていたような気がします。あとメンバーの復帰も多いので、それもかなり影響を受けてると思います。

質問者:前回の試合から精神的にも苦しい1週間だったかと思いますが、藤岡選手としてはどのようなことを心がけて、チームにどのようなものをもたらそうと思いましたか。

藤岡選手:前回の自分のプレーを超えようという目標をまず掲げていました。前の試合のレビューを坂本和城さん(バックスコーチ)にしてもらったんですけど、次はここを目標にして頑張ろうと課題を見つけて臨んだことで成長できたのかなと。それと50-50のミスで自分がチームに迷惑かけたところを減らそうと意識したのと、センターとして体を当てるコリジョン(激突)の部分を意識して頑張ったことによって、チームが少しでも前に出られるように意識して頑張りました。

質問者:50-50のミスというところ、具体的な改善内容を教えていただけますか。

藤岡選手:前の試合が終わった後に練習が3日間あるんですけど、50-50のプレーをせずにボールキープするっていうふうに練習前に紙に書いて、自分に言い続けてという。意識の問題です。

タックルする藤岡

質問者:アーリーエントリーでプレーヤー・オブ・ザ・マッチということですが、今の活躍は想像できていましたか。

藤岡選手:できていないです。まだまだ上を目指してるので、そこまで浮かれてる気分ではないんですけど。あと4月1日から仕事が始まるので、仕事とラグビーの両立を頑張ろうって決めてこのブルーシャークスを選んだので、今そこができるかどうかが不安です。

質問者:先ほど仁木監督が「将来を楽しみにしている」と仰っていました。ご自身の目標はどこにありますか。

藤岡選手:そうですね。まずは日本代表になりたいです。まだまだ全然足りないんで、とりあえず仕事しながらでもフィジカルを維持していきたいです。今日もまたフィードバックして、一つ一つ試合を重ねていく上で成長していけたら、いつかはなれると思います。

試合後の円陣で笑顔を見せる藤岡

質問者:どのような選手になりたいですか。

藤岡選手:スピードのある、強くて少しスキルフルな、ディフェンスも上手い選手になりたいです。

◇立川直道選手一問一答(公式戦通算100キャップを達成)

トコキオソシセニと記念撮影する立川

質問者:復帰戦を勝利で飾りましたね。

立川選手:やったぜって感じです。

質問者:今日の試合の良かった点を教えていただけますか。

立川選手:今日はハードワークじゃないですかね。雨の試合だったんで何か落ち着かなかったんですけど、皆こぼれ球に対する反応とか、ミスしちゃった後の反応とか、そういうところがすごく良かった。あとモールとかスクラムとかが多くなったんですけど、しっかりそこで戦えたっていうのはよかったと思います。 

笑顔でプレーする立川

質問者:公式戦通算100キャップのお気持ちはいかがですか?

立川選手:本当に何もないですね。毎試合大事なのは変わりないので、100試合というただ記念になる試合に勝てたっていうだけですね。ただ職場の人が見てくれたりとかして、試合に勝って周りの皆が喜んでくれて、それを見て嬉しいなっていう感じはあります。これを機に家族とかチームメートに「ありがとう」って言えたんで、それは良い機会になりましたね。 

質問者:今日の勝利で上位4位以内というシーズン目標に近づいたと思います。次の試合からどのように戦っていきたいですか。

立川選手:自分たちのラグビーをすれば戦えるっていうのは改めてわかったと思うんで、そこにしっかりフォーカスすることですね。強い弱い、上位下位というところはあんまり見ずに、自分たちがやるべきプランをどれだけ遂行しきれるかどうかがポイントになると思います。今の上位4チームも強い弱いというよりは、自分たちのラグビーをできるかどうかで順位が分かれていると思うので、選手の個人的な能力の差とかそういうのはあまりない気がします。

タックルする立川