◇豊田自動織機シャトルズ愛知戦マッチレポート

清水建設江東ブルーシャークスは3月22日、ウェーブスタジアム刈谷(愛知県)で行われたNTTジャパンラグビー リーグワン ディビジョン2 第9節で豊田自動織機シャトルズ愛知と対戦し、28対75で敗れた。この結果、今季の通算成績は3勝6敗で順位は6位となった。次節は3月29日、夢の島競技場(東京都)でレッドハリケーンズ大阪と対戦する。
キャプテン・白子の声は涙で震えていた。右目の下に張り付いたままの芝生が、彼が最後まで戦い抜いたことを物語っていた。「今季、ディビジョン2でトップ4に入って、ディビジョン1を目指していくんだろう?それだったら、全然足りてないよ。今日は本当に悔しい」。試合後の円陣。キャプテンの呼びかけに、誰もすぐに声を出すことができなかった。それほどの完敗だった。
フィジカルの強さを前面に押し出してきた相手に、序盤から主導権を握られた。開始わずか3分、バーンズに右サイドを抜かれて先制トライを許す。その後も相手の勢いは止まらない。個々の強さで確実にゲインを重ねられ、ディフェンスラインのギャップを次々と突かれた。ブルーシャークスは、後半24分にトゥイトゥポウ、同29分に尾﨑がトライを挙げて食い下がったものの、28ー75で試合終了を迎えた。

試合後、吉廣ヘッドコーチはこう語った。「相手は強い選手をシンプルにぶつけてきた。それに対抗していくには経験が必要になる」。さらに、この試合の意味についてもこう続けた。「選手はやれることをやっている。チームは自分の予想よりも早く、相手に研究されるような段階に来た。そして、この試合を経験できたことも大きい」。自分たちのスタイルが相手に研究され、対策される。それは悔しさであると同時に、成長の証でもある。大きな課題を突きつけられたからこそ、得られた気づきがある。仁木監督も、試合を通じて感じた本質を言葉にした。「やっぱりラグビーに関しては、ファーストタックルが全てだと思っています。そこで受けてしまったというところが、全てでした。ラグビーは一対一で倒さないと、勝てないし、そこからは何も繋がっていかない」。一歩目の強さ、最初の接点での気迫。それが全ての起点となる。ラグビーの本質に立ち返るような敗戦だった。

この試合を経て、チームはまた新たな転換点に立った。昨シーズンの開幕前、仁木監督と吉廣ヘッドコーチによる新体制がスタートした際、選手達には「練習への出席率をメンバー選考の基準とする」という方針が通達された。これは、会社員としてフルタイムで働きながらプレーする選手が大半を占めるこのチームにとって、決して簡単なルールではなかった。その結果少なくない選手がチームを離れたが、ラガーマンとしての未来を信じた選手達はプレーを続けることを選択した。
その思いは、日々の小さな場面に表れている。クラブハウスのミーティングルーム兼ウエートルームを出たところのモニターには、今月から「5:00」のタイマーが映し出されている。ミーティング終了後5分以内にグラウンドへ。1分1秒を大切にすることへの意識を全員が共有している。ある日、仕事の都合で練習に遅れて参加した宮㟢は、全体練習が終わった22時過ぎのグラウンドで一人黙々とシャトルランを繰り返していた。誰に見せるでもなく、当たり前のように自分に課したトレーニングをやり遂げる。その背中もまた、自らの未来を信じている証だった。
別の日、メンバー外の選手たちが居残りでゴール前の攻防を想定した練習をしていた。白子キャプテンはその側でストレッチをしながら、練習が終わるのを静かに見守っていた。そして、終わった瞬間に仲間達にそっと拍手を送った。それは、ただの拍手ではなかった。試合後に涙声で語った厳しい言葉も根底に流れているものは同じだろう。チームとしてもっと高みに行けると信じているからこそ、彼は仲間を叱咤し、心の中で称えもする。その言葉も、その行動も、すべては愛情の表れだった。

これからの戦いは、一人ひとりがより強くなることを求められる。フィジカル、メンタル、そして覚悟。あらゆる意味で、自分自身を乗り越えていく必要がある。「戦術理解度はかなりの高さまできている」と吉廣ヘッドコーチは言う。戦い方の共通認識はチーム全体に浸透しつつあり、積み重ねてきたスタイルには確かな手応えがある。だからこそ今、求められているのは、相手が強くなってもそれを体現できる個の力だ。
白子も、その思いを言葉にした。「誰が出ても変わらないプレーをしなくちゃいけないと思いますし、メンバーが変わって自分たちのラグビーができなくなったり、実力が出せないようだとチームの総力という意味ではまだまだ甘いと思います。今回急遽出場したメンバーも頑張っていましたし、チームとして頑張ってはいましたが、納得いくまでではなかった」。そのうえで、彼は力強く言葉を重ねた。「自分たちはチャレンジャーです」。目の前の現実は悔しい。しかし、挑戦者であることを誇りに、また一歩ずつ積み上げていく。白子は強く信じている。自分自身のラガーマンとしての未来も、チームとしての未来も。

◇仁木監督、白子キャプテン会見
質問者:本日の総括をお願いいたします。
仁木監督:開催にあたり多くのご関係者の方々にご尽力いただきましてありがとうございました。本当にもう完敗の一言かなと思います。ただこの負けを選手自身がどう受け止めるのか、一番大事なのは我々スタッフがどう受け止めて今後導いていくかというところだと思っています。我々も(3月15日の)近鉄(花園近鉄ライナーズ)戦で7点差と良いゲームをして、ここに関しては自信を持ってたんですけども、今日のようなゲームをするということはいろんな要因があると思ってます。選手は本当に一生懸命頑張ってくれていますので、我々スタッフ全員がこの負けをしっかり分析して、次のドコモ(レッドハリケーンズ大阪)戦に備えていきたいと思います。本日はありがとうございました。
白子キャプテン:はい。私たちはチャレンジャーなので、先に相手を殴ろうっていう話をしてて、そういったウォームアップだったり練習をしてきたつもりだったんですけど、やっぱり相手のフィジカルに対して、最初受けてしまったっていうところが全てだと思います。先手を取るべきだったんですけど、そこの気概が足りなかった。その一言に尽きると思います。

質問者:当日になってメンバー変更があったりとアクシデントがありました。その中で前半苦しんだかなと思いましたが、立ち上がりはどのような所が良くなかったでしょうか。
仁木監督:キャプテンの白子が言ってる通り、先手必勝と掲げて今シーズンはずっとやってきましたが、そこで受けてしまったという部分だと思います。変更したメンバーに関しては、彼らは常に練習中に良いパフォーマンスをしてくれていたので、何ら心配しなかったです。メンバーが変わったからどうこうではなく、先ほどキャプテンの白子が言った通り、もう気持ちの部分、ここに尽きると思います。
質問者:相手をタックルで倒し切るところまで行かずにパスで繋がれたり走られたりしていましたが、その部分もやはり最初に受けてしまった、気持ちの問題でしょうか。
仁木監督:そうですね、やっぱりラグビーに関してはファーストタックルが全てだと思っていますので、そこで受けてしまったというところが全てだと思います。ラグビーは一対一で倒さないと、勝てないし、そこからは何も繋がっていかないと思ってますので、この部分で受けてしまったということが全ての敗因だと思います。

質問者:前半戦に「盛り上がろう盛り上がろう」とチームメートに声をかけていました。
白子キャプテン:そうですね。私たちはチャレンジャーで、無言で相手にプレッシャーを与えるような横綱相撲は取れないんで。自分たちの良いプレーがあった時などはちゃんと自分たちで自分たちを鼓舞して盛り上げて勢いを作っていくということは必要だと思うので、そういったことを意識してやっていこうということは話していましたし、それを実践したというところです。
質問者:豊田自動織機シャトルズ愛知戦を2試合やってみて、変化や成長を感じるところはありましたか。
白子キャプテン:前回の対戦では中盤でのモールでだいぶ押し込まれたシーンがありました。今日もちょっと押されたシーンはありましたけど、セットプレーのところは成長ができています。スクラムを含めてメンバーが変わっても組めているのかなと思っています。
質問者:この試合での収穫は。
白子キャプテン:そうですね。22m以内で相手自陣に入ったときの精度、そこに何回進入して何回得点に繋げられたかっていうところでは、結構今回は点数を取れたのかなと。ただ中盤戦でのディフェンスのペナルティだったり、エリア取りのところで自陣に攻め込まれた時には、やっぱり我慢できずに失点することが多かったので、次の課題はそういったところなのかなと思っています。

質問者:後半に自分たちの時間もあったと思いますが、良かった点を教えてください。
仁木監督:そうですね。相手のキーマンである10番が代わってからの部分が非常に大きかったと思います。本当に素晴らしいプレーをされていましたので。やっぱり我々もしっかり対策してきたつもりですけど、1枚も2枚も上手だったのかなと思います。ただやっぱりこのままじゃいけない、ここからやらなきゃいけないという思いがありました。良かった点は、後半から入ってきた髙橋(広大)などの選手がしっかりエナジーを持って中に入ってくれて、戦う姿勢を見せてくれたんじゃないかなと思います。
白子キャプテン:ボールキープを継続できたことが前半と後半で大きく違ったのかなと思います。特に戦術は変えてないんですけど、相手を倒し切るというところなどをテーマに挙げてたので、それをしっかりもっと実践していこうって声掛けをして、それができたのかなと思います。
質問者:キャプテンが試合後の円陣でこの試合の負けはとても悔しいと仰っていました。
白子キャプテン:そうですね。誰が出ても変わらないプレーをしなくちゃいけないと思いますし、メンバーが変わって自分たちのラグビーができなくなったり、実力が出せないようだとチームの総力という意味ではまだまだ甘いと思います。今回急遽出場したメンバーも頑張っていましたし、チームとして頑張ってはいましたが、納得いくまでではなかったというところで、悔しかったと伝えました。

質問者:全てのチームとの対戦が二巡目に入って、相手も対策を立ててくると思います。
仁木監督:相手が重要なのではないと思っています。吉廣ヘッドコーチはじめスタッフ陣が積み上げてきたものは不変のものだと思ってますし、今更この時期にバタバタしたとしても、結局それが浸透するまでおそらく時間がかかると思いますので、そこに対しては自信を持ってます。あとはラグビーに関しては全てメンタルが鍵だと思ってますので、今あるラグビーを、やってきたラグビーをしっかり積み重ねてチャレンジしていきたいと思います。
