クリタウォーターガッシュ昭島戦マッチレポート
夢の島競技場に詰めかけたファンと心からの笑顔で向き合った。雨と汗でぐちゃぐちゃになった選手たちの表情には、喜びと安堵が溢れていた。選手たちが一列に並んでスタンドに手を振ると、歓声とともに祝福の拍手が降り注いだ。ブルーシャークスがクリタウォーターガッシュ昭島を38-20で下し、今季2勝目を挙げた。昨季から続く公式戦におけるホームでの連敗は「7」でストップ。改修工事に入る夢の島競技場での今季最終戦を勝利で締め括った。「まさに勝ってよかったなという一言。この勝ちをいい起点として次の試合に繋げていきたい」と仁木監督は頬を緩めた。
前衛で体を張る男たちが、存在感を見せた。雨の中では芝もボールも滑りやすくなるため、フォワードの出来が試合の鍵を握る。小雨が降りしきるフィールドを前にしたフォワード陣は「今日は俺たちのプライドの戦いだ」と奮い立った。前半7分にゴール前のスクラムでの圧力からバンワイクの先制トライに繋げると、モール(選手が立ったまま集まり押し合う状態)でさらに3トライを獲得し、相手をパワーで圧倒。キャプテンの白子は「先発だけじゃなくリザーブメンバーも含めて80分間をしっかりやりきろうとフォワードの間で話し合いました。集中力高くやり抜けたと思います」と胸を張った。
前半7分、バンワイク選手がトライを決める
ラインアウトのボールをキャッチするロウ選手
悔しさを力に変えた。前節のスカイアクティブズ広島戦ではスクラムやモールで押し込まれ、試合終了残り10分で逆転を許して力尽きた。精神的にショックな負け方だったが、選手たちは自主的に話し合い、自分たちの弱さと向き合った。吉廣ヘッドコーチが、就任してからずっと簡単な言葉と資料を使ってチームの目指すべきスタイルを明確に示し続けてくれている。あとは自分達がそれを試合で実行できればいいだけ。気持ちを切り替えたフォワード陣はまとまって居残り練習を行い、真っすぐ低く組む自分たちのスクラムを徹底して磨き直した。ラインアウトやモールの確認も納得がいくまで続けた。練習が終わる頃には、時刻は22時を回っていた。
「スピード」にもこだわった。プレーの速度だけではなく、練習の切り替えの際の迅速な行動を意識した。練習間の無駄が削減されて時間的余裕が生まれたことで、選手間でのディスカッションやコミュニケーションが活発になった。その習慣は試合の中でも生かされた。後半7分にウォーターガッシュに5点差に詰め寄られたが、選手達がすぐにコミュニケーションをとって問題を共有した。全員で反則を減らすことに注力し、徐々に自分達にペースを引き戻した。スクラムでは、相手よりも先に自分達の形で組み上げて優位に立った。
スクラムを組む選手ら
グラウンドで円陣を組む選手
後半36分にはロウに代わってピッチに入った日髙が公式戦100試合出場(トップイースト、トップチャレンジを含む)を達成。本拠地での勝利に花を添えた。チームのムードは、一気に上昇気流に乗った。次節は2月24日のホームゲーム。駒沢陸上競技場で再びウォーターガッシュと相まみえる。「次の試合まで1ヶ月以上の期間があるので、新しい取り組みを入れていきたい。しっかり準備していきたいです」と吉廣ヘッドコーチ。ブルーシャークスの逆襲はまだまだこれから。目標のディヴィジョン2昇格に向けて更なる成長を続ける。
◇仁木監督・白子キャプテン会見一問一答
激しいプレーを見せる白子選手(左)と立川選手
攻め上がる金澤徹選手
質問者:試合の総括をお願いします。
仁木監督)
まさに勝ってよかったなという一言です。チームの母体となる清水建設は富山県が創業の地でして、先週は勝てずに色々とモヤモヤしてる思いもあったのですが、今回勝ったということで(被災された)同じ北陸の石川県の方々、社員の方々含めて少しでも笑顔になってもらえたらなと思っております。本当にありがとうございました。
白子キャプテン)
今週のテーマは「実行」ということがテーマだったんですが、自分たちの準備したプレーというのを相手のプレッシャーがある中でもやり切ろうと、遂行し切ろうということをテーマに挙げていました。すごく高い集中力を持ってできた部分が多かったのかなと思います。 今回の試合、勝利できて良かったなと思います。
質問者:夢の島競技場での今季最後の試合での勝利でしたね。
仁木監督)
(長い間ホームの夢の島で勝てず)試合が始まる前にファンの皆様も含め選手もモヤモヤしている気持ちは絶対あったと思ったのですが、そういった思いを一回抑えて純粋にラグビーをしようと思いました。気持ちだとか低い姿勢だとかそういった問題(意識)を持ってしっかり(ラグビーに)向き合って勝ちに行こうという言葉をかけさせてもらいました。(夢の島で)1年以上勝ててなかったので、私も監督になって初めて勝たせていただいたので本当に良かったなと思いますが、まだまだやれることはたくさんあると思いますし、修正しなくてはいけないこともたくさんあると思います。まずこの1つの勝ちを良い起点として次の試合につなげていきたいなと思います。
質問者:今日の試合の攻撃に関する組織力について、監督の評価をお願いします。
仁木監督)
選手たちの逞しい姿が誇らしいなと思いながら見ていました。シーズン前にはそのような姿は想像できなかった部分もあったんですが、選手が仕事とラグビーの両立を体現してくれた結果かなと思います。組織はもちろん大事だと思いますけど、やっぱり気持ちの部分が今回多く乗っかったのではないかなと思います。
質問者:コイントスの結果でクリタウォーターガッシュ昭島が前半に風下のサイドを選択したという話を伺いました。風上のブルーシャークスは序盤からチャンスが多くなることが予想される一方で、立ち上がりの難しさもあったのでしょうか?
仁木監督)
先手必勝はラグビーでは絶対なところだと思っています。相手は後半勝負なのかなと考える部分もありました。ただそれに合わせるのではなく、我々のやるべきことっていうのは一つだと思っていましたし、それは先手必勝1つだなと。選手は想像以上のプレーをしてくれたので、本当に満足しています。
白子キャプテン)
あまり自陣で(ボールを)持たずに、エリアを取っておく(相手ゴールに近いところでプレーする)というところは、最初に選手たちやヘッドコーチ、監督も含めて話をしていて、そこはきちんと遂行できたかなと思います。そういう手堅くゲームを進めていく中で要所要所で点に繋げられた部分はあったのかなと思います。
質問者:今日はセットプレーを起点にしてフォワードが点を取っていました。
白子キャプテン)
先週末のマツダスカイアクティブズ広島さんとの試合の時にフォワードが不甲斐ない試合をしてしまったところがありました。今日は雨の予報が出ていてピッチの状態が悪くなると思ったので「フォワードでの押し合いの勝負になるぞ」とフォワード同士で声をかけあってて、最初の8人だけじゃなくリザーブメンバーも含めて80分間をしっかりやりきろうと話し合いました。集中力高くやり抜けたのかなと思います。今日で各チームさんとの対戦が一巡しましたが、1回1回の試合がすごくタフなので、また準備をし直して、フォワードが前に出て勝てるようなゲームを今後も続けたいと思います。
真剣な表情でプレーするブルーシャークスの選手
タックルで相手を止めるブルーシャークスの選手
質問者:日髙選手が公式戦100試合出場を達成、松土選手も怪我から復帰しました。
仁木監督)
日髙に関して言えば、プレーもそうですがチームの頭脳の部分も含めて他の選手のお手本になってくれて、一言って言われるんであれば「ありがとう」という風に伝えたいです。ただまあもう一つ厳しい言葉が言えるのであれば、しっかりレギュラーを勝ち取って欲しいなと思っています。まだまだ引退させないつもりなので、頑張って欲しいと思います。松土は「多分人生最大だ」と自身で言うような怪我が(1年前に)あり、そのような中で先週は途中から、今回はスタメンで出てくれまして、正直感慨深いものがあるなという思いです。彼がリハビリに真摯に取り組んでくれていた姿を見ていましたし、やってくれると思っていました。ただ若干思っている以上に復帰が早かったものですから、ちょっと今日は心配していた部分もあったのですが、やはり気持ちの人間ですから。本当に今日は彼が献身的にタックルしてくれたおかげで勝てたんじゃないのかなと思います。
後半に途中出場した日髙選手
笑顔でスタンドに手を振る日髙選手
質問者:次の練習から注力するポイントを教えてください。
仁木監督)
次の2月24日にまたクリタさんとの試合があり、公式戦の間隔は結構空きますが練習試合が2試合入っています。今日の試合でジャージーを着られていない選手には、集合した時にしっかりアピールをして欲しいということを伝えました。そういったアピールがチームの底上げにもなると思っていますし、今日の試合に出た選手はそういったアピールを見るとうかうかしていられないなという気持ちにもなると思うので。それが本来チームとしてあるべき姿なのかなと。そういったアピールをしてくれた選手を私自身は見落とさず、次のゲームで使っていきたいなと思います。
白子キャプテン)
選手としてはベーシックな部分ですかね。スクラム、ラインアウト(試合中にボールがタッチラインの外に出たときに行なわれる競技再開の方法。ボールを出されたチームの選手がボールをもらって試合を再開する)などもそうですし、準備のところ。やはり基本に忠実にやることがすごく重要なので、そこの積み重ねを引き続きやっていくというところです。
◇ヒーローインタビュー
◎立川選手(モールでの2トライ)
◎松土選手(けがから復帰後初スタメンで1トライ)
質問者:立川選手は3試合ぶりの出場でした。
立川選手)
先週の試合にも出る予定だったのですが家庭の事情で出られなくなりまして、チームに迷惑をかけたという思いもあったので、必ず活躍して勝利に貢献しようというつもりで試合に臨みました。先週負けた大きな原因の1つにスクラムとモールというのがあったので、今回僕がスタメンに選んでもらった理由はそこをしっかり安定させるという所だったと思います。結果を出せて良かったです。
質問者:立川選手は個人として2トライの活躍です。
立川選手)
モール(タックルを受けても倒れずに立ったままボールを持った選手に他の選手がサポートに入り、そこに両チームの選手が加わって、押し合いながらボールを奪い合う状況)でのトライなので、最後に僕が抑えただけでした。僕がトライ出来て嬉しいというよりは、フォワードでモールでのトライが取れたということが嬉しいです。僕が交代した後も1本モールでトライを取れたので、それを含めて本当に良かったなと思います。
質問者:松土選手は怪我から復帰後初のスタメンでしたね。
松土選手)
ちょうど1年前にここで大きな怪我をしてという試合だったので、ネガティブなこともちょっとよぎりながら。でもグラウンドに立てば僕が体で引っ張るぞという思いで試合に臨んで。それで引っ張っていくわけじゃないですけど、ハードワークできたのがすごい良かったなと思います。
相手選手をマークする松土選手
前半27分、トライを決めてチームメートと笑顔を見せる松土選手
質問者:立川選手が入って、先週までの試合からスクラム含めてのセットプレーが安定してきたように見えました。
立川選手)
先週の試合は(スクラムで)結構押されてしまったんですけど、その要因の1つに相手の組みたいスクラムに色々合わせてしまったっていうのがあったんですね。なので自分たちのスクラムを組もうっていうのをこの1週間はしっかり準備してきました。クリタさん(クリタウォーターガッシュ昭島)はすごくスクラムにこだわりのあるチームで色々な組み方をしてくるんですけど、それに全く付き合わずに、真っすぐ低く組むっていう自分たちのスクラムをとにかく80分徹底させようとしてたというのはありましたね。それを今日はしっかり出せたんじゃないかと思います。
質問者:先週の敗戦から切り替えられた要因は?
立川選手)
技術的にはセットプレーのところはしっかり修正しましたけど、そんなに大きく変えてなくて、精神的なところの方が大きかったと思います。先週結構ショックな負けだったので、 月曜日クラブハウスに来た時にも暗い感じで「もう正直来たくないな」ぐらいの気持ちだったんですけど、そことしっかり向き合おうっていうのは白子(キャプテン)とずっと喋っていました。良いプレーをした時もミスしてしまった時もどちらでも必ずポジティブな声かけをしようと。練習の時からミスをしてもとにかく次どうするか、良いプレイをしたらとにかく盛り上がるというところで。沈み込んでた雰囲気をなんとか良くしようと練習には取り組みました。そこは精神的にかなり効果が出たんじゃないかなと思います。今日もとにかくポジティブに、ミスがあっても「次!次!」っていう声が出ていたので、そこは良かったなと思います。
松土選手)
フォワードのセットプレーが前回良くなかったというところを今週修正しました。モールでトライも何本か取れてきたというところでやはりフォワードも調子が上がってだいぶ盛り上がってきて、先週に比べたら試合中にコミュニケーションがよく取れたなと思います。トライ取った後のハドル(選手たちがフィールド上に集まって情報共有を行うこと)もそうですし、うまくいかなかった時でも皆がまとまって、次何をするかというコミュニケーションが取れたことが今週は良かったかなと思います。
立川選手)
めっちゃ時間かかりましたね。いつも遅くても練習が22時には終わるんですけど、今週の火曜日と木曜日は22時を過ぎてましたね。スクラムとモールとラインアウトのチェック…。もう全部最後納得するまでやろうっていうのを言ってたら、結局22時過ぎて練習終わる感じでした。それでも誰も文句を言わずに、今ここはやる時なんだなっていうので、チームが1つになっていましたね。
質問者:今日の試合は入りの部分すごく流れが良い中で、何回か相手に流れを持っていかれそうになりつつも持っていかれなかったというところがありました。その時は選手の中で声かけがあったのか、他になにか良い点があったのでしょうか。
松土選手)
練習の時から相手(ペース)の時間があるよという話はしていて、その時間は我慢して次に自分たちの時間にしようということを言っていました。そこで「我慢、我慢」っていう声も出ていましたし、同じ方向を向けていたのかなと思います。
立川選手)
もうその通りですね。ああいう時間があるっていうのを事前に皆で話し合っていたので、「あ、来たな」と。その時の原因は何だという時に、「ペナルティだ」と。じゃあペナルティをなくそうという話し合いがすごくできていました。今日は簡単には勝てないと思っていたので、それは本当に良かったと思います。
質問者:この夢の島での勝利について、思いを聞かせてください。
立川選手)
見送りの時に「ありがとうございました」とちゃんと僕らも笑顔で言える。もちろん負けた時でも笑顔では言ってますけど、心の底では本当に申し訳ないという気持ちの方が大きかったので。ファンの皆さんと本当の意味で同じ気持ちになれたというのは良かったなと思います。
松土選手)
やっぱりファンの皆が笑顔で「本当に良かったよ」って言いながら帰ってくださるのは自分らの力になりますので、また次も同じ気持ちを共有できるように頑張ろうって思いました。
質問者:夢の島競技場が改修工事に入るため、今日がこのグラウンドでの今季最終戦でした。特別な思いはありましたか?
立川選手)
ありましたね。毎回負けてたんで、去年も今年も。もう絶対皆さんに本当に心から笑って帰ってもらいたいなと思って試合に入りました。
松土選手)
僕もそうです。ちょうど怪我したのが夢の島というのもあったので、2つの思いが重なって勝ちたいという気持ちが強かったです。
質問者:次節まで約1ヶ月間隔が空きますが、ここをどう繋げていきたいですか?
立川選手)
(吉廣) ヘッドコーチも言ってましたけど、チームが今ぐっと右肩上がりに来たので、これを絶対継続させるつもりでいます。練習試合では今日の試合に出ていない選手も沢山出場して、チームとして(力を)積み上げられるチャンスだと思うので、そこは確実に積み上げて。次節はもう1回クリタさんとの試合ですが、さらに成長した自分たちでもう一度対戦するという気持ちで、この1ヶ月をしっかり過ごしていきたいと思います。
松土選手)
フォワード陣はもっとこだわれると思います。今日の試合でもスクラムで相手に反則を取られたりするところがあったので、そこを修正して、次はもっとフォワードから行きたいなと思っています。
◇イベントレポート
◎aub presents特別抽選企画『腸★うん試し!』
新年の始まりに、AuB株式会社主催の特別イベント「aub presents特別抽選企画『腸★うん試し!』」が開催された。来場者にはaub LINEアカウント登録を通じて、腸活スペシャルグッズが当たる抽選に参加するチャンスが提供された。試合当日の11時から13時に会場入口の「aubブース」で登録を受け付け、ハーフタイムに元サッカー日本代表で同社代表取締役CEOの鈴木啓太さんが当選者を発表。往年の名プレーヤーのサプライズでの登場に、会場は大きな拍手に包まれた。当選者は「aub BASE」、「aub GROW」、および「おなかのためのスープ」がセットになった「腸活スペシャルグッズ」を受け取った。このイベントは、健康意識の高いラグビーファンにとって、新年を祝う特別な体験となった。
◎aub presentsアトラクション「腸★ラグビーターゲット!」
試合前のアトラクションとして吉本芸人のしんやとなにわスワンキーズ「こじまラテ」が盛り上げる『aub presentsアトラクション「腸★ラグビーターゲット!」』が開催された。参加者は吊るされたシートの穴を狙ってラグビーボールを投球。3球で100点以上を目指した。成功者には、大人には「aub GROW(3包セット)」、小学生以下の子供には「おなかのためのスープ」が贈られた。千葉県千葉市から来場し、見事成功した7歳の男の子は「楽しかった。しんやさんとこじまラテさんが面白かった」と笑顔。しんやとこじまラテのユーモア溢れる演出が、家族連れやファンを魅了し、試合会場の楽しさを一層高めていた。