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2024年01月15日

スカイアクティブズ広島戦マッチレポート

試合後に円陣を組む選手たち


スカイアクティブズ広島との緊迫した一戦で、ブルーシャークスの目指すべき攻撃の形が垣間見えた。21-19で迎えた後半15分だった。中央右、ゴール手前の地点のラック(ボールが地面にある状態での密集戦)からハミントンが左に展開。田森、オービンと続くパスワークの後、最後はノーマークのバンワイクが左サイドでトライを決めた。

 

 鮮やかな得点の起点となったのは直前、ゴールから約20メートルの地点でのスクラムだった。スカイアクティブズ広島のフォワード陣との激しい押し合いに耐えてブルーシャークスはボールを保持。その後に右サイドでボールを受けた金澤が一気に駆け上がった。相手守備陣に縦への突破を意識させたところで、ゴール前のゾーンでは横への素早い展開に切り替えて撹乱。今節のテーマとして掲げてきた「スピード」を縦横無尽に発揮して得点を奪った。チームは体力の落ちた終盤に逆転を許して力尽きたが、練習で繰り返してきた形がようやく実を結んだ。


苦しいスタートから全員でチームを建て直してきた。昨年12月9日に日野レッドドルフィンズをホームに迎えた開幕戦で敗れた。その3日後、翌週の第2節のメンバーを早々に発表し23選手中18選手を入れ替えた。異例の決断はチーム全体で再出発への意識を高める意図があった。「これまでやってきたことを大きく変えるつもりも、変える必要もない。積み上げたことを試合で出せるように継続するだけ」という吉廣ヘッドコーチの覚悟を持ったメッセージは選手に浸透。それが示されたのが中国電力レッドグリオンズに対する敵地での快勝、今季初白星だ。  


 課題だったセットプレーも徐々に改善の兆しを見せている。吉廣ヘッドコーチが「めちゃくちゃ良かった。100点に近い」と語るように、この試合のラインアウト(ボールがサイドラインを越えた際に行われる再開プレー)では田森が好スローを連発。殆どの機会でボールを制して攻撃のチャンスを作った。チームメートに持ち上げられて空中でボールを受け取るジャンパーとの呼吸も抜群。全体練習後に選手が自主的に集まって居残り練習を繰り返してきた成果だった。


ラインアウトでボールをキャッチする髙橋選手


 「チームで動く攻撃の形をもう一度見直したい。練習自体はしているので、すぐに出来てくるはず。1回自分たちの形で点を取って勝てる試合ができれば(チームの状態は)ガラっと変わると思います」と吉廣ヘッドコーチ。この日の攻撃では個人技に頼るプレーが多く見られたことが反省材料だったが、それは「チームを勝たせたい」という気概を持った選手が多い裏返しでもある。1月下旬から夢の島競技場が改修工事に入るため、同20日に開催される次節のクリタウォーターガッシュ昭島戦が地元江東区でファンに勝利を見せる今季最後のチャンス。選手、スタッフ共に思いは一つ。強い気持ちがチームとして噛み合えば、結果は自ずと付いてくるはずだ。


◇一問一答(仁木監督、吉廣ヘッドコーチ、白子キャプテン


質問:試合の総括をお願いします。

仁木監督)
まず、正月から(能登半島)地震を含めて色々と起きている中で我々の存在意義っていうのは何をすることなんだと思ってますし、(先シーズンから)夢の島で勝てていなかったのでそういった方々を笑顔にするというテーマだったのですが、それが成し遂げられなかったというのは、思うところもいっぱいあります。

選手個人では良くなっている部分はもちろんあると思いますが、チームを作っていくことに関してはまだまだなことしかないのかなと思っています。チームでやらないとラグビーは勝てませんので、 そこを導くことができなかった私の全ての責任なのかなと思っています。まだ3試合目ですし、残り長いシーズンですので、 もう前を向くしかないと思っています。


選手と積極的にコミュニケーションを図る仁木監督


吉廣HC)
今までよりは前に出れるケースがあったので、皆「自分でやってやろう」という気概が見えたのは良かったのですが、チームでアタックするというよりは個人でというところが結構多くなってしまいました。そのため、こう攻めようと準備していたものはあまり出すことができなかったです。
(相手チームの)スカイアクティブ広島さんは最初にディフェンスで出てくるので、「1人ずつ前に出よう」と言っていたのですが、 そこのイメージが少し強すぎたかなという感じです。個人では少しだけでも我慢してチームで動くというのをもう1回やりたいです。練習自体はしているのですぐに出来てくるはずかなと。その辺がうまくいけば体力的にも最後の方にもうちょっと(前に)出られたかな、という感じがします。ラインアウトはめちゃくちゃ良かったですね。本当に100点に近いと思います。


白子キャプテン)
ディフェンスでは我慢してノーペナルティで守り切ろうと、そこはよくできたのかなと思っています。 アタックに関しては自分たちが練習でやってきたことをエリアごとにやって戦おうというところで、セットプレーやラインアウト(ボールがサイドラインを越えた際に行われる再開プレー)はすごくよくできたのかなと思います。
ただ点を入れられて入れ返してというシーソーゲームの中で、 自分たちのラグビーを終始できなかったのかなという感覚です。 振り返ればターニングポイントはあったかと思いますが、ラグビーの精度の部分でボールを落としてしまったりと、なかなか自分たちのペースを掴めなかったのかなと。またスクラムのところでちょっと課題が出たので、モールディフェンス(相手チームがボールを持ったプレーヤーが周囲に他のプレーヤーに囲まれた状態で形成される「モール」と呼ばれる攻撃形態を作った際に、守備側が取る行動)を含め修正したいと思っています。


質問:本日の試合のプランは?


仁木監督)
私もこのシーズン入って一貫しているのは、本当に先手必勝ということと、ラグビーにおけるファーストプレーは意識しましょうというところ。前試合と前々試合、そして今日もやはりキックオフ直後のミスだったり簡単なミスの結果いい流れのところで相手に流れを渡してしまったことが多かったものですから、そういったところは意識するようにと試合が始まる前に(選手に)声をかけました。


質問:相手に押し込まれる展開になった時、キャプテンとしてはどういう風にチームで修正していこうと声をかけられてましたか?


白子キャプテン)
やはりペナルティが重なってしまうと後手後手になってしまうので、ディフェンスはノーペナルティでしっかり我慢しようというところを声をかけてやってました。なかなかビッグプレーってすぐに出ないので、どれだけ我慢比べできるかっていうのがすごく重要になってくると思います。そこで絶対負けないように頑張っていこうという話はしていました。

前半に相当数アタックしていったので、後半にどうしてもちょっと息切れしてしまった分は否めないのかなと思います。中盤での戦い方というのはテーマにあると思うので、色々なラグビーの戦い方がありますけど、それはチームでみんなが1つの絵を描いて、そこに注力できるようにしていかなければいけないのかなと思います。


質問:次戦に向けての修正ポイントは?


吉廣HC)
相手が勢いよくアタックしてくるのをこちらがディフェンスにおいてスピードでセットするのを早くするというのをやっていたので、そこはかなり改善して良かったなと。ディフェンス自体は見てて全然心配なかったので。あとはモールのところとゴール前のところだけ。そこはすぐに強くなるようなところではないですが、チームには大きい選手もいっぱいいるので、できる限りのことをやるしかないなと思います。

練習でやっていたものを試合でやるというのは個人もチームもスキルが必要です。試合になると一部できたなというのは誰でもできますが、それをちゃんと練習通りできるのがやはり一流の選手。それが1人でも増えてくれたり、コーチ陣もそれをできるようにアシストするのがコーチの仕事です。自分たちの形でどれだけ点数を取れるかってところまでは我慢して苦しい試合が続くと思いますが、1回そういうゲームができれば(チームの状態は)ガラっと変わると思います。


質問:次の試合は夢の島競技場改修前の最後の試合になりますね。


仁木監督)
何がなんでも、1点でも、最後は笑って終わりたいなと思ってます。


吉廣HC)
もう来週しかチャンスはないので、中身はどうでもいいから勝つしかないです。準備はもちろんしっかりしますけど、内容というよりは結果が全て。やるしかないという感じです。



◇ヒーローインタビュー(金澤徹選手)


2戦連続トライの活躍を見せた金澤選手


質問:本日の試合を振り返っていかがでしたでしょうか。


金澤選手)
僕がやりたいことをうまく出来たシーンもあったんですけど、序盤でごたついてしまったために出来ないことも多かったです。バックスでフォワードを助けられるように、(トライを)取り切るところで取り切れないといけないなっていうところはあったかなと思います。


質問:前半19分には右サイドに2戦連続となるトライを決めました。


金澤選手)
外に数的優位の状況を作って(トライを)取るっていうようなプレーは練習の時から狙っていたので、練習通りできたかなと思います。


質問:相手選手2人をかわしてのトライでしたね。


金澤選手)
体のバランスが取れてるので、最近は調子がいいです。あそこも練習でなんとなくイメージはしていたので、相手のディフェンスの位置を見るというところも最近は少し見えてきたのかなと。



質問:好調の要因は?


金澤選手)
どれが要因かわからないのですが、去年やっていないような下半身の強化などを個人的にチームと別でオフの日などにもやっていて、チーム練習後に個人練習でチームのトレーナーさんに見ていただいたりしていて、そこも結構うまくいってるのかなと。
2戦とも外で最後にいい形でボールをもらっているので、そこで(トライを)取り切れたところは自分のイメージ通りかなとは思います。ただ、外で綺麗に距離が長い場面でボールもらうところがこの2戦であまりないので、 そういうチャンスが欲しいです。もっと出来るのかなと思いながらやっていますし、そういうプレーに挑戦してみたいなと思います。


チームメートとタッチする金澤選手



◇スカイアクティブズ広島戦イベントレポート


笑顔で記念撮影におさまるタグラグビー体験会の参加者



◎選手入場エスコートファミリー

 キックオフの前の入場セレモニーの際に「エスコートファミリー」イベントが開催された。このイベントでは、抽選で選ばれた江東区在住の3歳から12歳までの子供たちとその保護者を対象に、ブルーシャークスの選手と手を繋いでフィールドに入場するという体験を提供。抽選で選ばれた23組の家族が参加した。トム・ロウと並んで歩いた6歳の女の子は「楽しかった。選手が大きかった。」と嬉しそうに話した。子どもたちの顔には大きな笑顔が広がり、選手たちも子どもたちとの特別な瞬間を楽しんでいる様子が見受けられた。


エスコートファミリーと入場する選手たち



◎タグラグビー体験会

 試合前のフィールドでは、江東区在住の小学生を対象に「タグラグビー体験会」が開催され、抽選で選ばれた25組の家族が参加した。タグラグビーとは、タックルの代わりにプレーヤーが腰に付けたリボン状の「タグ」を取ることでプレーが停止し、身体的な接触が少なく、怪我のリスクが低減される。子供達は安全で楽しい環境でパス回しやボール運びなどの基礎的なラグビーの動作を体験。夢の島競技場には終始、子供たちの元気な声が響いた。ブルーシャークスはこのようなイベントを通じてラグビーの魅力をさらに広げるとともに、地域に愛されるチームになるべく成長を続けてい​​る。​​



​​​​​スタジアムグルメ

 メインスタンド側の広場では江東区のソウルフードとして知られる深川めしや新感覚のクレープなど、この日限定のスタジアムグルメが提供された。「深川めし 八郎右衛門」では、江戸時代から続く伝統の深川蒸籠めし(600円)を、食べ歩きに適したミニサイズで販売。有機米コシヒカリと無添加調味料で炊き上げた「ふっくら深川めし」は、観客に好評だった。一方、「つつみ」のブースでは、春巻き型のクレープが登場。豊洲市場から仕入れた新鮮なフルーツや野菜を使用したクレープは、子どもから大人まで幅広く楽しまれた。千葉県松戸市から来場した10歳の女の子はつつみクレープの「いちごチョコ」(700円)を頬張り「いちごとチョコが混じり合って美味しい」と、この日限定のスイーツの味に笑顔を見せた。ブルーシャークスのホームゲームは、単なる試合観戦だけではなく、地元グルメを通じて地域の魅力も一緒に体験できる特別な場として機能している。