◇東芝ブレイブルーパス武蔵戦マッチレポート

清水建設江東ブルーシャークスは10月24日、東芝府中グラウンド(東京都府中市)で東芝ブレイブルーパス武蔵とのプレシーズンマッチに臨み、12―38で敗れた。雨の中、30分3本の変則形式で行われた一戦。ディビジョン1(D1)の強豪を相手に、接点で激しく体をぶつけ合い、敵陣深くまで攻め込む場面も多く作った。ゴール前で得点機会を生かし切れない場面があったものの、タックルからボールを奪い返すなど、フィジカル面での成長を示した。

降りしきる雨の中、安達の声が響いた。東芝の選手や観客を盛り上げる場内MCの声が絶え間なく流れていた。2本目を終えて、スコアは7―31。劣勢に立たされたチームに、今シーズンもキャプテンを任された安達が語りかける。その声は場内の喧騒に埋もれることなく、仲間たちに届いていた。
すでに60分間の出場を終えていた安達は、自ら体を張って戦う中で感じた課題を仲間たちに伝えた。タックルして終わるのではなく、ボールを奪い返すまで戦い続けること。アタックではブレイクダウンへの寄りを速くし、敵陣でプレーする時間を増やすこと。残る30分間で何をすべきか。その言葉は具体的だった。「もう一回、試合の入りと同じように、一発目から自分たちで仕掛けましょう」。
3本目、ブルーシャークスは組織的な守備で積極的に前へ出ながら相手を敵陣へと押し込んだ。そして8分。右サイドで獲得したラインアウトを起点に臼井がゴール中央にトライ。言葉がプレーに変わる瞬間を、安達はピッチの外から見届けた。「すごくよかったです」。

昨シーズン、初めてキャプテンを務めた安達にとって、その重責は想像以上に大きなものだった。「抱え込み過ぎて、自分のプレーに集中できていないところもありました」。チームの状況や仲間たちのことまで一人で何とかしようと、必要以上に責任を背負っていた。引っ張りたいという思いが、かえって足かせになっていた。先発から外れる試合もあった。チームはディビジョン2の2位に躍進。しかし個人的には、悔しさも大きい一年だった。
10月中旬、吉廣ヘッドコーチから今季もキャプテンを任せると伝えられた。野村との共同キャプテン体制。安達自身も続投を望んでいた。「言われた時は嬉しかったです。去年1年間、難しかったですけど、自分としてはすごく成長できたと思ったので。今年、自分が成長することがチームの成長にもつながると思います」。

思うようにいかない経験を重ねるたびに、課題を一つずつ乗り越えてきた。昨季は練習が終わっても、遅くまでグラウンドに残った。メンバー外の選手たちとタックル練習を重ね、白子のフィジカルの激しさや長谷のワークレートを、自分のプレーと比べながら見つめた。そこに映るのは、己の未熟さばかりだった。それでも、そこから逃げなかった。向き合い続けてきたからこそ、今の安達がある。その先にある喜びを知っているから、険しい道でも選んで進んでいける。それが彼の強さだった。
昨季の終わりから、安達は考えていた。まずは試合に出続け、自分のプレーを100%やり切る。それが結果的にチームを勢いづけることになる。今季掲げるのは、コリジョン(相手とぶつかり合う局面)で絶対に負けないこと。そのためにウエートトレーニングに時間を割き、練習の合間にもこまめに栄養を補って、当たり負けしない体をつくってきた。通勤時間には映像を見返し、戦術を確認して、自分の役割を頭に入れた。全員が役割を全うすること。それこそがブルーシャークスの強みだと信じた。

その成果は、接点に表れ始めている。今季の安達は、相手に当たっても簡単には倒れない。昨季、豊田自動織機シャトルズ愛知戦をはじめ、敗れた試合では相手に食い込まれ、勢いを与えてしまった。受けに回っている限り勝てない。だから、アタックでもディフェンスでも自ら仕掛けることを一層強く意識してきた。雨の中で行われたこの試合では、一人一人が目の前の相手との勝負に徹した。やタックルには確かな手応えがあった。ただ、鍵を握るのは体だけではない。「絶対いけるって思えてる時は前に出られる。気持ち的に受けちゃうと、どうしても食らっちゃう」。一つ良いプレーが出れば、次はこうすればいいというイメージが湧く。これまでもそうだったように、小さな成功を積み重ねながら、安達は一歩ずつ自分の基準を押し上げている。

「ネガティブに考え過ぎるところがある」。安達は自らを心配性だと言う。先のことを考えすぎると、それが重圧になってしまう。心配になるのは、一つ一つのプレーに責任を感じているからだ。だから今は、目の前のことだけに集中すると決めた。昨季、先発から外れた悔しさも忘れてはいない。今季はいよいよ、ディビジョン2の頂点を狙う戦いが始まる。相手が強くなるなら、それ以上に自分が強くならなければいけない。簡単ではないことは、分かっている。それでも、その先にある成長を信じて前に出る。「言うからにはやらないといけない」。チームメートに向ける言葉を、いつも誰よりも先に自分に課している。

試合後も、雨は降り続いていた。濡れた髪のまま、安達は仲間たちの先頭に立ち、応援に駆けつけた人たちのもとへ歩いていった。届く声援に、両手を挙げて応える。敗れはしたが、最後までやるべきことをやる。強い意志を胸に、視線は真っ直ぐ前を向いていた。自らの弱さから目を背けず、それでも足を止めない。その姿は、ブルーシャークスを高みへと導くキャプテンの何よりも雄弁なメッセージだった。
◇安達航洋キャプテン一問一答

質問者: 今日はディビジョン1の強いチームとの試合でした。60分間出場して、ご自身の出来や手応えはいかがでしたか?
安達選手: この試合はチームとして「パンチ」というテーマでやっていて、コリジョン、フィジカルのところで絶対に負けないということを意識して取り組みました。一対一のキャリーやタックルでは、チームを通していいところがたくさんありました。ただ、フォワードが取り切りたい場面でラインアウトをミスしてしまったり、モールでパイルアップになったりと、ゴール前のミスは直していかないと上のチームには勝てないと感じました。
質問者: ディビジョン1のチームとのプレシーズンマッチを重ねて、フィジカル面でも慣れてきましたか?
安達選手: プレシーズンの最初の頃は相手のフィジカルを受けてしまうところがあったんですけど、徐々に試合の入りから自分たちで仕掛けることが増えてきました。それはチームとして成長しているところだと思います。今週の練習も、今まで以上に激しくプレッシャーを掛け合っていたので、それが試合につながったのかなと思います。

質問者: 2本目の終了後にチームへ声を掛けていましたが、3本目のプレーに変化はありましたか?
安達選手: 30分3本という変則的な試合だったので、切り替える時間がありました。もう一回、試合の入りと同じように、一発目から自分たちで仕掛けようと話しました。実際に出場したメンバーがそれをやってくれたのは良かったですね。今シーズンは、タックルして終わりではなく、ボールを取り返すところまでやろうとずっと話しています。タックルした後に2人目がしっかり戦い続けて、ボールを取り返せる場面もありました。3本目のメンバーがそこをできたのは、チームとしていいところだと思います。
質問者: チーム全体として、勝利への強い気持ちを感じました。
安達選手: ディビジョン1の相手に負け続けていて、それじゃダメだということも分かっています。負けていい試合なんて一つもないですけど、この試合は特に勝ちにこだわってやろうと思っていました。結果的に自分たちのミスで取り切れなかったことが敗因だと思います。

質問者: 昨シーズンからの課題として、特に改善したいところは何でしょうか?
安達選手: チームとして大きく変えるわけではないですけど、ディフェンスでただ我慢するのではなく、ボールを取り切るところまでいくことです。アタックも、昨シーズンはトライ数こそ全体で上位でしたけど、スタッツはあまり良くなかったと思います。バックスだけでなく、フォワードのモールでも取り切ることができれば、去年よりもいい結果がついてくると思います。
質問者: 今日もゴール前でチャンスがありましたが、ディビジョン1のチームとの差はどこに感じますか?
安達選手: 22メートルラインの内側に入った回数はうちの方が多かったんですけど、相手は少ないチャンスでも確実に得点して帰ってくる。浦安D-Rocksとの入替戦でも感じたことで、そこがディビジョン1の強さとの差だと思います。ゴール前になると、どうしても取り切りたいという気持ちが前に出過ぎて、少しずつプレーが合わなくなることがあります。そこで焦らず、自分たちがやってきたプレーをやり切ることが、ディビジョン1のチームはしっかりできている印象です。

質問者: 個人として、今シーズン特に意識していることはありますか?
安達選手: チームとしてコリジョン、フィジカルバトルでは絶対に負けてはいけないと言っているので、僕がそこで負けてしまったらダメです。アタックでもディフェンスでも、前に出ることは去年以上に意識しています。
質問者: プレーを見ていて、以前より倒れなくなったと感じました。体つきも変わってきたのでしょうか?
安達選手: ウエートトレーニングの時間をしっかり取ってもらっているので、それが自信につながって、少しずつ変わってきていると思います。ただ、メンタルの部分も大きいと思います。絶対にいけると思えている時は前に出られるんです。逆に気持ちで受けてしまうと、どうしてもやられてしまう。一ついいプレーが出ると、「こうやればいいんだ」というイメージが湧きます。プレシーズンを通して少しずつスタンダードを上げて、常にそういうプレーができるようになればと思います。昨シーズンの織機(豊田自動織機シャトルズ愛知)戦などの負けた試合では、相手に食い込まれて勢いを与えてしまいました。受けるのではなく、こちらから仕掛けられるようにならないと勝てないので、そこは一番変えないといけないところです。

質問者: ウエートトレーニングや食事の管理にも変化がありましたか?
安達選手: ウエートも食事も、しっかり管理してもらっています。練習の合間にもプロテインやヨーグルト、フルーツなどを食べて、少しでもエネルギーを補給するようにしています。去年は体重が落ちてしまうことが多かったんですけど、今年は体重が落ちることが少なくなりました。
質問者: 今シーズンもキャプテンを務めることになりました。昨シーズンと比べて、意識していることに変化はありますか?
安達選手: 去年はキャプテン1年目で、自分で抱え込み過ぎて、自分のプレーに集中できていないところもありました。まずは自分のプレーを100%やり切る。それで結果的にチームを勢いづけられるプレーができれば一番だと思います。まずは自分のプレーのスタンダードを上げる。その上で、練習での振る舞いや言動でもチームを勢いづけられるようにしていきたいです。去年より慣れてきて、落ち着いてプレーできるようになったとは思います。

質問者:今シーズンは三四郎選手との共同キャプテンになりましたが、吉廣ヘッドコーチからは、どのような言葉で伝えられたのでしょうか?
安達選手: 共同キャプテンという形で、まずは自分のプレーをやり切ることにフォーカスしてほしいと言われました。去年はスタメンで出られない試合もあって、試合に出続けられたわけではありません。まずは自分のプレーで試合に出て、その上でチームを引っ張っていきたいです。プレッシャーはありますけど、先のことを考え過ぎるとプレッシャーになり過ぎるので、目の前のできることを100%やり続けたいです。自分はネガティブに考え過ぎるところがあって、心配性なんです。だからこそ、目の前のことをやり切るということを今シーズンは大切にしたいです。
質問者: 共同キャプテンの三四郎選手とは、どのようにチームを引っ張っていきたいですか?
安達選手: 去年も三四郎さんはバイスキャプテンだったので、大きく変わるわけではありません。2人でチームを引っ張っていければと思います。特にセットプレーをチームの強みにしていきたいと言っているので、そこを一番の強みにしている三四郎さんが中心となって引っ張ってくれると思います。

質問者: 改めてキャプテンを任された時は、どんな気持ちでしたか? ご自身もやりたいと思っていたのでしょうか
安達選手: プレッシャーはありますけど、やりたかったですね。去年1年間やってみて難しかったですけど、自分としてはすごく成長できたと思っています。今年、自分が成長することがチームの成長にもつながると思うので、もう1年やらせてもらえることになって嬉しかったです。
質問者: キャプテンを経験して、どのようなところに成長を感じましたか?
安達選手: 自分の一つ一つのプレーに対する責任感が増えました。フィジカルのところでも絶対に負けないという気持ちが強くなりましたし、役割のミスをなくすことについても、より責任を感じるようになりました。言うからには自分がやらないといけない。ブルーシャークスは、一人一人が自分の役割をやり切ることが、結果的にトライにつながるチームだと思います。自分が先頭に立って、通勤などのちょっとした時間でも役割を確認して、ミスをなくすことを意識しています。
